2021/05/23 (日) 15:00 3
現役時代はトップ選手として長く活躍し、現在は評論家として活動する鈴木誠氏の競輪予想コラム。今回は前橋競輪場で開催されている三山王冠争奪戦の決勝レース展望です。
【三山王冠争奪戦】決勝の並びは四分戦となりました。唯一のS級S班となった清水選手の後ろには、準決勝12Rと同じように小倉選手。脇本選手の後ろも、準決勝10Rの並びと同様に東口選手が回ります。
準決勝11Rだけでなく、初日から全てバックを取ってきた竹内選手には、今開催で幾度となく連携してきた吉田選手が付けて、南関東ラインは渡邉選手-海老根選手の並びになりました。阿部選手は単騎でのレースを選択しています。
決勝で注目となるのは自力型選手の仕掛けになると思いますが、今開催で出来がいいなと思えるのは竹内選手です。先行して上位に来ているだけでなく、準決勝でも思い切って前受けしてから抜け出して、すかさず踏み出していった辺りは、状態の良さだけでなく、レース感も冴えている印象を受けます。
脇本選手も準決勝では先行こそできませんでしたが、一度、体制を整えてからの捲り追い込んできた走りは見事でした。脇本選手は先行選手ながら、ダッシュこそあまり良くないのですが、中長距離が得意という特徴と軽いバンクを生かすかのように、高いスピードを維持する走りで、後方から一気に捲り切りました。
清水選手は準決勝で早め早めの仕掛けになっただけでなく、雨谷選手とのもがき合いを制しながら、2着に残っていますし、渡邉選手も三日間を通して安定したレースを見せています。
ただ、どのラインも2車ということが、予想を難しくさせています。清水選手はS級S班らしく、前受けをしたとしても小細工せずに、ちょっとでも流れが緩むようならば、自分のタイミングで仕掛けると思います。
そうなると先行争いは、バックを取り続けてきた竹内選手と、準決勝で先行できなかった脇本選手となりそうであり、後方に待機している渡邉選手は、二人が先行争いを繰り広げて、車列が短くなった時に一気の捲りを狙ってくるはずです。
唯一の単騎となった阿部選手が、どのラインの後ろに付けるかにも注目しています。本来ならば清水選手-小倉選手の後ろなのでしょうが、今回は先行したラインか、捲っていったラインの3番手に付いていった方が有利に運べるからです。
もし、自分が阿部選手の立場ならば、先行するであろう脇本選手-東口選手、もしくは竹内選手-吉田選手の後ろを狙っていきます。阿部選手は追い込み選手ながらも、バックぐらいからなら、捲り追い込みできる脚も持っていますし、もし、先行できるラインの3番手にすんなりと入れるようならば、チャンスも充分にあると見ています。
先行したラインの3番手は、どの選手にとっても魅力的なポジションです。その一方で、自力型の選手が8番手に入ってしまうと、そう捲れないのがこのバンクの特徴でもあります。調子が良さそうに見えても、思うような結果を出せないことがありますし、それだけにスピード、駆け引き、ラインの力、そして、思いっきりの良さを出せた選手に勝機が巡ってきそうです。
鈴木誠
千葉県市原市出身。日本競輪学校第55期卒。千葉経大付属高校の頃から競輪に没頭し、吉井秀仁氏に師事。現役時代はすべての戦法を完璧にこなし、「本物の自在型選手」と評されるほど多彩なストロングポイントを武器に、引退するまで長きにわたってトップ選手として君臨した。現役時代は通算3058戦665勝、優勝109回(うちGIは競輪祭新人王を含め4回、GP1回)、年間賞金王1回、通算獲得賞金は17億を超える。18年7月に、ケガのため惜しまれつつ引退。引退後は選手経験を生かし、解説者として活躍。スピードチャンネルなどの番組にも出演している。