2025/11/03 (月) 15:00 3
現役時代はトップ選手として長く活躍し、現在は評論家として活動する鈴木誠氏の競輪予想コラム。今回は四日市競輪場で開催されている「泗水杯争奪戦」の決勝レース展望です。
【泗水杯争奪戦】はSS班の5名を含めて好メンバーが揃いました。その中でも注目を集めていたのが、【寛仁親王牌】で特別競輪初制覇を果たした嘉永選手です。
嘉永選手ですが二次予選では捲りが不発に終わり、準決勝への進出とはなりませんでした。
嘉永選手にとっては、来期からSS班というプレッシャーだけでなく、周りからのマークもきつくなったのかもしれません。それでも3日目の特選では、前日の鬱憤を晴らすかのような走りで勝利をあげています。
寛仁親王牌の行われた前橋バンクは屋内の短走路かつ、カントもキツいという独特の形状をしています。
選手によっては得手不得手がはっきりとしているのですが、嘉永選手はこのバンクにあった走りができていたのでしょう。
バンクの得手不得手だけでなく、コンディションの維持も含めて、常に安定した成績を求められるのがSS班の選手と言えます。その意味でも今大会もだけでなく、ほとんどの大会で決勝へと勝ち上がっている古性選手は、ただただ凄いと言うしかありません。
その古性選手と同様に記念競輪だけでなく、特別競輪でも決勝の常連となっているのが眞杉選手です。両者に共通しているのが自在性のあるレース内容であり、今大会も安定した走りで決勝へと進出しています。
両者ともに安定した活躍が物語っているように、現時点においては賞金面での【競輪グランプリ】出場と、来期からのSS班をほぼ確定させています。
その一方で【競輪グランプリ】に出場すべく、今大会でなんとか賞金を上積みした選手たちですが、その中では現時点で13位の浅井選手、そして19位の山口選手が決勝に進んできました。
賞金でのSS班入りが充分に狙える位置にいる浅井選手としては、地元での記念競輪でもあり、勝ってグランプリ出場への道筋を作りたいところです。
その決勝の並びですが、中部の2人は準決勝と同様に⑤山口選手-②浅井選手となりました。【寛仁親王牌】の好調そのままに、今大会でも持ち前の機動力を、遺憾なく発揮している山口選手との並びはかなり強力です。
ただ、ラインの厚みという意味では、関東と北日本が結束したことで、結果、4車(③眞杉選手-⑧神山選手-⑨和田選手-⑥佐々木選手)で並んだ東日本ラインに分があります。
近畿は①古性選手-④稲川選手の並びとなり、⑦山田選手は単騎戦となります。眞杉選手としては北日本の2人が付いてくれたことで、かなりレースがしやすくなったはずです。
山口選手は二次予選でバックを取っていますが、持ち前のスピードを生かせるのは、やはり捲りと言えます。それは古性選手も同様なだけに、この決勝は実質、眞杉選手の先行1車となりました。
1番車は古性選手ですが、後ろ攻めの方がレースがしやすいメンバー構成だけに、山口選手か眞杉選手に前受けをさせてくるでしょう。
まず、眞杉選手が前受けをした場合ですが山口選手や抑えに来た時に無理に突っ張らずに、一度後方へと下げると見ています。
そこで上がっていった古性選手が、山口選手と互いの出方をうかがっているようならば、一気に捲り先行へと入っていくでしょう。
また、山口選手が前受けをした場合には、眞杉選手は後方から抑えにかかります。そこで古性選手と山口選手が5番手を取り合うようならば、一気に先行態勢へと入るはずです。
眞杉選手はラインの厚さもさることながら、今大会3連勝の神山選手が番手に入っているのも心強いはずです。ただ、地元の浅井選手を従えている山口選手が、腹をくくって抑え先行に入ってしまうと厄介な展開となります。
その場合は中部ラインの後ろにいる古性選手が先捲りをしてしまうので、眞杉選手としては、前を捉えきれない可能性が出てくるからです。
眞杉選手としては古性選手、山口選手よりも長い距離を踏んでいけるだけに、どんな形になっても、自分が先行できるレースに持ち込みたいはずです。その意味でも前受けをするのは誰かと、山口選手がどんなレースをしてくるかにも注目したいところです。
印としては◎③眞杉選手、〇⑧神山選手、△①古性選手、×②浅井選手に打ちます。今大会はヒモ荒れも多い混戦となっていますが、決勝は基本的に東日本ラインが優勢となりそうです。
ただ、眞杉選手の後ろがごちゃ付くようだと、コースを探すのが上手い古性選手や浅井選手が上位に食い込んでくるはずであり、その場合は3着の相手を手広く買っておく3連単もオススメしておきます。
鈴木誠
千葉県市原市出身。日本競輪学校第55期卒。千葉経大付属高校の頃から競輪に没頭し、吉井秀仁氏に師事。現役時代はすべての戦法を完璧にこなし、「本物の自在型選手」と評されるほど多彩なストロングポイントを武器に、引退するまで長きにわたってトップ選手として君臨した。現役時代は通算3058戦665勝、優勝109回(うちGIは競輪祭新人王を含め4回、GP1回)、年間賞金王1回、通算獲得賞金は17億を超える。18年7月に、ケガのため惜しまれつつ引退。引退後は選手経験を生かし、解説者として活躍。スピードチャンネルなどの番組にも出演している。