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平原康多の勝ちペダル

【#44】「このメンバーをそろえて誰も優勝できなかった」課題と収穫が見つかった地元西武園

2024/04/25 (木) 18:00 45

今月のコラムは、地元西武園でのGIIIを終えたばかりの平原康多選手を直撃しました。1月大宮GIIIに続き、西武園でも埼玉勢は5人が決勝に駒を進めましたが、平原選手の3着が最高。課題と収穫が見つかった大会になりました。コラムの最後には、若手への思いも熱く語ってくれました。

課題と収穫が見つかった、地元西武園(写真提供:チャリ・ロト)

◆最強布陣で挑んだ西武園GIII決勝「力不足を感じた」

ーー地元GIIIお疲れ様でした。まずは大会を振り返っていただきたいのですが。

 もうレースの振り返りはいいんじゃないですか? ははは。

ーー毎回それを言いますね(笑)。僕自身も気になった点がいくつかあったので、きっとファンの方も知りたがっていると思いますよ。

 なるほど。それはどこですか?

ーーまず、初日です。日ごろから連係している眞杉匠選手、坂井洋選手と別線勝負になりました。その経緯を教えて下さい。

 西武園は僕もタツオ(武藤龍生)も普段から練習しているホームバンクです。僕が1人なら普段から世話になっている栃木勢の3番手で良かったけど、タツオが4番手だとチャンスが薄れてしまう。タツオは自分の後ろでいいと言ってくれたし、どこまでやれるか分からないけど頑張ってみようと。

ーー結果的に深谷知広選手のまくりに続く形になりましたが、初手は深谷選手ではなく、栃木の後ろが欲しかったんじゃないですか?

 その通りで、1車でも前にいたかったけど、車番的に(1番車の)深谷に取られてしまいました。あとで聞いたら、深谷も作戦的に同じ考えだったんです。

昨年から強さが増した深谷知広選手(撮影:北山宏一)

ーー深谷選手の上がり10・9秒のまくりはすごかったですね。

 一緒のタイミングで踏んだから離れずに付いていけたけど、加速がすごくて、ゴールがMAXのような踏み方でした。自力の力の差を感じましたね。

ーー昨年からの深谷選手の強さがさらに増していますね。

 静岡に移籍してから、漢字の「競輪力」が上がっていますよね。スピードだけじゃなく、トータルで強さを感じます。

ーー二次予選は眞杉選手の番手で安心して見ていられるレースでした。気になったのは準決です。眞杉選手でも坂井選手でもなく、森田優弥選手、武藤選手とのセットでメインレースに抜擢されました。すごく番組さんのエールのようなものを感じました。

 SS班を差し置いて12レースに入れてもらった。それは意外だったし、森田がそこまでの選手になったんだなと感慨深かったですね。

ーー森田選手もさぞ気合いが入ったでしょうね。

 森田自身もそう感じていたと思いますよ。

ーーレースにも森田選手の責任感を感じました。ただ、ゴール前で平原選手が中のコースを空けた時に、杉森輝大選手が入ってきてヒヤリとしました。

 ははは、そうなんですよ。タツオにコースを空けたつもりだったのに、タツオは外を踏んでいた。余裕があったんでしょう。内を見たら、違う(ユニフォームの)色が入ってきたから、焦って締めました。

西武園競輪「ゴールド・ウイング賞(GIII)」決勝レース(写真提供:チャリ・ロト)

ーー決勝は再び地元5人での結束となりました。大宮GIIIよりもさらに期待値が高い最強布陣だったと思います。レース前はどんな話をしていたんですか?

 番手を任せた森田は事故点がたまっていたし、俺とタツオで止められるだけ止めるから、お前は真っ直ぐ走れと伝えました。

ーー黒沢征治選手が先手を取りましたが、森田選手の番手発進のタイミングが早くなったように見えました。やはりSSの深谷選手と眞杉選手のプレッシャーなんでしょうか。黒沢選手はあの時点でもう失速してきたのですか?

 プレッシャーを感じていたのは森田よりも黒沢だったかもしれません。本人も言っていましたけど、変なところで踏みすぎて、かかり切っていなかったですね。ただ、レースは前の2人に任せていたし、頑張ってくれました。

ーー結果的にSS2人のワンツーになってしまいました。平原選手の手応えはどうだったのですか?

 このメンバーをそろえて誰も優勝できなかった。力不足を感じました。この悔しさを糧にして、もっとみんなで強くなりますよ。僕自身は西武園から10年前に作ったフレームを使い、昔に近いセッティングにしたら、元々の乗り方になって、だいぶ体が楽でした。自転車の感じも良かったです。

◆時には無理することも…厳しいペナルティー

競輪には厳しいルール、ペナルティーがある(撮影:北山宏一)

ーー今年は休まず走っていた平原選手ですが、立川FIを欠場しましたね。

 宇都宮の帰りに疲れが出て、具合が悪くなっていきました。今って、何日前に欠場を出さないとペナルティーを食うルールがあるじゃないですか。立川の出欠を決めないといけない期日がピークで、体調が悪かったんです。

ーーその後はすぐに回復したんですか?

