アプリ限定 2020/12/18 (金) 18:00 5
日々熱い戦いを繰り広げているガールズケイリンの選手たち。
このコラムでは、ガールズ選手の素顔に迫り、競輪記者歴12年の松本直記者がその人物像を紹介していきます。連載開始から土日を除いて毎日更新中!
年末の大一番、ガールズグランプリ2020の出場選手が毎日1人ずつ登場します。今回紹介するのは16日の大宮で完全優勝と絶好調の「鈴木美教選手」です。
鈴木美教は努力の人だ。自転車競技未経験者を対象とした適性試験で日本競輪学校に入学。未経験にも関わらず在校成績5位の結果を残した。卒業記念レースでは決勝には乗れなかったが、卒業後からデビューまでの期間に中身の濃い練習をこなしてパワーアップ。
2017年7月のデビュー戦(千葉)を3連勝の完全優勝。その後も先輩選手を相手に積極的なレースを続け、デビュー期の2017年後期(7〜12月)は5回優勝と活躍した。2018年は12月に地元・静岡で、初のグランプリ開催が決まっていた。静岡で初めて開催されるガールズグランプリの出場権利を獲得するために休まず走り続けた。「絶対に地元のグランプリに出る」と自分自身に言い聞かせ、レースに臨むと年間11回優勝。大舞台への挑戦権利をつかみ取った。
しかしホームの大声援を背に臨んだグランプリは残念ながら見せ場を作ることができなかった。今年は2年ぶり2回目のグランプリ挑戦。1回目の反省を生かしたレースをしてくるだろう。
ガールズケイリンへの挑戦は意外なところからだ。学生時代はバスケットボールに熱中。大学進学もバスケットボールでの推薦入学だった。しかし、大学の部活動になじめず大学を中退。地元伊豆に帰り、バイトに精を出していた。そんな娘を心配した両親がガールズケイリンを進めたという。
JKAがガールズケイリン選手発掘のために開催している「ガールズサマーキャンプ」に参加すると、自転車の魅力に一瞬ではまった。仲間の存在も大きかった。未経験のグループには日本競輪学校でも同期になる太田りゆ、吉村早耶香、吉原菜那らもいた。
「部活が嫌になり大学をやめて、地元でのバイト生活も楽しかったけど、ガールズケイリンがあってよかったです。もしガールズケイリンがなかったら今頃なにをしていたんだろ。この道を進めてくれた両親に感謝ですね」。鈴木にとってガールズケイリン選手は天職のようだ。検車場では同期や仲のいい選手と笑顔で話している場面を見ることが多い。冒頭で努力の人と表現したが、厳しさを表情に出さず、いつも笑っている部分に底知れぬ人間力・強さを感じる。
基本的にはまくりと追い込みの自在戦で走ることが多いが、この夏からワンパターンからの脱却を狙い、色々な戦い方に挑戦している。「私はトップ選手みたいな圧倒的なスピードが足りない。勝ちパターンも確立していない。だから何でもやる。すきま産業ですよ」と笑いながら話すが、逆にいえば何でもできるし、狭いコースでも怖がる事なく突っ込めるのが鈴木美教の良さでもある。
平塚は2018年2月に初登場。10走して1着7回、2着2回、3着1回。2018年2月、今年11月に優勝しており、バンク相性は抜群だ。直近11月に走って優勝していることも大きなアドバンテージになるだろう。
※次回も引き続き、ガールズグランプリ2020の出場選手を紹介していきます。来週月曜日18時には3連対率96.5%! 今夏オールスターではアルテミス賞を制した【梅川風子編】を公開!こちらもお見逃しなく!
松本直
千葉県出身。2008年日刊プロスポーツ新聞社に入社。競輪専門紙「赤競」の記者となり、主に京王閣開催を担当。2014年からデイリースポーツへ。現在は関東、南関東を主戦場に現場を徹底取材し、選手の魅力とともに競輪の面白さを発信し続けている。