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【岩本俊介】充実の前半戦を終えて地元ビッグへ「今できることは最大限あがくだけ」 南関の大エース・深谷知広の存在にも言及/サマーナイトフェスティバル特別インタビュー

アプリ限定 2024/07/12 (金) 18:00 30

3月は出走したレースすべて1着で、伊東G3も完全優勝。5月はいわき平GI「日本選手権競輪」で準優勝。前半戦で飛ぶ鳥を落とす勢いの活躍を見せた岩本俊介が地元ビッグに参戦する。今回は前半戦を振り返り「好調の理由」や「賞金ランキング6位に位置する現在地」について話を聞いた。インタビュー途中には、連係することが増えた深谷知広の存在にも言及。グランプリ出場の射程圏内にいる岩本俊介の胸の内に迫った。(取材・文=八角あすか)

岩本俊介(撮影:北山宏一)

前半戦は“準備してこそ”の結果

ーーまず、気になるのは高松宮記念杯の落車の影響です。状態はいかがでしょうか?

岩本 宮記念杯の落車は軽傷で済んだので、大事には至らず1日休んで体の様子を見て、翌日から乗り始めました。直前の小松島記念は成績が全く振るわなかったんですが、うーん…難しいですね。

ーーその小松島記念、シリーズをふり返ってどうでしたか?

岩本 シリーズ全体を通じて全く走れていなかった。展開もあったりはするけど、僕自身も自転車が出なかったので、そう甘くはないなと。見てもらった通りの結果ですし、サマーナイトに向けては不安しかないですね。

ーーそこは気持ちも切り替えていただいて! 今年の前半戦をふり返っていただきたいと思います。

岩本 成績面は結果だけを総合して見ると、今までの中で最高の成績を残せたんじゃないかな。ダービーの2着があったし、伊東GIIIも獲らせてもらい、色々と充実した前半戦でした。他人事みたいでアレだけど「すごいなぁ」と(笑)。

ーーご自身の中での感触や手応えの部分ではどうでしたか?

岩本 展開もあるし、運が良い部分もだいぶあった。運が良いと言っても、そういう流れが向いたときに脚の準備ができていないと獲れるものも獲れません。準備ができていた上で、流れがこっちに向いたなっていう前半戦でしたね。

3月4日〜4月4日まですべて1着の11連勝、伊東GIIIで完全優勝(写真:チャリ・ロト提供)

ーービッグウェーブ!ですか。

岩本 そんな大層なものじゃないですよ(笑)。自分よりも脚のある選手が多い中で力が拮抗してくると、やっぱり車番が良かったり、レースの中の流れだったりでみんなが狙っているわけですけど、良い位置に入れたっていうところ、あるいは先手になっても先行して逃げ粘れたっていうようなところですかね。

 同じような力の人がいっぱいいて車番がない厳しい状況の番組もあるので、そういう中でも総合的に見て流れは良かったんでしょうね。もちろん、練習も頑張って準備してこその結果でもあるんですけど。あとは大事な場面で強い味方の後ろに付けたこと。ダービーでも大事な局面で深谷の後ろに回れた。そういうところだと思います。

ダービー準優勝で感じたもの

日本選手権決勝ゴール前、外から伸びた9番車・岩本俊介、あと一歩届かず(撮影:北山宏一)

ーーダービー2着、そこまでたどり着いた要因はどんなところでしょうか?

