2021/07/22 (木) 12:00 8
昨年の「瑞峰立山賞争奪戦(GIII)」の決勝。
メンバーが揃い、決勝に向けての取材をしていたが…あれっ、何か、かみ合ってない…。“ヒロユキ”が“ヒロユキ”の前? えっ。村上博幸(42歳・京都=86期)が前なのか!
自力と追い込みの戦いぶり、スタイルでいえば、当然、稲垣裕之(43歳・京都=86期)が前だと思っていた。
だが村上が『前で』と訴え、出し切る走りをした。村上はS班の赤いパンツを履く立場で、稲垣はケガもあり、苦しんでいた。
村上は稲垣に伝えたいものがあったようだ。稲垣が昔、富山競輪場で骨盤骨折の大ケガを負ったことももちろん知っている。優勝した稲垣が「動けず、入院している時に支えてくれた人たちのことを思います」と感謝しきりだったシーンが一年前のこと。
函館競輪場で16〜18日開催された「サマーナイトフェスティバル(GII)」。
16日の初日予選7レース、誰もが目を疑った。109期から117期までの若手ばかり。さながらヤンググランプリのメンバーに見える。当然、番組の意図がある。
サマーナイトフェスティバルはF1優勝が出場権に大きく関わる。7車立ての開催が多い今、若手自力型が多くその権利を手にしていた。そんな自力型をすべてをバラけさせると、予選の8個レース全体で単騎の選手が多くなり、構成として、買いづらいものになりそうだ…。それを回避して、なお。
予選の勝ち上がりの権利は2着までと3着の2人。いかにも厳しいが、夏祭り。若者に一肌脱いでもらいたい。他のレースの構成を確保すること、そして何より、ファンが胸躍らせるレースを…がこの7レースだった。
結果、6レースから7レースの売り上げはグンと伸び、8レースをも上回った。昨年の静岡ヤンググランプリで結果を残せなかった北の2人。小原佑太(25歳・青森=115期)と高橋晋也(26歳・福島=115期)に注目が集まっていた。
あまりに厳しい番組に若干、やさぐれ気味ではあったが、静岡とは逆で「前で」戦った高橋は攻めた。展開も悪くなかったが、さすがに脚を使い、バンクレコードタイの10秒8のタイムで襲ってきた皿屋豊(38歳・三重=111期)に勝利をさらわれたものの、北の意志を見せた。
4角、まくりを体当たりで止めにいった小原の悲壮なまでの走りもよかった。戦いは続く。なかなか連係することのない2人なわけで、ここでまた一緒に戦えたことが“これから”につながるだろう。
高橋は競輪界を背負っていける脚力と、佐藤慎太郎(44歳・福島=78期)譲りのパフォーマンス力がある。優勝を手にして、8月のいわき平の「オールスター競輪(GI)」に迎えるか。
私事になるが、富山記念は東スポの競輪動画発祥の舞台だ。2010年8月に富山で生まれた。そこから、いろんなインタビューを取らせてもらってきた。このインタビュー動画、私は“選手とともに作り上げている”と思っている。ただ撮影し、仕事だからと公開しているのではない。
大げさではなく、競輪が盛り上がるために“一緒に”の思いだ。忙しい時間帯でも協力してくれる選手たちの思いを、走りの意味をまた伝えられるように。ファンに届けたい何かを、探しに行こう。
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前田睦生
Maeda Mutuo
鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。