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ほろ酔い放談 -競輪の因数分解-

【競輪偏差値70の男】北の大地で遠恋中(!?)の“大型新人レポーター”と再会「現役時代の10倍の笑顔で」 ♯52

2025/09/08 (月) 12:00 29

真夏の祭典、GI函館オールスター競輪に参加した競輪選手・中川誠一郎。レースの記憶はまったく飛んでいるが、仲間たちと過ごした濃厚な日々は色濃く残っていた模様。西武園記念の話と共に8月の思い出を怪しく振り返ります。【構成=塩次洋太(九州スポーツ)】

(撮影:北山宏一)

ーー8月は函館GIオールスター競輪と西武園GIII開設記念を走りました。まずは函館の話からうかがいます。

 函館の最大のハイライトといえば、新人レポーターに会ったことじゃないですか。

ーーレポーターですか。どなたでしょう。

 平原康多氏ですよ。引退してから、やっと会えました、はい。

大型新人レポーターの平原康多氏と筆者

ーー現役時代と雰囲気は変わっていましたか。

 鎧を脱いだ感じがあって、現役のときの10倍ぐらいの笑顔で駆け寄ってきてくれました。

ーー現役時代はケガにも泣かされ満身創痍でしたし表情も険しかったのでは。

 現役の最後の方も開き直っていたせいかいい笑顔を見せていましたけど、会心の笑顔はオレには振り撒いてくれませんでした。

ーーよそよそしいと。

 こっちが少ないチャンスを見計らって写真を撮りにいくことはあったけど、平原から駆け寄ってきて写真を撮るなんて絶対なかったから不思議なもんですよ。

ーー勝手に交換日記の相手に指名したりして、平原氏もそれを受けたりして不思議な関係性ですよね。

 今までは入り待ち、出待ちのファンみたいな感じでした。それが、もう親しい友人に再会したかのようなテンションで寄ってきてくれたから新鮮でした。

ーー無事に再会できてよかったです。

 西武園のときに宿口(陽一)にも「平原さんに会えましたか?」って言われました。西武園では会えなくて。だから「函館で会ったよ、デカい大型の新人レポーターに」って。

タイトルホルダーの宿口陽一とはなぜかウマが合う

ーー宿口選手は平原氏の直系の後輩ですね。中川選手ともなぜか仲がよくこちらのコラムにも度々、登場します。

 宿口は「誠一郎さんの親友ですね」って茶化すんです。だけど、親友ではないんですよ。遠距離恋愛の関係です。

ーーマジメな顔で言わないでください。すると宿口選手と中川選手の間柄はどうなのでしょう。

 宿口とは… 遠距離恋愛にはならないなぁ。強いて言えば「タイトルホルダーに似つかわしくない選手権」の鉄壁ワンツーって感じじゃないですか。

ーーそんな選手権ないでしょう。

 だって、宿口はまったくタイトルホルダー感がないでしょ。そういう人って他にもいるじゃないですか。

ーーそういうのは悪口になりますからやめてください。

 宿口、いいやつだから好きなんですよね。タイトルホルダーっぽくないところとか最高なんだよなぁ…。

菊地圭尚、荒澤貴史と共に。筆者だけがへべれけになる痛恨の夜

ーー他に函館の思い出がありましたら教えてください。

 オールスターは、前検の前日に荒澤(貴史)さんや(菊地)圭尚たちと飲んだ時点で終わりました。飲みすぎて記憶が飛んでしまっていたほどでしたから。タクシーに乗ったのも定かじゃなかったぐらい。

ーーそんなに激しい宴だったのですか。

 荒澤さんは仲良しだし、圭尚は荒澤さんと同門だから盛り上がるでしょう。今回、改めてわかったのは圭尚の函館での存在感というのは絶大だな、ということです。

ーー函館のプリンスと呼ばれていました。

 平原もプリンスでしたが圭尚はもう、まさにそれで。だって、オールスターなのに、誘導の圭尚への応援が一番すごかったんですから。選手たちはみんな言っていましたよ。

ーーそれは相当すごいです。

 (菅田)壱道が1着インタビューでひがんでいたぐらいです(笑)。あっ、プリンスつながりでいいますと、伏見(俊昭)さんが補充できたんすよ。

永遠のプリンス、伏見俊昭

ーー途中から参戦して1着を取っていました。

 開催中、選手の管理区域に函館ナンバーの車が入ってきたんです。そうしたら、誰かが「あっ! プリンスがきた」とか言い出して。やたらとプリンス、プリンスと連呼するのがおかしくて。

