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前田睦生の感情移入

【よさこい賞争覇戦】佐藤慎太郎「競輪道なんて本当はないんだよ」の言葉の本当の意味

2021/07/28 (水) 12:00 9

「興輪」は佐藤慎太郎のためにある言葉だ

競輪を興すために生まれてきた男

 佐藤慎太郎(45歳・福島=78期)がGI初制覇を成し遂げたのが2002年11月の高知全日本選抜。ビッグレースの決勝を外すことが珍しいくらいのキレ味を誇り、全国各地のファンを喜ばせ、沸かせてきた。
“口が立つから”だけじゃない。

 でも、口、は大事。シンタロウの語る言葉の重みは何度も感じてきた。“競輪伝道師”という呼び名をつけるようになったのも、競輪を伝えてくれるから、そのままだった。でも大体、競輪について語ってくれた後に言う。
「競輪道なんて本当はないんだよ」……。

ある、と信じているから、ない、と言う

競輪を、競輪道、を見つめている

 競輪の一般的な出世の形として、先行して、先頭でラインに貢献して…というスタイルである。しかし『追い込み』という戦法でシンタロウの形を作り上げてきた。先行は目立つ形の貢献の形だが、追い込みでも人の後ろでもそれはある。そこにこだわってきたのが“シンタロウの競輪道だ”。

 「若いから」、「デビューが後」だから先頭で頑張るんじゃない。それが必要な時はあっても、常日頃からの走りこそが大事。目の前の一戦や過去の走りが大事なのは、先につながっているから。それはラインのどの位置でも同じ。競輪のことを思い詰めている。

 走りからだけでも伝わるものはある。でもファンは、その他のものも求めている。シンタロウは直接、思いをファンに投げかけ、ファンと共有する。ただしゃべればいいものでもないので、熱量が必要になる。
走りから伝わるものは「ある」と伝えたい。でも伝わるのかわからない怖さがあって、「ない」と言ってしまう…。天邪鬼のような言葉だが、それは「ある」と強く信じているからなのだ。

競輪を戦い抜く鬼たちの世界がある

小野俊之(左)と話し込む佐藤慎太郎

 しばらく前に撮った、しのぎを削った小野俊之(45歳・大分=77期)と話し込んでいるシーンの写真だ。小野が調子を落としている時で、何やら2人でふれ合っていた。小野がどこにいてもレースを支配している時期があって、シンタロウはその小野に何度も立ち向かっていった。

 同い年の鬼。年輪を重ねた2人の姿を見るだけで背筋が伸びる思いだった。自分を譲らない。容易に近寄れない…そんな雰囲気があった。

 全日本選抜の優勝がシンタロウで、2着が小野。2人は村上義弘(47歳・京都=73期)の後ろで競り合い、取り切ったシンタロウは身をよじり落車しながらゴールして、小野の再逆襲をしのいで優勝をつかんだのだ。

 隆々と盛り上がった肉体は傷だらけ。シンタロウが語る言葉は、その傷口から発されている。

よさこい祭りからいわき踊りへ

長い夏祭りを心から楽しみたい!

 高知ではその後、2011年6月の記念を勝っている。今回はすぐにいわき平のGIオールスター競輪(10〜15日)も控えている。よさこい、爆裂の優勝で、いわきへ。
シンタロウの長い夏祭りを楽しもう。


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前田睦生

Maeda Mutuo

鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。

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