アプリ限定 2024/07/17 (水) 12:00 15
2021年・東京五輪はリザーブ選手としての選出になるも、2024年・パリ五輪では正選手として夢の舞台に立つ太田りゆ。出場種目は女子スプリント、女子ケイリンでメダル獲得を目論む。パリ行きのチケットを手にしてからの心境やコンディションのレベルはどうなのかー。静岡・伊豆ベロドロームでインタビューを実施した。(構成:netkeirin編集部、取材日:2024年6月26日)
ーー今のコンディションはいかがでしょうか?
徐々に良くなっている実感がありますし、トレーニングの段階としてはキツいセッションを終えて、1週間くらいのリロード期間があって、今はレースのために特化したメニューになっています。私は今の期間の洗練されていく感じが好きなので、充実して取り組めています。
ーーより研ぎ澄ましていく段階にいるのですね。ご自身の中でテーマはありますか?
選手生活の中でおそらく最後の研ぎ澄ませる期間になっていると思うので、毎日1日1日、1本1本を丁寧にと考えて、なおかつ思い切りやるように心がけています。
ーー技術的なところで突き詰めている部分はありますか?
ライン取りですね。少しでも距離が短いところを走るという当たり前のことに向き合っています。あと、5年ぐらい乗ってきた自転車から新しい自転車になっているので、慣れるための期間にもなっています。3週間、4週間と乗っていますが、かなり体にマッチしてきていて、言うことを聞いてくれるようになったと思っています。
ーー本番が近づいてきてメンタル面はいかがでしょうか?
オリンピックが近づいてきてドキドキするみたいな、迫ってくるような感覚はないですね。ここを目標にやってきたので、突然やってきたものではないですし、気持ちの準備はできている状態なのかもしれません。その中で調整段階を過ごしていて「うまくいっているかな?」とかはすごく気になりますし、それでうまくいっていると思えているので、不安はないです。
ーーとても充実した表情をしているように見えるのですが、不安よりも期待が大きい心境でしょうか?
そうですね。やっぱり東京オリンピックはリザーブでしたし、「またダメだったらどうしよう」と不安に思う時期もありました。競輪選手になった時から、私にとってオリンピックは大きなやりたいことで目標でした。出場をつかめた今は不安よりも楽しみな気持ちですし、もうやるだけだ!って思います。毎日楽しいです。
ーー代表発表会見のインタビューで「最高傑作の自分を出せるように」という言葉もありました。どのようにそこまで持っていきますか?
私は調子が安定している選手ではなくて、合わせたところにビシッとベストパフォーマンスを出していくタイプです。自分のことを浮き沈みがあって波がある選手だと思っています。その波を合わせることができなかったこともありますけど、東京五輪が終わってからは合うことの方が多かったです。
コーチとも相談しながら、「このタイミングでベストを出したいなら、この段階ではこういう調整をしよう」と話し合いもできていますし、調整の仕方そのものもわかってきています。調整の仕方も含めて、ここまでやってきたことをすべて出していきたいと思います。
ーー5月下旬のジャパントラックは心配の残る結果だったようにも思うのですが、今お話ししていたような浮き沈みの部分だったのでしょうか?
はい。波を合わせている開催ではありませんでした。調子を上げるために追い込んで一旦調子そのものを下げるんですが、疲れ過ぎるくらいに追い込みます。疲れてパフォーマンスを出すのが難しい状態になるのですが、それは私もコーチも織り込み済みのレースでした。調整方法についてはジェイソンとも話し合って決めて取り組んでいるので、結果にショックを受けることなく飲み込んでいます。
ーー新しい自転車についての印象を教えてください。
まだわからないというのが正直なところです。スピードを立ち上げるのは遅めで、スピードに乗ってくるとしっかり流れていく感じの特徴なのかなと感じています。私の良さは低速からトップスピードに上げていくパワーなので、その部分が自転車と噛み合って適応できればいい感じになるんじゃないかと思います。すでに最高パワーは今まで乗ってきた自転車と誤差のないパワーを出せています。
ーー出場する種目それぞれにどのような目標を持っていますか?