 そうなんですよ。次の日はだいぶ良くなっていたし、立川の前検日には完全に走れる状態でした。あのルールは、ドタキャン防止のためなんでしょうけど、走りたくても走れないケースも出てくるんです。

ーーそういう弊害があるんですね。途中欠場2回に対するペナルティーも選手は窮屈に感じていますよね。

 本当に調子が悪くて帰りたいケースもありますからね。お客さんに迷惑かけられない、ラインの仲間に迷惑かけられないと思っても、ルールのせいで無理して走らないといけなくなる。今は賞金が上がってきているから、選手も走った方がいいのは分かっています。欠場するということは、その賞金を棒に振るわけですから、それだけでも十分なペナルティーになるのでは?と選手目線では感じますね。

◆届きそうで届かないダービー王

ダービー王の称号は選手の夢(撮影:北山宏一)

ーー賞金が上がっているという話ですが、今回はダービーの優勝賞金が8,000万円台に突入しました。

 金額というのは結果です。手にすればうれしいでしょうけど、あくまで目指すのは金額ではなくタイトルですからね。

ーー平原選手はGIの中でまだダービーとオールスターの優勝がないですね。

 新田祐大に微差負けで2着になった時(15年京王閣)が、最もダービー王に近づいたんですけど、届きそうで遠いものに感じました。

ーーGIの中でも最高峰のダービーは、どうしても手にしたいタイトルですか?

 ダービー王の称号は選手である限り、夢ですね。

ーー今年はいわき平で開催されます。平バンクの印象はどうですか?

 形状が特殊だし、直線は長いのに外が伸びるわけでもない。説明するのがすごく難しいんですけど、ひと言で言えば、すごく走りにくいバンクです、はははは。

ーーそこで勝つには、何が必要でしょうか?

 う〜ん…、運ですかね、ははは。
 さっきも言いましたけど、自転車の感じと乗り方が良くなっているので、ダービー本番までにもっといい感覚で走れるように練習します。

◆自力選手としてのプライドはしっかり持って欲しい

ーー今回はファンの方からいただいた質問にいくつか答えて下さい。まず、どの季節が好きですか?

 春が一番好きです。暖かくなってきて、練習にも最高の季節ですね。

ーー成績も春ぐらいに上がる感じなんですか?

 それがそうでもないんですよ。レースや成績は冬場の方がいいんですよ。

ーー確かに、獲得したタイトルは10月から2月に集中していますね。

 好きだからってうまくいくわけじゃないのが難しいんですよね。

ーー恋愛と一緒ですか?

 そうなんじゃないですか? はははは。

ーー次の質問です。どの競輪場が好きですか?

 ご飯がおいしいところがいいので、松山と小倉は居心地がいいですね。松山の宿舎のバイキングは最高だし、小倉は鍋焼きうどんが大好物です。

ーー昼間とナイターではどちらが好きか?という質問もあります。

 走る時間帯で言えばナイターも好きなんですけど、夜はスピード感覚にズレがあるんです。景色の見え方は昼の方がいいですね。

山口多聞選手(photo by Shimajoe)

ーー最後の質問です。今、注目の若手選手はいますか?

 今回一緒だった山口多聞は、絶対にこれから強くなる選手だと思いますよ。

ーー山口選手は二次予選で太田龍希選手との連係になりましたね。あの番組は少しもったいない感じがしました。

 若い時の自分が太田の立場なら付いていなかったです。簡単に若手同士が連係してしまう。これも時代ですかね。

ーー確かに平原選手が若い頃は、武田豊樹選手とも別線でバチバチでしたよね。

 僕に限らず、当時の自力選手はみんなそういう気持ちを持っていたと思います。俺はお前より強いぞって。

ーーとなると、あの場面で山口選手と太田選手は別でやるべきでしたか?

 ああいう風な番組を組まれるということは、太田がそういう選手と見られてるってことなんですよ。もっと自力としてのプライドを持って欲しかったし、別で戦うぐらいの気持ちが欲しかった。黒沢ぐらいになって山口の後ろを回るなら分かるけど、太田はまだ若いですから。それは本人にも伝えました。

ーー初日に平原選手が栃木勢と別で戦ったのも、そういう気持ちが残っているからなんですね。

 選手は闘争本能がなくなったら終わりです。全てに甘えが出て、どんどん弱くなっていってしまう。だから戦う気持ちだけは、持ち続けていたいですね。

(※文中敬称略)


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平原康多

Hirahara Kota

埼玉県狭山市出身。日本競輪学校87期卒。競輪選手・平原康広(28期)を父に持ち、その影響も受けて高校時代から自転車競技をスタート。ジュニア世界自転車競技大会などで活躍し、頭角を現していった。レースデビューは2002年8月5日の西武園。同レースで初勝利を記録。2009年には高松宮記念杯と競輪祭を制し、2010年も高松宮記念杯で勝利。その後もGⅠ決勝進出常連の存在感を示し、2013年は全日本選抜、2014年と2016年には競輪祭、2017年も全日本選抜などで頂点に輝く。最高峰のS級S班に君臨し続け、全国の強者と凌ぎを削っている。

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