2024/10/15 (火) 13:45 8
親王牌直前の協賛GIIIなので大物は不在のシリーズ。だが、決勝3着以内だと、小倉競輪祭のシード権をゲットできて、若手にとってはボーナスステージ。同時開催の、川崎GIIIより、賞金は2割良いらしく、選手はホクホクだった(大西晃貴と福田知也が掲げた賞金ボードは大西が440万円、福田が450万だが、副賞の違いで本賞金は別府の方が多い)。
シリーズリーダーは、地元のアベマサこと阿部将大。高知記念、函館GIII、別府記念と勝負強さを発揮して3連覇。普段は温厚な人柄だが、勝負に入ると、急にスイッチが入り別人と言っても良い走り。ただ、6月、7月の勢いがなく、マイコプラズマ肺炎や、手足口病で、直前の宇都宮共同通信社杯も、青森記念も冴えなかった。
普段の九州ラインは、FIや九州地区のビッグでは二段駆けが成功しているが、GII以上のレースになると厳しくなっている。本ちゃんの別府記念では古性優作を相手に阿部将大は番手捲りで優勝しているが、今節はメンバー的に4日間、自力勝負を覚悟していたはずだ。斡旋の段階から大きな変更はなく、地元・大塚健一郎の欠場は残念だったが、園田匠が入ったぐらい。これで岩谷拓磨、小川勇介、園田匠と不動会のメンバーが揃い、まるで吉岡稔真カップみたいだった。
まずは初日特選から。阿部将大は4車を活かせず、長島大介の捲りに屈して、杉森輝大の1着だった。これで、不安を残し、別府記念当時の超抜の出来でない事が露呈。結果的に優勝する大西貴晃は予選からコツコツ勝ち上がり、地元番組の恩恵を受けて、連日の番手回り。自分でやるメンバーだったら、快進撃はなかったかもしれない(準決は大坪功一が譲ってくれ福岡、福岡の間に入った)。
阿部将大は、二次予選、準決と2着、2着だったが、ラインを引き連れた。これで援軍が多くなり、決勝は6車連係。小川勇介と園田匠が勝ち上がったのも、兄弟子が付く事により、岩谷拓磨が普段より早く仕掛けたからだ。決勝が終わり、逆算して考えると、競輪はフロックでなく、必ず意味合いがあると改めて実感した。
さて決勝戦。九州は6車結束で阿部将大に大西貴晃。この2人は同門の関係で血が濃い。あとは、福岡勢が点数順で並んだ。自在の山本伸一は単騎で、東日本は杉森輝大に繰り上がりで優出した山崎将幸。小田原記念の決勝は南関の大挙連係に、ネットで賛否の声もあったが、この九州6人は、他に並び様がない。あの小田原記念は、自力選手が乱立していたのに、連係したから批判の声が上がったのだ。
今はチャレンジからGIまで、地元に対する番組マンの配慮があり、必ず、内枠を貰える様になっている。ここで言えば大西貴晃が1番車だが、スタート名人の阿部将大は外枠でもSを取れる。高知記念の優勝も8番車だったが、犬伏湧也と清水裕友の後ろを取れた事が大きかった。
セオリー通りに九州勢の前受け。杉森輝大が押さえに行くが、阿部将大はシンプルに突っ張る。これが、眞杉匠だったら、青森記念の決勝みたいに新山響平と競っているが、杉森輝大は強引な自在選手ではない。どちらかと言えば、溜めて走る方だし、後方に下げる。もう、この時点で阿部将大はフルスロットル。山本伸一も良いスピードだったが、単に力勝負では、九州勢を乗り越えられない。杉森輝大も、もう1回行ったが、大西貴晃の番手捲りに屈した。
個人的に思っていたのは大西貴晃が2角かバックからのスパートでは小川勇介が食うと思っていた。だが、10秒9の捲りで末脚も抜群。陳腐な言い方になるが、これが“地元の執念”なんだろう。小川勇介が記念を獲っていないのは驚いたが、大西貴晃はFI優勝もなかった。
阿部将大の気持ちを察すると、コメントで捨て身とは言えない。ただ、近況の出来、地元と言っても協賛GIII、後ろは同門の先輩と駆ける条件は揃っている。それと一番は九州6車と言う点だ。実質、先行1車だし、勝ちに徹すれば、引いての捲り。しかも、溜めて、溜めてなら最悪でも4番手はある。それを潔しとしなかったのは、アベマサの人間性だし、そこに競輪の神髄が詰まっていると思っている。おめでとう、大西選手!
町田洋一
Machida Yoichi
基本は闘うフリーの記者。イー新聞総合プロデューサー、アオケイ・企画開発パブリストの肩書きも持つ。自称グルメでお酒をこよなく愛す。毒のある呟きをモットーにして、深夜の戯言も好評を得ている。50代独身で80代の母親と二人暮らし。実態はギャンブルにやられ、心がすさみ、やさぐれている哀しき中年男である。