2024/07/23 (火) 12:00 6
現役時代はトップ選手として長く活躍し、現在は評論家として活動する鈴木誠氏の競輪予想コラム。今回は福井競輪場で開催されている不死鳥杯の決勝レース展望です。
現役時代は全国の競輪場に足を運んできましたが、自分が住んでいた千葉から、最も移動が大変だったのが福井競輪場でした。
それでも北陸新幹線が開通した現在では、移動はかなり便利になっています。福井を始めとする北陸地方は、観光地としても魅力があります。
今年の元旦に発生した「能登半島地震」では石川県の能登地方を中心に、甚大な被害がありました。まだ以前の生活を取り戻せていない方も多いかと思いますが、この「不死鳥杯」は復興支援競輪ともなっています。
今大会は開催収益の一部が支援金として寄付が行われており、ファンの皆さんからの投票が被災地へと届けられます。自分もいつか福井県といった北陸地方への観光を通して、支援を行ってみたいと思っています。
今大会は脇本(雄)選手と、脇本(勇)選手の兄弟参戦が注目を集めていました。脇本(勇)選手は二次予選、準決勝で1着を取り、初めての記念競輪決勝進出を果たしています。
兄の脇本(雄)選手も危なげなく決勝に勝ち上がっており、記念競輪では初めての兄弟連係が実現。また、脇本兄弟と同じ福井所属の寺崎選手、岸田選手も若さ溢れるレースを見せていました。
それが近畿地区全体の盛り上げにも繋がった中で、決勝にも近畿だけで5人が進出。その並びは⑧脇本(勇)選手-①脇本(雄)選手-⑦稲川選手-⑨東口選手-⑥藤井選手となりました。
北日本ラインの並びが②新山選手-⑤竹内選手で、③山田選手と④根田選手は単騎戦となっています。
並びがどうなるかと思っていた近畿ラインですが、結果は5車で連係。しかも兄の脇本(雄)選手の前を、弟の脇本(勇)選手が走る並びとなりました。
こうなれば、近畿ラインは前を取ってからの突っ張り先行を狙うこととなります。脇本(勇)選手が前受けをしたのならば、番手から発進する脇本(雄)選手から、稲川選手、東口選手と近畿ラインでの上位独占が車券の本線となります。
ただ、1番車の脇本(雄)選手は後方に構えるレースが多いのもありますが、決してスタートは早くありません。むしろ、2番車の新山選手がスタートを取ってしまう可能性も充分にあると見ています。
新山選手が前受けをしたのならば、近畿ラインは北日本ラインの後ろに入ります。そこで単騎の2人(山田選手、根田選手)が、近畿ラインに蓋をするような走りをしたのならば、脇本(勇)選手は単騎の2人を前に入れて5番手に下げるはずです。
後方から巻き返していく脇本(勇)選手ですが、新山選手が突っ張っていった場合、両者の並走が続いていきます。脇本(勇)選手のスピードに陰りが見られた時に、その外から一気に発進していくのが脇本(雄)選手です。
今大会の脇本選手は初日の特選から3連勝。上がりタイムは初日から10秒7、10秒8、10秒9と3日間を通して10秒台をマークしています。福井競輪場が高速バンクであるということを差し引いても、今大会の好調ぶりがこのタイムにも表れています。
脇本(勇)選手の後ろから番手捲りを打って行った際、後ろの選手たちが捲るのは困難です。ただ、脇本選手のダッシュに稲川選手と東口選手が離れてしまった場合、脇本(雄)選手か稲川選手の後ろには、先行していた新山選手が入っています。
そうなれば小波乱はありそうですが、どんな展開となろうとも、◎脇本(雄)選手の本命は揺るがないでしょう。〇は稲川選手に打ちますが、▲は新山選手で、東口選手は△。
印は打たなかったものの、新山選手が捲っていく展開になった場合、止めに行った稲川選手の位置に切れ込んでいそうな竹内選手が、高配当をもたらしてくれるのではないかと注目しています。
鈴木誠
千葉県市原市出身。日本競輪学校第55期卒。千葉経大付属高校の頃から競輪に没頭し、吉井秀仁氏に師事。現役時代はすべての戦法を完璧にこなし、「本物の自在型選手」と評されるほど多彩なストロングポイントを武器に、引退するまで長きにわたってトップ選手として君臨した。現役時代は通算3058戦665勝、優勝109回(うちGIは競輪祭新人王を含め4回、GP1回)、年間賞金王1回、通算獲得賞金は17億を超える。18年7月に、ケガのため惜しまれつつ引退。引退後は選手経験を生かし、解説者として活躍。スピードチャンネルなどの番組にも出演している。