ーーなぜ、函館ナンバーだったのですか。

 たぶん(大森)慶一の車だったと思うんです。補充のために待機している間、移動するアシがないから慶一に借りて乗り回していたんだと思います。

ーーこれは書いていいのですか。

 伏見さんは喜んでくれますよ。伏見さんはめちゃくちゃオレのコラムを読んでくれているし、オレも伏見さんのを読んでいますから、いつも会うとお互いに確認しあうんです。

ーー伏見選手のコラムも多彩なエピソードが出てきます。

 会うと冷静に批判や分析、それに面白かったとか感想を言い合う間柄です。コラムニスト同士では唯一の存在で。慶一の軽(自動車)から颯爽とジャージ姿で降りてきたところなんか、まさにプリンスって感じでしたよ。

ーープリンスといえば何を言ってもいいと思っていませんか。

 いやいや、伏見さんって昔からイメージがそのままなんです。華があるから何かキラキラしている感じがあるんです。あとはほら、シコってる感もすごいあるじゃないですか。

ーー伏見選手から怒られるのを期待しています。

 伏見さんはナショナルでも世話になった大先輩。寛容だし褒め言葉だから大丈夫ですよ。あとは、コラムニストといえば(清水)裕友とも話をしました。いきなり「僕にもバイトをあっせんしてもらっていいですか?」とかからんできましたね。

ーー清水選手ならいくらでもアルバイトがありそうではないですか。

 そんなのオレに言わずに松浦(悠士)に頼めよって。そもそもアイツもコラムをやっているんだからそこで募集すればいいじゃんって。

ーーアピールの場所が違うと。

 バイトをしたいなら松浦とセットでトークショー周りをすればいいんですよ。だけど、噛み合うのかなあ(笑)。それぞれ現地集合、現地解散ぽい。

“中国ゴールデンコンビ”のトークショーが待たれる清水裕友

ーー今は休載中ですがコラムニストつながりだと脇本選手とはどんなやり取りが。

 いつも通りですね。すれ違いざまにアイスコーヒーを作ったやつをくれたりして他愛のない雑談です。あとは今月の祝勝会の話ですよ。

ーー自腹での参加が決定した福井行ですね。

 ちゃんと打ち上げ要員として呼ばれましたので前乗りになりそうです。

ーー祝勝会に打ち上げがあるのですか。

 そう、おかしいでしょ。祝勝会のあとに麻雀をしながら日本酒を飲み続けるって会みたいで。そんなの崩れ落ちますよ。

ーー脇本選手は麻雀プロとの親交もあります。当日は盛り上がりそうですね。

 それがMリーグの開幕と重なっているみたいでバタバタだからタッキーさん(滝澤和典)らは来られないみたいです。それでも盛り上がるでしょうね。今から楽しみです。

脇本雄太と筆者

ーー気になったことがありまして。レースを終えてしばらくした選手たちがコメントをしにきてくれるのですが、皆さん総じて煙臭かったんです。何があったのでしょうか。

 ああ、あれはナイターだからレースが終わった人からメシなんです。函館はジンギスカンが出るんですよ。毎日、毎日ジンギスカンをひたすら食うっていう。だから煙臭いんですよ。

ーージンギスカンが出るのですか。

 うまいけど、つらいんですよ。宿舎では酒が飲めませんから、もう生殺しですよ。だから炭酸水をビールのつもりで流し込むんです。のど越しだけ疑似体験です。せっかくのジンギスカンにお茶じゃ物足りないですよ。

