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平原康多の勝ちペダル

【#43】「底は完全に脱した」休みなく出場する平原康多が感じる悔しさと新たな気付き

2024/03/28 (木) 18:00 42

今年はFI戦も休みなく出場している(撮影:北山宏一)

S級1班になった今年の平原康多選手は、FI戦も休みなく出場しています。悔しさも味わっていますが、その中で得られる新たな体験や気付きをどこか楽しんでいるようにも感じます。玉野GIIIでは確かな存在感を示し、復活のイメージが着々と出来上がってきました。

◆ウィナーズカップの場に居られないことが一番情けない

ーー先ほどウィナーズカップが終了(取材は24日夜に行われた)しました。レースは見ていましたか?

 4日間、YouTubeの配信でしっかり見ていましたよ。 

ーーケガで苦しんでいた脇本雄太選手が、難しい展開をしのいで優勝しました。

 北井(佑季)が内にブチ込んでくるような選手だったら危なかったかもしれませんけど、よく耐えましたね。

ーー古性優作選手の動きもすごかったですし、窓場千加頼選手の活躍には驚きました。

 スタートから古性の援護があったし、今回の窓場は強かった。みんなが頑張って、ワッキーが(優勝を)つかんだ。それがラインの力でしょう。

ーー窓場選手のブレークが目覚ましいですが、選手はどんなきっかけで急に強くなったりするのですか?

 窓場は30歳ちょっとですよね。心を入れ替えて練習し始めて強くなったなんてケースもあるとは思いますけど、自分に合う自転車を見つけたとか、ちょっとした乗り方で自転車の進ませ方が分かってきたとか、これは年齢に関係なくあることなんです。

ウィナーズカップ(GII)で3車結束を見せた(左から)古性優作選手、窓場千加頼選手、脇本雄太選手(写真提供:チャリ・ロト)

ーー確かに遅咲きの選手っていますよね。

 40歳過ぎて自力で動き出す選手もいますからね。自分に合うものが見つかると、動けるスピードが変わるし、余裕が出ると、戦い方にも幅が出ます。急に強くなると、すぐ「ドーピングじゃないか?」なんて言う人もいますけど、ちょっとした気付きで急に自転車は進む。きっと何かコツをつかんだんでしょう。

ーーそういう選手にはすぐ話しかけて聞き出しそうですね(笑)

 次に会ったら、ちょっと聞いてみようかな、ははは。

ーー脇本選手にはお祝いの連絡をするのですか?

 ちょうど近日中に会う予定があるんですよ。そこで言います。

ーー関東勢からは坂井洋選手が決勝に進みましたが、全体的には残念な出来事が多かったですね。

 眞杉(匠)の落車は心配ですね。前を走った森田(優弥)もそれが一番ショックでしょう。森田は取手がかなり相性悪いんですよね。でも、そこに自分がいられないことが一番情けないです。

ーー郡司浩平選手も出場していませんし、ウィナーズカップはSS班から陥落すると、出場権を取りにくい大会ですよね。

 それは言い訳に出来ません。実力があれば出られるので、自分の力不足です。

◆有希に自信を付けさせすぎちゃいましたね…

ーーでは、平原選手自身のレースに話を移します。玉野GIIIは、すごいメンバーの中で特選、二次予選と連勝を決めました。

 ああいうメンバーでちゃんとした走りが出来る感覚を得られたので、きっと何かのきっかけにはなったと思います。

ーー感覚というのは、肉体的なものですか?

 自分の今の状態と、周りとの力関係。これぐらいまで戻ったのかと感じたし、もうちょっとだなと思いました。

自信を失っていた吉田有希選手(撮影:北山宏一)

ーーその前の前橋FIでは連日、吉田有希選手が前で頑張っていましたね。初日は4車身ぐらい空けて援護をしていたのが印象的でした。

 自分もずっと不安を抱えながら走っているけど、有希も自信を失っていた。お互いにやることをやって、自分を取り戻していけたらという気持ちでした。

ーー少し空け過ぎじゃないかとヒヤヒヤしましたが、あの4車身にはそういう思いがこもっていたんですね。

 それしかないでしょう。ただ、準決で差せなかったのは自分のミスです。有希に自信を付けさせすぎちゃいましたね…。

ーー直近の四日市FIでは、自力勝負が見られました。初日は最後尾から2着に突っ込んでいましたが、かなり手応えがあったのでは?

