2021/06/29 (火) 12:00 3
現役時代はトップ選手として長く活躍し、現在は評論家として活動する鈴木誠氏の競輪予想コラム。今回は久留米競輪場で開催されている中野カップレースの決勝レース展望です。
【中野カップレース】が行われる久留米競輪場は400バンクで、あまり風の影響も受けないので走っていても軽く、先行も捲りも追い込みも、どの戦法でも決まりやすい印象がありました。比較的タイムも出やすいバンクではありますが、それでも岩本選手が準決勝で記録した、上がり10秒5のタイムにはびっくりしました。
決勝にはタイムの良さだけでなく、レース内容もいい岩本選手。二次予選と準決勝の10レースでも、バックを取っていった取鳥選手。そして【高松宮記念杯競輪】では、宿口選手とワンツーフィニッシュを決めた吉田選手と、調子の良さが目立っていた自力型が名を連ねました。
それだけにラインもコマ切れとなり、取鳥選手と桑原選手の中国ライン、門田選手と香川選手の四国ライン、山田選手と吉本選手の九州ラインがいずれも2車で並びました。そして岩本選手、稲川選手、吉田選手は単騎の競走となります。
この中で先行しそうなのは、2車と言えどもラインができていて、調子のいい取鳥選手ではないかと思います。同じ先行型の山田選手ですが、これまでのレースを見ていると、位置を取ってからの捲りとなりそうです。門田選手も捲りが得意なのですが、位置取りが悪くなるようだと、先行も考えているかもしれません。
単騎の3人ですが、その中で唯一、先行型ではない稲川選手は、積極的なレースをしてくるであろう、取鳥選手と桑原選手の後ろを回ってくると見ています。
岩本選手と吉田選手も準決勝でさすがだな、と言えるレースを見せてくれましたが、それでも決勝では車券的に狙い辛いのも事実です。ラインが無いだけに早めの先行捲りとはいかないでしょうし、必然的に捲り追い込みとなりそうですが、勝ちきるまでは難しいかもしれません。
取鳥選手が先行した場合、優勝に近づきそうなのは、番手につけている桑原選手だと思います。桑原選手はベテランらしいというのか、レースの作戦を立てるのが上手く、この決勝でも取鳥選手に様々な指示を授けているはずです。
また、別のラインとはなりましたが、門田選手と香川選手とは、中四国ラインとしての繋がりもあるだけに、この2つのラインが先行争いをすることは無さそうです。
むしろ一発がありそうなのは、捲ってくる山田選手だと見ています。取鳥選手と同じ準決勝の10レースでは3着ながらも、後方から捲ってきたときの上がりタイムが10秒9。コマ切れ戦となる今回は、その時ほど追走にならないと思いますし、勝負所で一気に仕掛けられたのならば、先行しているであろう取鳥選手を捲り切ることも可能でしょう。
鈴木誠
千葉県市原市出身。日本競輪学校第55期卒。千葉経大付属高校の頃から競輪に没頭し、吉井秀仁氏に師事。現役時代はすべての戦法を完璧にこなし、「本物の自在型選手」と評されるほど多彩なストロングポイントを武器に、引退するまで長きにわたってトップ選手として君臨した。現役時代は通算3058戦665勝、優勝109回(うちGIは競輪祭新人王を含め4回、GP1回)、年間賞金王1回、通算獲得賞金は17億を超える。18年7月に、ケガのため惜しまれつつ引退。引退後は選手経験を生かし、解説者として活躍。スピードチャンネルなどの番組にも出演している。