ーーそんなことをする人はほかにいるのですか。

 GIに来る一流選手は酒が飲みたいだなんて思わないんですよ。(松岡)貴久ぐらいです。

ーーそれも時代ですね。

 貴久は炭酸水を使ってもっと高度な疑似アルコールを編み出していましたよ。

ーーどういうことをしたのでしょう。

 まず炭酸水をコップの3分の2ぐらい注ぐ。そのあとにウーロン茶でうっすらと色をつけてレモン絞って疑似ハイボールのできあがりです(笑)。

ーーそこまでして…。

 ウーロン茶で色を付けるんだって感心したんですよ。遠くからみると確かにハイボールっぽい。

ーーもはや、禁断症状ですね。

 しかも、どっかからジョッキまで借りてきて氷をパンパンに入れて一気であおっていた。アイツは本格的でした。

酒を飲みたくてしょうがなかった2人(右:松岡貴久)

ーーオールスターは前検日を入れれば1週間近くの長丁場でした。ほかに何かありましたか。

 荒井(崇博)さんがオールスターの順位とか、また知らないふりをしていましたね。もうちょっとでオリオン行くぐらいの順位にいたとかを、知っていたくせに(笑)。エゴサするのに知らない人いませんよ。

ーー先月のコラムにあったエゴサの疑惑をご本人に問うた人はいないのですか。

 そりゃ、荒井さんは読んでいないっていうことになっているので誰も聞けないでしょう。ただ(嘉永)泰斗が先月のコラムのそこらへんのくだりを読んでメチャクチャ笑っていました。

ーー嘉永選手に刺さりましたか。

 ああいう質問って選手がしてもいいんですか? って。熊本県20代、男性って絶対、選手じゃないですかって。一部に選手に刺さってくれてよかったです。

ーー結局、あれは誰だったのですか。

 ネタ元を明かすのはアレですが(伊藤)旭のタレ込みで、撮影はウリ坊(瓜生崇智)でした。決定的瞬間に立ち会えたってウリ坊は興奮していました。

ーー後輩の力を借りながらひと笑いを取りに行ったのですね。

 そうです。オレは何もしてなくて。なんだろう。人の話題を勝手に膨らまして、もうオレの手を離れた感じですよ。もはやAIみたいなもんで、あれで笑いが取れるなら全然オッケーですよ。

ーーもう少し、自分でも話題を振りまいてくださいよ。

 あの泰斗が爆笑したって言うんだからうれしかったですね。癖になりそうです。

ーーいつもながらに荒井選手は強かったですね。

 そうですよ。毎度、勝ち上がるから、そのつど荒井さんを見に共同インタビュー場へ通いました。通っているとテンションの違いに気付いたんです。

ーー荒井選手のですか。

 はい。初日はすごくいい感じだったけど2走目のときはものすごく機嫌が悪かったんです。

ーー中川選手にですか。

 はい、記者に塩対応は当たり前だけどオレにも塩だったんです。旭と一緒に拍手をして盛り上げているのに何か冷たかった。

ーー中川選手にすら機嫌が悪いって、もはや最後の方ですよね。

 ですね。だから誰になら話すんだろうと観察をしていたら、辛うじて(山口)幸二さんには話していました。

ーーさすがにOBの先輩ですから。

 もう、そこまでしか話してくれないんだと、寂しい思いでやり取りを眺めていました。なんでしょうかね。虫の居所が悪かったのか。こっちがテンション高くして行ってもダメなときがあるんだと思って、しゅんとして帰りました。

初日の会見後の荒井崇博と

ーー西武園記念の話をうかがいます。レースでは敗者戦ながらも2勝を挙げました。

 西武園は初日に西川(親幸)さんが応援に来てくれたんですよ。

ーー熊本の元選手の西川さんですか。

 はい。8月の松戸記念にも行っていたみたいで。そのときはオレのところに(園田)匠が走っている動画が送られてきたんです。

ーー園田選手は松戸記念を走っていました。

 なんかキャッキャ言いながら動画を撮影していて「あ、匠ですね」って返事をしたら、「西武園記念まで東京にいますので(伊藤)旭とセイちゃんの応援に行きます」って出撃予告が入っていたんです。