 周りからは「いいまくりだったね」なんて言われたんですけど、出は良くなかった。元々が踏み出しでガンっ!と出るタイプなんで、まだしっかりと踏み出しで力が入らないなという感覚でした。

ーー準決の2分戦は苦難でしたね。そういえば、平原選手のブーメランを初めて見たかもしれません。

 ああなったら、ああせざる得ないというのを身をもって知りました、なるほどな〜と。

ーー初体験ですね(笑)

 42歳になって、半分の年ぐらいの子(纐纈洸翔)に2周突っ張られて、逃げ切られて、勉強させてもらいました。まさにこんな感覚ですよ、はははは。

ーーFI戦も行くたびに気付きがあるのですね。

 だから休まずに全部走っています。悔しさも当然ありますけどね。

ーーただ、最近は追走に余裕を感じられます。踏み出しで少し車間が空いても、慌てていない感じがします。

 確かにそうですね。思うような練習メニューをこなせるようになって、今まで力が入らなかった部分にも、力が入るようになってきた。練習の裏付けがあるから、メンタル的にもいい状態でレースに臨めているんです。

ーー最近では一番の上がり幅と思っていいですか?

 いいと思います。光が全く見えなかった時期もありましたけど、底は完全に脱しました。

◆10年以上ぶりに乗ったピストレーサー

久しぶりにピストレーサーで街道練習を取り入れた(撮影:北山宏一)

ーー練習は何か変わった方法を取り入れたりしましたか?

 午前中にバンクに入ることが増えたぐらいかな。あっ、そういえば、ピストレーサーで街道練習に行ったんですよ。たぶん10年以上ぶりだと思います。

ーーそんなに街道練習はしていなかったんですか。

 5年前ぐらいにロードレーサーで行ったのが最後でしょう。ピストとなると、10年以上は乗っていなかったと思います。

ーー若手の頃にやっていた練習方法なんですね。

 メインの練習にはしませんけど、時々は来ようかなと。

ーー遠乗りしても腰痛はもう気にならないんですね。

 むしろ日常生活の方がきついんですよ。自転車のフォームだとかなり力を入れられるようになってきました。昔、首のヘルニアもやったことがあるんですけど、神経に触れなければ大丈夫で、腰もそれぐらいの状態には戻したいです。

◆ダンスチームで日本代表になった愛息

自分の息子にも刺激をもらう日々(撮影:北山宏一)

ーー練習とケアの繰り返しですけど、最近の楽しみって何がありますか?

 自分の体が回復していくのが楽しみですよ。

ーーそれだと答えが優等生アスリート過ぎます(笑)

 ははは、プライベートでってことですか。こないだ長男の小学校の卒業式に行ったんです。自分はもうそこから30年も経ったんだな〜なんて。年齢を感じちゃいました。人生は速いですね。

ーー息子さんの話が出るのはレアですね。

 息子はダンスをやっているんですけど、ダンスチームで日本代表になったみたいで、今度アメリカに行くんです。

ーーすごい本格的じゃないですか。ヒップホップとか?

 それ系ですね。何度かは見に行きましたけど、基本的に嫁さんが全部見てくれているんで、自分はよく分かってないんですよ、ははは。

ーーアメリカ大会の晴れ舞台は、休んでも応援に行きたいんじゃないですか?

 どうせ行くなら、ハワイの方がいいな、ははは。

ーーそれは、ただのバカンスです…

 それは冗談として、息子のそういう姿に刺激をもらっています。

ーーじゃあ、ご褒美に家族をハワイに連れていってあげて下さい。

 最近、僕が賞金を稼げていないので、頑張らないといけないですね。これから西武園記念(GIII)、ダービー(日本選手権・いわき平)とあるので、そこでいいパフォーマンスが出来るように頑張ります。

ーーそこで結果が出た時には

 パーっと景気よく行きたいですね!

(※文中敬称略)


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平原康多

Hirahara Kota

埼玉県狭山市出身。日本競輪学校87期卒。競輪選手・平原康広(28期)を父に持ち、その影響も受けて高校時代から自転車競技をスタート。ジュニア世界自転車競技大会などで活躍し、頭角を現していった。レースデビューは2002年8月5日の西武園。同レースで初勝利を記録。2009年には高松宮記念杯と競輪祭を制し、2010年も高松宮記念杯で勝利。その後もGⅠ決勝進出常連の存在感を示し、2013年は全日本選抜、2014年と2016年には競輪祭、2017年も全日本選抜などで頂点に輝く。最高峰のS級S班に君臨し続け、全国の強者と凌ぎを削っている。

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