2025/11/01 (土) 10:00 7
“ロスの超特急”こと坂本勉氏が『究極に仕上がっている選手=超抜選手』を紹介する当コラム。坂本氏が太鼓判を押したくなる“超抜選手”をチェックして車券推理に役立てましょう!(構成・netkeirin編集部)
netkeirinをご覧のみなさん、坂本勉です。自分が住んでいる八戸市ですが、今年は夏から秋を挟まずに、一気に冬を迎えたような気候となっています。ついこの間までは青々としていた山の木々も、一気に紅葉を迎えただけでなく、青森を代表する名山・八甲田山も先日、初冠雪を迎えたとのニュースも聞こえてきました。このコラムをお読みの皆さんも、突然の寒さに体調を崩されないようにお気をつけください。
前回までのコラムでは、メンバーや展開を問わず、常に「自力」を出していくような「大きなレースができる選手たち」を取り上げてきました。その中にはA級からS級への特別昇班を果たした選手たちも多く、前回取り上げた高橋舜も、10月12日の弥彦競輪で完全優勝を果たし、9連勝での特別昇班となりました。
高橋は10月28日から豊橋競輪で行われるFI戦に臨みます。記念競輪でも活躍しているような骨っぽいメンバーを相手に、持ち味となっている「地脚のある先行」がどこまで通用するか楽しみです。
さて、今回のコラムではこれまでの志向を変えて、車券における貢献度の高い、番手の仕事ができる「自在型」の選手を紹介しましょう。A級・S級ともに超抜の選手がいるんですよね。
まず、A級の都築巧(高知・123期)を取り上げます。都築の走りはデビュー間もない頃から見てきましたが、多くの新人が先行で名前を売っていく中、都築は自力より番手の走りで知られる存在となっていきました。
「行きっぷりの良さ」では他の若手選手には劣ると思いましたが、番手から抜け出すとき、そこそこのタテ脚を見せていたので、「いずれは自在型になるのでは」と感じていました。
その後も番手の走りを見ていく中で、キャリアも経験も決して豊富ではないのに、まるでベテランの番手選手のような走りをするので驚かされていました。時には番手戦に挑み、またある時は前めのポジションを取ったり、いつの間にか内に潜り込むようなレースをしていたこともありましたね。
都築がかく乱させたレースは配当的にも荒れることが多くなります。それが立証されたのが、10月19日から行われた防府競輪場のFII開催でした。初日の予選で3車ラインの先頭を任された都築でしたが、外から踏み上げていった九州ラインの番手を奪い、前団にいた中部勢も捌き切って、見事に勝利を挙げています。
準決勝こそ5着に敗れてしまいましたが、最終日の特選では先行した渋谷海の番手から捲りを出して、シリーズ2勝目を挙げました。その初日の配当ですが3連単で11,570円。最終日も3連単は25,810円と高配当になっています。筋違い決着の荒れ方ではあるものの、人気選手の足元をすくっていくような走りができている証明でもあります。都築は3連対率でも高い数字を残しており、車券貢献度の高い選手です。
ちなみに都築は学生時代に自転車競技経験のない、いわゆる「適性組」の選手となります。都築からすれば、自転車競技から競輪の世界に入ってきた選手とのスピードの違いは早い時期から察知していたはずです。だからこそ、スピードをカバーできる「番手」の選手として、実績を残していこうと思ったのかもしれません。
都築は高知の選手ですが、四国という括りでは犬伏湧也という競輪界を代表する先行選手もいれば、S級にはこのコラムでも取り上げた石原颯や小川三士郎もいます。
今後都築が順調に競走得点を上げていけば、S級への昇格も見えてくるだけでなく、こうしたハイレベルな先行選手たちとラインを組む日も来るでしょう。そのためにも番手の技術はもちろんのこと、タテ脚もしっかりと磨いていけば、四国地区を代表する「自在型」となってもらえればと期待して見ています。
都築功出走情報
| 開催場 | 開催名 | シリーズ日程 |
|---|---|---|
| 弥彦 | CTCなら3分前まで買える杯(FII) | 10月30日〜11月1日 |
| 高知 | KEIRINフェスティバル(FI) | 11月19日〜21日 |
※上記出走情報はコラム公開日時点(2025年11月1日)のものです。
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S級では関東を代表する「自在型」として、一目置かれる存在となった鈴木玄人(東京・117期)を取り上げます。