ーーありがたいですね。

 もちろん、すごい力になりますよ。それに不意打ちで西川さんが客席にいたら笑ってしまうから、あらかじめ予告してもらえてよかったです。

ーー普段、いるわけない人がいたら驚きますね。

 川崎記念で不意打ちがあったんです。そのときは9番車だったんですけど、発走機に着いた、アクリル板の目の前に西川さんがいたんです。

ーーそれは驚きます。

 しかも身振り手振りでリアクションを起こしてはしゃいでいるんですよ。もう吹いてはいけないから大変でした。

ーー集中しているのだからなおさらですね。

 今回は出没するとわかっていたからちゃんと心構えができていたから大丈夫でした。でも記者の町田さんが「なんか西川さんが応援にきたときって、ぜんぶ飛んでない?」って、刺さることを言ってきたんですよ。

ーーそれも答えにくいですね。

 その通りに答えてしまうと西川さんにも失礼だし、話をねじまげて面白おかしく書かれる恐れがあったから「言いづらいです」と言って逃げていました。だけど、確かに川崎も飛んだんですよ(笑)。

ーー相性とかありますからね。

 匠はいいんです。西川さんが来ると決勝に乗れるみたいで。旭も1着だったし。変ですよね。オレなんか予選で両方飛んだもんな。

左上:みずもとさん、右上:ももちゃん、左下:おおいしくん、右下:田くん

ーー前回のステッカー企画は動きがありましたか。

 何人か来てくれて、写真オッケーの人が3人ぐらい来たらしくて写真をもらいました。なんか千葉からわざわざいらした方もいたみたいで、ありがたかったです。あとYouTuberの人も。

ーー写真掲載がOKとはありがたいですね。

 4分割にすると1枚、写真が足りないでしょう。そこにこの写真を載せといてください。

ーーこちらはどなたですか。

 熊本の後輩の田(典幸)君です。6月に代謝になったので送別会をしたんですよ。そのときの写真です。

ーー田さんは田川辰二さんの一門ですね。

 辰二さんに(宮崎)大空とか半田誠とかまさに一門で送り出してきました。そこへなぜか(松本)大地さんが来て、みんな困惑していましたが(笑)。

ーー松本選手は田川一門なのですか。

 いやいや、ぜんぜん違うんです。だけど「俺は田君とは仲がいいから」とか言い出して、もう発起人ぐらいの勢いで気持ちよさげに酒を飲んでいました。

ーーネクタイを頭に巻いているのは。

 次の仕事ではスーツを着るそうなので一門でネクタイをプレゼントしたんです。歓迎会とかしてくれるだろうし、こんな感じで踊ってくださいみたいな、競輪選手の気持ちを伝えるプレゼントでした。後輩の送別会に出て自分の身の振り方を考えましたね。もう少し頑張ろうと思いました。

ーー今月も質問が届いていますのでお答えください。

Q、昔から誠一郎さんのファンです。引退の時期というのはご自身で決めていらっしゃるのですか。A級に落ちた時、A3に落ちた時、もしくは何かやらかしてあっせん停止を食らったとき、など具体的にそういう区切りがあるのかと。もしくは次にGIを取った時はどうかをお答えいただけると嬉しいです。(富山県/50代/男性)

 もうGIに出られるかもわからないけどもしも神様が取らせてくれるなら一発で辞めますよ。だけど神様も忙しいでしょう。それにオレも今は競輪が嫌いになってきているから、そんなところに神様は来てくれないと思います。年齢でいえば50歳が区切りでしょうね。あと4年ぐらいかな。

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中川誠一郎

Seiichiro Nakagawa

中川誠一郎(ナカガワセイイチロウ)。熊本県熊本市出身。日本競輪学校第85期卒業。日本競輪選手会熊本支部所属。師匠は従兄の瀬口慶一郎。 実妹の中川諒子は女子競輪選手、義弟の吉成晃一も競輪選手。2000年8月15日、ホームバンクの熊本競輪場でデビューし1着。後2日間も勝利し、デビュー場所で完全優勝。2016年日本選手権競輪(静岡)、2019年読売新聞社杯全日本選抜競輪(別府)、高松宮記念杯競輪(岸和田)を優勝している。好きな食べ物は寿司。

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