岩本 それこそあの開催は、完全に流れがこっちに向いた。運も含めて、車番も含めて、味方も含めて。そういうチャンスのある状況が来て、そのチャンスをちゃんと活かせるかというような感じでした。運で言えば二次予選かな。内にどん詰まりして、森田の内側が空くという運の良さ! 構えていたから、そこに行けたんですけど、そういう風な準備もできていた。あの場面に関しては、まさに流れがこっちに向いた。自分の力だけではどうしようもない、他のそういう作用が働いたように思います。

ーー準決勝は深谷選手との連係でした。

岩本 準決勝に関しては深谷が積極的に行ってくれて強い走りをしてくれて、みんなが早めに仕掛けられなかった。僕はその後ろにいて、一番良い位置で。深谷をもっと残せたら良かったけど、流石に無理なところまで来てしまったので、前に踏ませてもらいました。あのレースに関しては深谷でしょうね。それ以外の何でもないです。

ーー仲間たちの思いも背負って迎えた決勝は単騎でした。

岩本 単騎で車番もなかったので、かなり厳しい戦いだなと。前がゴチャついてくれて隊列が短くなったところで、自分がちゃんとラインの切れ目にいることができて、外を踏めるかどうかだった。チャンスはそこしかないなと。まさに理想の展開になってくれました。

ーー初のGI決勝を走ってみて新しく見えたもの、感じたことはありますか?

岩本 思っている回答と違うかもしれないけど、“自分が”っていうよりも周りの人がすごく喜んでくれて、自分のためにこんなにも喜んでくれる人たちがいるんだなっていうのが一番でしたね。それが嬉しかったですね。

GI決勝進出は初、特別選手紹介では笑顔も見られた(撮影:北山宏一)

ーーやはり反響は大きかったですか?

岩本 多方面から連絡をいただいて、そんなにも自分に気を遣ってくれたり、目をかけてくれていたというか、そういうのが見えて一生懸命やってきて良かったなって。やっている方はやるべきことを淡々とやって、淡々と終わったなって感じだったんですけどね。

ーーさらにモチベーションが上がりますね。

岩本 今は「ダービーも終わっちゃったし」っていうのが自分の中にはある。その後も何本か走っているし、もう次に向かっているので、何言ってるの! みたいなことを言われちゃうんですけど「良い思い出ができたな」っていう感じ(笑)。もう今年のダービーは終わっちゃいましたから。

ーーちなみに、特別昇級をしてGI初出場となったオールスター(09年)を覚えていますか?

岩本 記者さんの推薦枠で出場させてもらったんですけど、当時は記念も走ったことがなくて一発目がGIだった。なので、思ったようにできず、何もできずにすっ飛ばされて、3日間走ってお帰りになったという苦〜い思い出です。若かったですし、気も立っていて、相当悔しかったんじゃないかな。

ーー悔しさを糧に昇級以来、ずっとS級で戦っていますが、以前と比べて今の競輪は何が一番違いますか?

岩本 まず、第一に誘導に関してかな。タイムがグンと上がったし、仕掛けも残り2周からになって全体的なスピードとしては総合タイムもめちゃくちゃ上がっている。スピードとスタミナの両方が必要な時代になりましたね。

タイムが上がり選手たちに求められる要素にも変化がある(撮影:北山宏一)

今の時代の競輪、深谷知広の存在

ーーそのあたりに対応するために試行錯誤してきたことはありますか?

岩本 ありますね。今はとにかくスピードが速く、体力を大きく消耗しながらゴールまで行かないといけない感じになった。だからこそ、レースでちゃんと使える脚や体を整えなきゃいけないし、あとは自分のレーススタイルに適応した練習をしないと。まごまごしていると今回の小松島記念みたいに置いてかれちゃいますから。

ーー優勝された犬伏湧也選手をはじめ、強い若手がたくさん出てきました。

岩本 ああいうタイプの選手が出てきたし、なおかつ、あんなにハイペースの中で眞杉匠、新山響平みたいに2周駆けても最後まで行けちゃいます! というような選手もいる。どちらに振っても大丈夫なように準備はしていますけどね。

ーー番手を回る機会も増えてきました。昨年、取材した際には戦法チェンジについて「村上義弘さんが言っていた通り、そういうの(追い込み・マーク転向)は自然の流れ」という話をしていました。

岩本 基本的には自力と思っているし、若い子たちがいるときは付きますけど、自分としてはスタイルはそんなに変わっていない。いずれそういう風になって来るだろうし、わざわざ自分からマーク屋になります・ならないって言うんじゃなくて「自然の流れに任せて行けるところまで自力やった方が良いよ」っていう話を村上義弘さんが田中晴基にしていたっていうのを聞いて、良い話だなと。又聞きです。

ーー連係が増えている深谷知広選手は、同じ自力選手としてどのように見ていますか?

