アプリ限定 2025/08/05 (火) 18:00 9
宇都宮競輪場で8月8日から10日に行われるガールズケイリンGI「女子オールスター競輪」。見どころや出場選手の近況を、デイリースポーツの松本直記者に解説いただきます。
今年から始まるガールズケイリン4つ目のGI「第1回・女子オールスター競輪」が8日から10日までの3日間、宇都宮競輪場で開催される。
優勝賞金は870万円(副賞込み)。4月オールガールズクラシックの優勝賞金900万円(副賞込み)には届かないが、同等の高額賞金だ。もちろん12月29日に開催されるガールズグランプリ2025(平塚)の出場権も与えられる。
また優勝以外の賞金も高額設定されている。決勝2着が323万6000円、決勝3着が184万1000円(いずれも副賞込み)と、賞金ランキングにも大きく影響を与えることになる大事な一戦となる。
選考基準は大きく分けて2つある。1つめはファン投票。4月中旬から5月中旬までの約1カ月間のハガキ、インターネット投票の上位20人だ。2つめは選考期間(2024年12月から2025年5月)の平均競走得点上位者だ。
初日メインの準決シードレース「ドリームレース」はファン投票上位から7人が選抜される。ドリームレースは出場者全員が準決勝に進めるシードレースだ。予選からの勝ち上がりは2着権利で、予選3着の5名のうち4名が準決勝進出。選考順位の低い1名は敗退となる。また準決勝は3レース行われ、2着以上が決勝進出。3着3名のうち、初日走ったレースの格と着順が上位の1名が決勝に進める。つまり多くのファンに支持されたドリーム組は準決勝も有利に戦えるということになる。
それでは、女子オールスター競輪注目選手と近況をおさらいしていこう。
やっぱり主役は佐藤水菜だ。ファン投票は3位での選出。今年はナショナルチームの活動と同じくらいガールズケイリンへの参加が多い。4月のオールガールズクラシック(岐阜)、6月のパールカップ(岸和田)とGIを連続優勝。第1回となるこの女子オールスター競輪を優勝すれば女子では初、男子では脇本雄太に続くグランプリを含めたGI全冠制覇の『グランプリスラム』達成となる。
本人も岐阜のオールガールズクラシック優勝後の会見で「今年はグランプリスラムを狙う」と公言している。無理やり不安点を挙げるなら、宇都宮と500バンクは久しぶりだということだ。宇都宮500バンクへの参戦は2022年3月のガールズケイリンコレクション2着以来。2021年9月には3連勝の完全優勝を決めている実績もあるが、宇都宮を走るのは3年5か月ぶりとなる。しかしこれも指定練習で乗れば不安は解消できるはずだ。内に詰まることさえなければ女子オールスター競輪の初代優勝者の座は揺るがないだろう。
女子のファン投票は児玉碧衣の独壇場だ。ガールズケイリンコレクション時代の2017年から今年までファン投票は9年連続1位をキープ。ガールズケイリンファンからの支持はまったく衰えない。
今年は1月から7月で優勝11回。昨年1年間の優勝回数13回にまもなく届く状況で、復調していると言える。ビッグレースでは4月オールガールズクラシックが準優勝、6月パールカップは予選敗退と評価が難しいが、児玉クラスでも展開一つで予選敗退もあるということは、ガールズケイリンのレベルが上がっていることの証明だろう。
7月は京王閣、防府と2場所走って6連勝。積極的に駆ける姿勢も見せており、宇都宮でも緩んだタイミングさえあればロングスパート敢行もある。パールカップ予選は力の出し惜しみで敗退しただけに、同じ失敗はしたくないと思っているに違いない。ファン投票1位の恩返しを胸に、児玉らしい積極策で2024年4月のオールガールズクラシック(久留米)以来となるGI優勝を目指す。
ファン投票2位で出場する太田りゆ。昨年8月のパリ五輪を終えるとナショナルチームの活動を引退し、同年10月からガールズケイリン一本に絞って第2の競輪人生をスタートさせた。今年はここまで優勝8回と普通開催では安定した成績を残している。
しかしGI戦線では物足りないレースが続いている。オールガールズクラシック、パールカップともに準決勝敗退。持ち味のダッシュ力を出し切る前に終わってしまった。今回の女子オールスター競輪は決勝進出がノルマだろう。グランプリ出場を目指し、優勝だけを狙って走る3日間になる。宇都宮は昨年10月に走り完全優勝。まずはドリームレースから自慢のダッシュ力を発揮したい。
ファン投票4位は久米詩。今年はスタートダッシュが見事に成功した。1月に4開催走って3開催で優勝。以降もコンスタントに優勝を積み重ねている。
しかし6月のパールカップでは予選で失格を犯してしまった。落車もあり、心配するファンも多かったが、復帰後は別府、松阪、京王閣と1着を量産と気配は良好だ。
