2021/07/03 (土) 12:00 18
今や“普通”に開催されているガールズケイリン。
今年の7月で10年目に入った。当初の選手は2ヶ月に3本くらいのあっせんで収入は厳しかった。開催場すらなかった。現在、全国的に行われていることが、10年前と比べると驚くべき状況となった。
初期は、イベントのバイト的な収入がちょろっとあったことを思い出す。いつまた廃止になっても文句も言えない状況の中、1期生の33人がデビューし、ただひたむきに頑張ってきた…。
7月、ガールズでは10期にあたる120期が本デビューを果たしている。
10年も経てば、小学校高学年、中学くらいではガールズケイリンがあることを知る年齢だ。
「ガールズケイリンを目指す、目指したいっていう人たちが増えるように」が1期生、また今を走る選手たちの合言葉でもある。
草創期は力差が激しいため単調なレースも多く、配当の妙味もない。
「つまらん」「競輪じゃない」「ガールズは買わない」という言葉も聞かれた。
相当、叩かれていた。
それを覆した力は、どんなに意味があるだろう。
『競輪担当の記者』という立場で東京五輪の開催を願っている。「競輪が…」という立ち位置によっている。
時折書いてきたが、世の多くの人たちは競輪を知らない。競輪の中の世界にいると気づきづらいが、1億2千万強の日本の人口の中で競輪を知る人、また楽しむ人、車券投票に参加する人、を考えるとその母数は、思いのほか小さい。
五輪で自転車競技の選手が活躍することが、競輪の起爆剤になると代表選手たちは信じている。特にトラック種目を走る競輪選手は、危機感すら抱いている。「東京五輪は競輪のラストチャンス」という発言もあるくらいだ。
今大会は代表リザーブではあるが、深谷知広(31歳・愛知=96期)が5月の香港ネイションズカップで、「厳格な管理下にある“バブル状態”での開催が東京五輪につながる」と指摘している。改善する点もあるし、安全な開催への道筋はある。
新型コロナウイルスの猛威は収まるどころか…という状況下と思うが、この五輪の開催の意味はそれぞれの競技種目にとって意味を持っている。もちろん、これは競輪だけではない話だと思う。少しでもファンに入ってほしいと思うが…無観客でも、コロナ対策で競技時間がちょっとずつ遅れながらでも、開催してほしいと願っている。
五輪は多くの種目において、使用機材の進化も求められている。それが国力としての矜持(きょうじ)という面すらある。ガールズケイリンでの使用フレームも進化が続いているようで、今後は高価なものも出てくるそうだ。
とはいえ、やはり頼れるものは脚。「カーボンのフレームを乗りこなせている選手なんてそもそも少ない」という声も聞いた。機材に頼るよりもまず、自身の肉体と機材のマッチング。10年という時を経たからこそ、もう一度、原点を見直しての挑戦が大事になるだろう。
ガールズケイリンも東京五輪も、“競輪の新たな一歩”というものになるべきもの。
そこに戦う選手たちの意志を、信じるだけだ。腰を落ち着けてしまっては先はない。先駆者や現状にもがく選手たちの汗と涙が、“もう1回先につながる時期”だと強く思う。
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前田睦生
Maeda Mutuo
鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。