2021/05/18 (火) 12:00 3
現役時代はトップ選手として長く活躍し、現在は評論家として活動する鈴木誠氏の競輪予想コラム。今回は函館競輪場で開催されている五稜郭杯争奪戦の決勝レース展望です。
【五稜郭杯争奪戦】が開催されている函館競輪場は、400バンクということもあってか、逃げ、捲りとどの戦法でも戦える標準的なバンクです。ただ、今開催は風の影響もあるのかバンクがやや重い傾向があり、先行選手が苦戦している印象を受けます。
その中で3日間通してバックを取っただけでなく、逃げ切って3連勝を果たしているのが野口選手です。体調の良さに加えて、競技を始める前はハンマー投げの選手だったパワーも、重いバンクをものともしない走りとして表れているのでしょう。
決勝は四分戦となりました。その野口選手の後ろには、松谷選手が付ける南関東ライン。松浦選手-柏野選手で連携する中四国ライン。東北ラインは前が守澤選手で、後ろが佐藤選手となり、この3つのラインが2車。古性選手-村上選手-椎木尾選手の近畿ラインは唯一の3車となっています。
このメンバーで先行するのは野口選手で間違いないでしょう。問題は3番手を誰が取るかですが、予想としては守澤選手だと見ています。
古性選手もその位置を狙ってくる可能性もありますが、後ろに2人が付いてくれるので、並走するよりも自力で勝負していくはず。後方にいる松浦選手は後方に待機し、古性選手が動き出して、隊列が短くなったのを見計らいながら、捲りを仕掛けてくるはずです。
ただ、今大会では守澤選手の出来の良さが目立ちます。レース内容を見ても体調がいいのは明らかですし、相手が好調な野口選手と言えども、力量的に3番手からなら交わし切れるでしょう。
この展開となった時に、勝機が出てきそうなのが佐藤選手です。【日本選手権競輪】でも惜しいレースを見せてくれましたし、今大会でも、さすがS級S班と言えるレースを見せています。
佐藤選手や郡司選手を退けて、初のダービー王となった松浦選手も、【日本選手権競輪】からの調子の良さを持続しています。守澤選手を含めたS級S班の3人が、4角を過ぎてから接戦を繰り広げる姿が、この決勝では見られるのかもしれません。
最近はナイターかミッドナイトでの開催が多かった函館競輪場ですが、この【五稜郭杯争奪戦】は日中開催として行われています。北海道内における緊急事態宣言の最中ではありますが、十分なコロナ対策を講じた上で、有観客での開催を実施することができました。
函館は競輪熱も熱い街ですし、日中開催ということで選手も新鮮かつ、声には出なくとも、応援してもらっているという気持ちで、大会に臨むことができているはずです。その意味でも決勝に勝ち進んだ9人の選手には、競輪場に来ていただいたファンの方や、画面の向こうにいる視聴者の皆さんにも届くような、いいレースを見せて欲しいです。
鈴木誠
千葉県市原市出身。日本競輪学校第55期卒。千葉経大付属高校の頃から競輪に没頭し、吉井秀仁氏に師事。現役時代はすべての戦法を完璧にこなし、「本物の自在型選手」と評されるほど多彩なストロングポイントを武器に、引退するまで長きにわたってトップ選手として君臨した。現役時代は通算3058戦665勝、優勝109回(うちGIは競輪祭新人王を含め4回、GP1回)、年間賞金王1回、通算獲得賞金は17億を超える。18年7月に、ケガのため惜しまれつつ引退。引退後は選手経験を生かし、解説者として活躍。スピードチャンネルなどの番組にも出演している。