昨年のグランプリ覇者・石井寛子はファン投票6位でドリームレースに出走する。今年の前半戦はグランプリ覇者としてガールズケイリンの普及活動にも精を出した。本人が忙しさを言い訳にすることはないが、成績はいまひとつだ。追い打ちをかけるように6月のパールカップでは落車に乗り上げてしまい、自身も落車。左肩の状況はあまりよくない。
復帰戦の京王閣は予選こそ連勝で勝ち上がったが決勝は児玉碧衣の動きに対応できず準優勝。その後はオールスターに向けて懸命な努力を続けている。
ファンとの距離を大事にする石井寛子だけに、ファン投票が直結しているこの大会はいっそう負けたくない気持ちが強いはず。宇都宮では2019年1月から7開催連続優勝中。その中には2022年3月のガールズケイリンコレクションも含まれている。相性のいい宇都宮で復活の狼煙を上げたいところだ。
ファン投票7位は荒川ひかり。根強い人気でファン投票に強く、過去にもファン投票で2019年、2021年、2023年のコレクションに参加。昨年のF2開催だった女子オールスター競輪にも選出されている。
今回GI初出場となるが、気になるのは怪我の状況だ。5月岸和田終了後の練習中に落車し、右足を骨折してしまった。オールスターに間に合わせるため、懸命なリハビリと練習を頑張っている最中だ。どのくらいの状態で参加するかは前検日の取材まで分からないが、出場すれば今できるすべてを発揮してくれるはず。温かい目で見守りたい。
ファン投票8位で選出された河内桜雪。先日引退した日野未来(ファン投票5位)の欠場によりドリームレースへ繰り上がり、このツキを生かしたい。昨年のF2女子オールスター競輪でビッグレース初参加、今度はGI初挑戦となる。
デビューからここまで優勝はないが、準優勝は多い。持ち味のレースセンスを発揮できれば、車券に絡むことは十分あるだろう。高配当の使者となって、ファンの期待に応えたい。
昨年のガールズグランプリで3着の尾崎睦は、6月のパールカップで準優勝。7月末まで優勝が10回。賞金ランキング3位と好位置にいる。 近年は伸び悩みに気づき、意識改革を行った。それまで自分なりの方法で練習していたが、同僚のガールズケイリン選手に練習方法を聞き、最近は梅川風子や豊岡英子と練習をすることが多いという。その成果は結果にはっきりと現れている。
今年のガールズグランプリは地元の平塚開催。出場するだけではなく地元グランプリ制覇を目指し、日々練習に取り組んでいる。まずはグランプリ出場を確実なものにするためにも、オールスターを獲りにいく。
梅川風子は安定感抜群だ。昨年の12月の京王閣で落車をしたが、今年は快進撃が続いている。 4月のオールガールズクラシックは決勝3着。6月のパールカップは決勝4着と大舞台では厳しい結果だが、普通開催では1月の熊本から7月の松阪まで11開催すべて優勝と圧倒的な成績だ。
昨年まで在籍したナショナルチームで鍛えた脚力を遺憾なく発揮している。あとはGIで結果を残すだけ。仕掛けるポイントを間違えないことも梅川風子の強みで、ビッグレースでの勝負強さは折り紙付きだ。
坂口楓華はそろそろGIで結果を出したいところだ。今年の優勝回数14回はトップで、賞金ランキングも4位とグランプリ出場圏内にきっちり位置しているが、本人はまるで納得していない。
今年のGIは4月オールガールズクラシック、6月パールカップともに準決4着と悔しすぎる結果が続いている。オールスターでは坂口楓華らしい思い切りのいい走りで、GIの壁を破ってもらいたい。
荒牧聖未は地元勢ただ1人のGI参戦だ。ガールズケイリン1期生として長い期間、安定した戦いぶりを続けている。地元戦でのモチベーションは高く、優勝したあとにはとびきりの笑顔を見せてくれる。地元戦は昨年1月、9月、12月と3回走り3回とも3連勝の完全優勝と、宇都宮バンクのことは誰よりも心得ているに違いない。
しかし、5月函館で落車し右鎖骨、右ろっ骨を骨折の大けがを負ってしまった。万全の状態での地元GI参加とはならなかったが、走る以上は自分のベストを出し切って、地元ファンの期待に応えたい。
仲澤春香はパールカップに続いて2回目のGI挑戦となる。パールカップ決勝は好位確保も佐藤水菜に先に仕掛けられてしまい、力を出し切ることができず5着敗退と悔しさが残る一戦となった。
その後は福井、四日市、別府と普通開催を転戦。これはオールスターに向けて、いい足掛かりになる。ナショナルチームを拠点とする仲澤にとって、ガールズケイリンで多く走ることは試行錯誤の機会がより多く持てるため、本番に向けての調整がはかどっているだろう。
宇都宮の500バンクを走るのは初めてだが、2月大宮では太田りゆに先着して優勝と長走路での結果は出ている。未知の魅力は十分。佐藤水菜に対抗するのは仲澤春香で間違いないだろう。
松本直
千葉県出身。2008年日刊プロスポーツ新聞社に入社。競輪専門紙「赤競」の記者となり、主に京王閣開催を担当。2014年からデイリースポーツへ。現在は関東、南関東を主戦場に現場を徹底取材し、選手の魅力とともに競輪の面白さを発信し続けている。