2021/05/30 (日) 12:00 2
現役時代はトップ選手として長く活躍し、現在は評論家として活動する鈴木誠氏の競輪予想コラム。今回は広島競輪場で開催されている全プロ記念競輪 SPR賞のレース展望です。
2日間開催となった【全プロ記念競輪】は、いつもの選抜競輪とは雰囲気が違った大会ですが、FII開催の中でも賞金が良く、またSPR賞に出走が叶うと、今後の特別競輪ではシード選手になるチャンスも出てきます。
また、次にこのメンバーが揃うであろう、6月の【高松宮記念杯競輪】も見越したかのように、今日の特選では白熱した戦いが繰り広げられられました。
結果として予想も難しいレースが続きましたが、それでもSPR賞には実力者がしっかりと勝ち上がってくれています。まずは4場所連続優勝がかかる松浦選手ですが、その後ろには特選と同じように、中四国ラインで小倉選手が回ります。
関東ラインは吉田選手-鈴木(庸)選手-諸橋選手が3車で並び、中近ラインは古性選手の後ろに坂口選手。そして鈴木(裕)選手と佐藤選手は単騎を選択しました。
広島バンクの特徴としては、早めに動いていかないと捲り切れないだけでなく、直線も長いので、差しが決まりやすい傾向にもあります。
特選の12レースで、早めに捲っていった松浦選手の調子の良さもさることながら、それ以上の状態と言えそうなのが、【三山王冠争奪戦】を優勝した小倉選手です。
【三山王冠争奪戦】では前を任せた清水選手を、3日間続けて差し切ってますし、特選でも松浦選手を鋭く抜き去っていきました。
SPR賞でも調子のいいこの2人が中心になりそうです。松浦選手は地元でのレースだけに、見せ場も作りたいはず。流れが緩んだのなら、自分から一気に動いていくに違いありません。しかしながら、先行ラインの仕掛け次第によっては、そうやすやすと、捲りが決まらない可能性も出てきます。
このメンバーで先行しそうなのは、唯一の3車となった関東ラインだとなりそうです。そうなれば中近ラインは中団から捲っていくでしょうし、前を取った中四国ラインは一度引いてから、早めに巻き返していく流れになるかと思います。
ただ、関東ラインの先頭を走る吉田選手は、最近、捨て身の先行をしなくなった感もあります。そうなった場合、後ろを回る鈴木(庸)選手は、タイミングを見て番手捲りを仕掛けてもいいと思いますし、早めに動き出したとしても、そのまま押し切れる脚も持っています。そうなると、後ろにいる古性選手だけでなく、松浦選手でさえも苦しくなるでしょう。
単騎の佐藤選手は位置取りが鍵となりそうです。ポジション的には実力のある中四国ラインの3番手か、もしくは、先行しそうな関東ラインの後ろに付けるのではと見ています。それでも特選12レースにおける、4コーナーで突っ込んできたスピードも良かったですし、流れ次第では上位にも食い込めるはずです。
佐藤選手だけでなく、同じく単騎を選択した鈴木(裕)選手も、「曲者(くせもの)」というべき勝負強さがあります。その意味でもSPR賞は面白いレースになりそうです。
鈴木誠
千葉県市原市出身。日本競輪学校第55期卒。千葉経大付属高校の頃から競輪に没頭し、吉井秀仁氏に師事。現役時代はすべての戦法を完璧にこなし、「本物の自在型選手」と評されるほど多彩なストロングポイントを武器に、引退するまで長きにわたってトップ選手として君臨した。現役時代は通算3058戦665勝、優勝109回(うちGIは競輪祭新人王を含め4回、GP1回)、年間賞金王1回、通算獲得賞金は17億を超える。18年7月に、ケガのため惜しまれつつ引退。引退後は選手経験を生かし、解説者として活躍。スピードチャンネルなどの番組にも出演している。