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前田睦生の感情移入

【寬仁親王牌】近畿3つと2つと関東は1つずつ…もしかして決着は、ついている?

2025/10/22 (水) 12:00 6

レースを振り返る脇本雄太(左)と福永大智

残り2つのGI

 10月23〜26日に前橋競輪場で「第34回寬仁親王牌・世界選手権記念トーナメント(GI)」が開催される。2025年も残すGIが当大会と、11月小倉競輪祭(GI)となった。毎年、ぞわぞわ、ザワザワ、と暮れのグランプリに向けて心が揺らぐわけで、騒ぐわけで…。

 今年のGIは脇本雄太(36歳・福井=94期)が全日本選抜競輪と高松宮記念杯競輪を、寺崎浩平(31歳・福井=117期)がオールスター競輪を制して近畿が3勝、あとは関東の吉田拓矢(30歳・茨城=107期)がダービー(日本選手権競輪)を勝っている。GIIは古性優作(34歳・大阪=100期)がウィナーズカップ、南修二(44歳・大阪=88期)が共同通信社杯競輪を勝ち、眞杉匠(26歳・栃木=113期)がサマーナイトフェスティバルを勝っている。

 近畿の強さが抜きん出ている。脇本の強さは“輪史最高”と称され、かつ古性は“輪史最高の競輪選手”と言われる様相。こんな2人を、2人が認める寺崎の成長が盛り立て、寺崎も一本立ち。近畿の天下といっていい。ガムシャラに噛みつく眞杉がいて、今年のビッグ戦線では決勝で何度も太田海也(26歳・岡山=121期)が挑んで、跳ね返されている。

 他地区の選手にしても、読者はすぐに多くの名前が思い浮かぶことだろう。強い選手ばかりが、全国にいる。だがしかし、今の近畿は、寄せつけない。

強くなければ生きていけない

南修二は謹厳

 かつて選手間で、こんな話があったんですよ、と聞いた残酷だが真実の会話がある。GI戦線で活躍する選手と、下位でくすぶっている若手がいる。

「強くないと、楽しくないやろ。弱かったら…」

 競輪の世界は優勝劣敗。現実に結果と強さを競っている。それも身動きの取れないほど、厳格に。なおかつ、日々の戦いぶりで競輪選手としての価値を値踏みされている。ファンからだけではない。選手間での評価の上下は、その選手にべったりと貼りついている。

 強くあることへマニアックでパラノイア的な脇本がいて、強さに対して赤ん坊のようにどんよくな古性がいて…。無論、彼らが見てきた近畿の先輩たちの姿があって…。44歳でビッグレースを初優勝となっても顔色一つ変えない南の謹厳さは果てしない。

優しくなければ生きている資格がない

郡司浩平の戦いの果ては

 何度かこのコラムで書いていると思う。“強くなければ生きていけない。優しくなければ生きている資格がない”。レイモンド・チャンドラーが描いた名探偵フィリップ・マーロウのセリフだ。

 優しい、だけでは足りないと思う。南関の男たちだ。確かにまず、優しい。深谷知広(35歳・静岡=96期)、岩本俊介(41歳・千葉=94期)、そして郡司浩平(35歳・神奈川=99期)!

 郡司にはこのコラムでよく書いているが、会うたびにこの話をしている。「南関の中で、グンちゃんが、厳しさを…」と。彼は、優しい。そして本人も分かっている。「深谷さんにしても、岩本さんにしても…」。優しいのだ。

 それもまた、大きな正解の一つだと思う。彼らの競輪に非を打つところはない。深谷も郡司も奮戦に次ぐ奮戦、京王閣記念初日特選の岩本の激走は、エグいくらいカッコよかった。でも…。

ウチの奥さんが、ファンなんですよ

カギを握るのは南関

 壁に飾られたゴールドディスクが輝く。押しも押されもしないトップスターを前に、コロンボ刑事が言う。「ウチの奥さんが、ファンなんですよ」。その時、トップスターはいわゆる“ホシ”。コロンボに逮捕される、そのタイミングで、しわくちゃの顔で彼は言う。

 グサリと響くそのセリフ。星が落ちる。汗と涙を流すだけでは、目的地にたどり着けない。心が血を流すほどの戦いでこそ、世の中では誰かを上回ることができる。のす、という。

 ホシを捕まえるのも、のす、わけだ。のし上がる、と書くと含む意味が分かりやすいと思う。全身全霊を持って、1mmのブレもない覚悟をもって、のしにいく。この寬仁親王牌で南関がその戦いを見せれば、見せることができれば…と思っている。

 近畿の強さが険しさを備えて美しく、関東の戦いに光を見るからこそ、南関に求められるものがある。今は、南関がカギを握っている。中四国、北日本、九州、中部はそれを追いかける立場。2025年の競輪の深淵に引きずり込んでほしい。


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前田睦生

Maeda Mutuo

鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。

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