岩本 “フカヤサン”ですか。一選手として見たら、ものすごく強い自力選手ですよね。南関が誇る静岡の大エース! 昔からその強さは知っているけど、本当に力が抜けていて昔から引っ張ってきた一人。自力選手として、とてつもないタテの力がある上に、最近はヨコもできるし、深谷がマルチにやったら誰も敵わないと思う。

進化し続ける南関のエース・深谷知広(撮影:北山宏一)

ーー深谷選手の南関移籍は大きいですか?

岩本 だいぶ大きいですよ。自分も後ろに付かせてもらい、結果を出させてもらっている。自力選手が強いってことは、南関で勝ち上がる選手が増えるってこと。神奈川にも強い選手がたくさんいますけど、その中でも深谷は光っている存在。影響力、大です。

ーー深谷選手の移籍は本当に大きく勢力図を変えましたよね。

岩本 静岡に深谷がいるっているのがまたアレですよね。これがまた深谷が神奈川だったら、「神奈川さんだけで」ってなっちゃう。深谷が静岡にいることで、組みようというか連係パターンがいっぱいできるじゃないですか。南関全員のチャンスが広がりますよね。

現時点に抱く気持ち「最大限あがくだけ」

ーー千葉といえば、石井貴子選手のGI優勝がありました。感じるものはありましたか?

岩本 ありましたね。もともとスーパースターだった選手が大きい怪我をして、それでも選手を続けて乗り越えて。あの結果に結びつけた執念、気持ちは男女関係なく一選手として凄いな、尊敬するなって思います。

大怪我から復活し、第2回パールカップを見事制した千葉・石井貴子(撮影:北山宏一)

ーー千葉勢みんなで盛り上がっていってほしいですね。

岩本 もう、おっさんばかりですけどね(苦笑)。若手のみなさん、お待ちしております。早くしてくれないといなくなっちゃうよ!

ーー現在の賞金ランクは6位(7月12日現在)です。そのあたりの意識や、ご自身の立ち位置をどのように捉えていますか?

岩本 まだ前半戦が終わって何も決まっていないこと。結局、これから自分に何ができるかと言ったら、あがくだけ。最大限にあがく!(笑)。周りは気を遣って色々と言ってくれるけど、僕はまだそこに気持ちがないですね。まずは一戦一戦、しっかり戦っていければと思います。

ーー岩本選手はご家族をすごく大切になさっているイメージがあります。ダービーの結果は喜びも大きかったのでは?

岩本 すごく喜んでくれて、家族みんなに良い思い出ができたなって。そういう言い方をすると、みなさんに「思い出なんて言わないでください」って言われますけど(笑)。

ーーお子さんは競輪に興味を持ってくれていますか?

岩本 小学生なので、だいぶ分かっているみたいでダメ出しされることも。「早く行きすぎると最後に負けちゃうから、最後にもっと頑張れば良いんじゃない」とか「あとは落車しないようにやってね」とか。それはそれは的確なアドバイスで(笑)。

ーーそんな愛のあるアドバイスを胸に(笑)、地元開催のサマーナイトに向けて意気込みをお願いします!

岩本 地元でのサマーナイトに出場できることは本当に嬉しいことで、いつも松戸記念でも応援してくれるファンのみなさんに会えるので、最後まで全力を尽くして諦めずに頑張りたいと思います!応援よろしくお願いします。

地元戦に滅法強い岩本俊介、家族のアドバイスを胸にいざ出陣(撮影:北山宏一)

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