鈴木の出るレースもよく荒れる印象がありますね。タテやヨコだけでなく、斜めにも自転車を向ける走りは、まさに縦横無尽。結果的に落車も多くなります。
レースを予想する側としては「鈴木のレースは買いづらいなあ」と思うこともあります。ですが、鈴木自身が「勝つためにはどうしたらいいのか?」を、レースの中で考え続けているからであり、その閃きがハマった時には高配当を演出してくれる選手となるわけです。
鈴木は単にヨコの動きが優れているだけでなく、タテ脚にも秀でています。6月21日の平塚競輪場でのFI開催では、初日から全てバックを取っていくレースで完全優勝を果たしています。ただ、自分よりタテ脚がある選手が揃った記念競輪や特別競輪では、その差を埋めるために番手戦に切り替えるだけでなく、目標がいない時には他地区のラインの分断も図っていきます。
その自在性がようやく形となってきたのが、8月に函館競輪で行われたオールスター競輪のレース内容です。一次予選、二次予選は中団から脚を伸ばして準々決勝に進出。その準々決勝ではバック過ぎの3コーナーから一気に内へと切れ込み、ゴール前では並走してきた古性優作を弾き飛ばして2着となっています。
単騎戦となった準決勝こそ6着に敗れていますが、眞杉匠の番手戦となった最終日の優秀戦では、その眞杉をゴール前で交わして優勝。SS班を交わし切るタテ脚があることを証明してみせました。9月に福井競輪で行われた共同通信社杯の二次予選でも、自在性のあるレース内容で勝利を挙げており、再び特別競輪の準決勝に進んできました。
しかし、その後の立川競輪のFI開催では初日に落車し、そのシリーズだけでなく、出走予定だった武雄競輪のFIも負傷欠場となってしまいます。鈴木だけでなく、都築もそうですが、番手を回る選手には落車が付きまといます。特に鈴木は調子が上がってきた時に落車したり、違反点数が重なり出場あっせんがかからなくなるなど、万全な体調で大会に臨むのが難しくなっているのも実情です。
鈴木は高校時代から自転車競技を始めており、高校時代も大学時代もケイリンで優秀な成績を残しています。ケイリンは横の動きが制限される種目です。鈴木が漢字の競輪で“縦横無尽”の走りで活躍できているのは、相当の練習量を積んでいるに違いありません。加えて「自在型」としてやっていくだけの覚悟ができているのでしょう。
鈴木のレース前のコメントやインタビューを見てきた感想をいえば、その度に「メンタルが強い、プロ向きの選手だな」と思ってきました。だからこそ、どのレースでもアグレッシブな走りができているのでしょう。
鈴木のいる関東地区にも優秀な先行選手が揃っています。今後は記念競輪や特別競輪でも番手としての仕事が増えていくはずです。それだけに今必要なのは、確固たる「実績」となります。
鈴木は11月6日から小田原競輪で開催される「北条早雲杯争奪戦」に出場を予定しています。ここで準決勝を勝ち上がるのを一つの目標とするだけでなく、決勝でアグレッシブさと自在性を発揮して、記念初優勝を飾ってもらいたいです。実力だけではなく、しっかりと実績を残していくことが重要になっていくでしょう。
鈴木玄人出走情報
| 開催場 | 開催名 | シリーズ日程 |
|---|---|---|
| 小田原 | 北条早雲杯争奪戦(GIII) | 11月6日〜9日 |
| 小倉 | 朝日新聞社杯競輪祭(GI) | 11月19日〜24日 |
※上記出走情報はコラム公開日時点(2025年11月1日)のものです。
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坂本勉
Tsutomu Sakamoto
●坂本勉(さかもと・つとむ) 1984年、ロサンゼルス五輪に出場し銅メダル獲得。日本の自転車競技史に初めてメダルをもたらし、“ロサンゼルスの超特急”の異名を持つ。2011年に競輪選手を引退したのち、自転車競技日本代表コーチに就任し、2014年にはヘッドコーチとして指導にあたる。また2021年東京五輪の男子ケイリン種目ではペーサーも務めた。自転車トラック競技の歴史を切り開いた第一人者であり、実績・キャリアともに唯一無二の存在。また、競輪選手としても華麗なる実績を誇り、1990年にKEIRINグランプリ、1989年と1991年にはオールスター競輪の覇者となった。現在は競輪、自転車競技、PIST6と多方面で解説者として活躍中。展開予想と買い目指南は非常にわかりやすく、初心者から玄人まで楽しめる丁寧な解説に定評がある。