スプリントとケイリン、ともに私の中では大小なくここまで頑張ってきたつもりですが、やはりケイリンの方がメダル獲得の可能性はあるのかなって思います。ネイションズカップでもメダル獲得はないんですが、そういった過去に捉われることなく、ベストを出せればメダル争いに食い込める力が自分にはあると信じています。最大限のパフォーマンスを発揮できるように走ります。
スプリントは「前回オリンピックに出場できなかったのはスプリントができなかったから」と思っていた部分が大きかったんですが、そこからしっかりジェイソンコーチや先輩にアドバイスをもらって、レースへの取り組み方や走り方をやってきてアジアチャンピオンにまでなれた思い入れがある種目なので、諦めずにやりたいです。200mの予選ではベストタイムを出してレースに臨みたいなと思います。
ーーケイリンのレースは展開に大きく左右される部分もあると思いますが、どのような展開をイメージしていますか?
展開をイメージをしてしまうと逆に良くないと思うので、流れの中でしっかり何でもできる準備をしていきたいなと思ってますし、それに対応する脚力とスピードはあると思っています。
ーー過去にチャンピオンズ・リーグを含めてヨーロッパ圏で走った経験も多数あるかと思いますが、パリについて得意・不得意など相性はありますか?
パリのトラックに関しては3回走ってると思うんですけど、すごくワイドなトラックでギヤが重たいので、私にとっては有利なトラックだと感じています。今のコンディションを考えれば自己ベストを狙えるとも思っています。あとヨーロッパの気候は湿度がなくて、得意なんです。暑くてじめじめ湿度が高い東南アジアや日本(笑)は少し苦手なんですよね。でもヨーロッパに関しては大丈夫で、むしろ良いイメージを持っています。
ーーメイクやネイル、髪色は五輪用に何か変える予定はありますか?
たぶんこの顔のままで行くと思います(笑)。私はレースでもメイクをしっかりするのですが、変な話、“メイクも含めて練習”しているんです。このメイクは落ちないなとか崩れないな、とか。私的には結構大事な練習です(笑)。だから特別なことはせずに、練習してきたメイクでやろうと思います。だから今日のこの顔で行くと思います。ネイルは検討中ですね。自分が可愛いとか綺麗だと思うもので気分が上がるので、じっくり考えます。
ーーそこまでメイクにこだわる理由は?
真面目に話す内容ではないように思われるかもしれませんが(笑)。私にとってメイクはちょっと自分の自信に影響があるものです。メイクがしっかり決まらないと少しだけ自信が下がって弱くなるような気持ちになるんですよね。うまく言えませんが“太田りゆ度”みたいなものが落ちてしまうような。だからそこにもしっかりとこだわっていきたいです。
ーー養成所時代にDVDで五輪の舞台に憧れた、という話を聞きました。憧れから現実に変わる中でイメージにどんな違いが出てきましたか?
当時、雨の日に何もトレーニングができなくて、HPDでオリンピックの映像を見せてもらって身震いして。私これやりたいなってなりました。自分にとってとても遠い世界でしたね。それから時間が経つにつれて現実味を増していく期間の中で、キラキラキラキラしていた憧れがズドーンって見えなくなったこともありました。でも自分が最初に思った「やりたい気持ち」もキラキラキラキラした憧れの印象もそのまま変わらずになくならなかったです。なくならなかったから続けて来られたんだって思います。
ーーパリでどんな姿を見せたいですか?
最高のパフォーマンスで結果を出すところを見せたいです。それだけじゃなくて、自分が今まで積み上げてきたもの、仲間たち、JAPANチーム。そのすべてで自分が作られているみたいなところまで見てもらえるとうれしいです。
netkeirin特派員
netkeirin Tokuhain
netkeirin特派員による本格的読み物コーナー。競輪に関わる人や出来事を取材し、競輪の世界にまつわるドラマをお届けします