2024/07/28 (日) 15:00 4
現役時代はトップ選手として長く活躍し、現在は評論家として活動する鈴木誠氏の競輪予想コラム。今回は別府競輪場で開催されているオランダ王国友好杯の決勝レース展望です。
別府湾に面した場所にある別府競輪場は、地元の新鮮な海産物が宿舎の食事として出てくるだけでなく、湧出量全国一位の温泉地とあって、宿舎のお風呂も源泉からお湯を引いています。
宿舎の快適さでは全国屈指の競輪場で、施設内には同じ源泉の「競輪温泉」もあります。入湯料が安いこともあって、近郊の方も多く訪れているとのことで、皆さんも別府競輪場に足を運ばれる際には、競輪温泉にも行ってみてください。
選手たちもレースの後は、美味しいご飯を食べて、温泉で疲れを癒しているはずです。その中でも古性選手、松浦選手、山口選手といったSS班の選手にとっては、この後に控えた【オールスター競輪】に向けての、コンディションを高めていくレースともなっています。
一方、この大会がメイチの勝負となっているのが、地元の阿部選手や小岩選手であり、同じ九州地区の伊藤選手や北津留選手と共に、大会を盛り上げていました。
阿部選手は地元ファンからの声援に応えるかのように、初日の特選から3連勝。決勝では伊藤選手の番手となっただけでなく、後ろにも神奈川の松谷選手が付いてくれたので、しっかりとしたラインが形成されました。
その混成ライン(⑧伊藤選手-②阿部選手-⑨松谷選手)以外の並びは、中国ラインの①松浦選手-④岩津選手、中近ラインの⑥中釜選手-③古性選手-⑤浅井選手。⑦武藤選手は単騎となりました。
バック本数が示すとおりに、先行するのは伊藤選手か中釜選手のどちらかになりそうです。ただ、伊藤選手としては地元の阿部選手が付いているだけに、ここはしっかりと走りたい思いは、一際強いはずです。
ただ、中釜選手にとっても記念大会の決勝で、同じ地区の古性選手の前を回るからには、中途半端なレースはできないと考えているはずです。ここで激しい先行争いが起こった時に、展開に恵まれそうなのが松浦選手となります。
ただ、今大会の松浦選手は本人のレース後のコメントにも表れているように、決して万全の出来ではありません。むしろ、伊藤選手と中釜選手のどちらかが、主導権争いを制したとしたのならば、2人の番手となっている阿部選手か、古性選手にチャンスが生まれてくると見ています。
スタートを取るのは車番的に松浦選手となるでしょう。そうなると伊藤選手が中団、後方となった中釜選手が松浦選手を抑えに行く展開となります。
その時に伊藤選手が中釜選手を前に出させるのではなく、内から併せていくはずです。中釜選手がダッシュ力に優れた先行選手であるのに対して、伊藤選手は長い距離が踏める先行選手でもあります。
中釜選手の一気のカマシを凌ぎ切れたのならば、番手発進をしていく◎阿部選手の完全優勝となり、その後ろにいる〇松谷選手が2、3着候補となってきます。中釜選手が先行できなかったとしても、▲古性選手は直線勝負に持ち込めるだけの脚も持っています。また、中釜選手がカマシきった時には、優勝の可能性も出てきます。
古性選手と一緒に上がっていく浅井選手も、車券圏内に入ってきますが、単騎となった×武藤選手が間隙を縫ってきた時には、高配当も期待できます。
ただ、松浦選手は目標とするレースはまだ先ながらも、きっちりと決勝に進んでくるあたりはさすがSS班だと思います。この決勝でも見せ場たっぷりのレースをしてくれるはずです。
鈴木誠
千葉県市原市出身。日本競輪学校第55期卒。千葉経大付属高校の頃から競輪に没頭し、吉井秀仁氏に師事。現役時代はすべての戦法を完璧にこなし、「本物の自在型選手」と評されるほど多彩なストロングポイントを武器に、引退するまで長きにわたってトップ選手として君臨した。現役時代は通算3058戦665勝、優勝109回(うちGIは競輪祭新人王を含め4回、GP1回)、年間賞金王1回、通算獲得賞金は17億を超える。18年7月に、ケガのため惜しまれつつ引退。引退後は選手経験を生かし、解説者として活躍。スピードチャンネルなどの番組にも出演している。