2021/06/09 (水) 12:00 6
6月10〜13日の4日間は、昼に福井競輪場で「第1回大阪・関西万博協賛競輪(GIII)」、夜に松山競輪場で「国際自転車トラック競技支援競輪(GIII)」(以下、トラック支援)とGIII開催が昼夜でリレー形式で行われる。ともに協賛競輪の形を取り、売り上げや賞金の一部が直接、万博やトラック競技の支援にあてられる。
競輪が社会的な力を見せる、一番の部分だ。
高松宮記念杯(6月17〜20日)の直前に、脳みそをさらに競輪漬けにしようというわけでもある。
めくるめくスピードバトル…。しかしやはり、脳みそだけでなく心を熱くするのが競輪だ。福井を走る柴崎淳(34歳・三重=91期)の復活祭がある。
「選手生命、終わりと思いました」。
昨年9月、伊東(共同通信社杯)で柴崎は落車。ともに転んだ吉田敏洋(41歳・愛知=85期)は金網に激突。吉田の方が見た目からすると危ぶまれたが、立ち上がり走路内に退避した柴崎の方が重傷だった…。
柴崎は腰椎を骨折していた。医者からの指示は『動かしてはいけない』というもの。非常に危険だった。柴崎本人は自転車選手として「腰椎、大腿骨、骨盤。この骨折はダメだと思っていた」と振り返る。
アマチュア時代から輝き続けている天才を襲った最大の試練。
体は元に戻るか、分からない。不安しかなかった。思うように動かない体、果たして選手復帰もかなうのか…。「地獄でしたわ」と話す柴崎だが、諦めない大きな理由は後輩の存在だった。
伊藤裕貴(29歳・三重=100期)は2018年2月に練習中の事故で柴崎と同じケガである、腰椎を骨折した。しかし、その5月には奇跡的に復帰。復帰当時は見ているだけでもつらそうだったが、立ち直った。
「負けていられないでしょう。後輩に」。伊藤を上回る早さで柴崎は約3ヶ月後の2020年12月に復帰。さらに今年に入って2月(小倉・スーパーナイター濱田賞)には優勝すら手にした。
「天才でしょ(笑)」。
気持ち一本で復帰した体は、GI全日本選抜競輪(川崎)でも躍動した。完全復活だ。…そう思われたが「腰に来ましたね。めっちゃヤバかったです」。
4月には地元の四日市記念(ベイサイドナイトドリーム)すら欠場せざるを得なかった。
そこからまた立て直し、GI優勝を目指す。ケガがあったため、高松宮記念杯の出場権は得られなかった。その分、今回の優勝は責務とすらいえる。GI優勝を目前とした2018年11月の競輪祭は、脇本雄太(32歳・福井=94期)の番手だった。追加参戦となった弟・脇本勇希(21歳・福井=115期)との連係もあるかも…だ。
松山競輪のトラック支援はナイターで開催される。
ガールズケイリン3個レースのシリーズもあり、華やかになる。5月頭の京王閣ガールズケイリンコレクションを制した佐藤水菜(22歳・神奈川=114期)は、香港でのネイションズカップを経ての参戦。よりたくましくなった走りで、4連勝を目指す。
競輪学校(現養成所)時代には大好きなアイドルグループのアイテムを完全封印して、厳しい環境を耐え抜いた。
今、ナショナルチームのメンバーとしての責任を胸に、退路を断って世界を目指している。
男子の方を書くのが少なくなって恐縮だが、ひたすらに神山雄一郎(53歳・栃木=61期)のGIII 100V達成を祈ることにする。
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前田睦生
Maeda Mutuo
鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。