2024/01/27 (土) 12:00 19
いわき平競輪の「開設73周年記念 いわき金杯争奪戦(GIII)」が25日に開幕し、初日特選はニューワッキーが姿を現した。車番の構成もあってのことだが、嘉永泰斗(25歳・熊本=113期)が難しい立ち回りを強いられた。前受けから新山響平(30歳・青森=107期)が突っ張っていく。
新山の後ろには地元の新田祐大(38歳・福島=90期)ー佐藤慎太郎(47歳・福島=78期)ー渡部幸訓(40歳・福島=89期)と並んでいる。新田は、いろんな判断が求められる位置になる。新山は2周先行。まくりは飛んでくる。
脇本雄太(34歳・福井=94期)は後方に構えず、嘉永の後退を見て中団に追い上げた。山口拳矢(28歳・岐阜=117期)はさらに5番手に追い上げ、脇本は6番手、嘉永が8番手となる。新山は踏み上げていくも、強風も敵となる。
新田としては「新山君と決めたかった」の思いで脇本のまくりをブロックに行った。地元記念の初日特選、後ろに2人いる状態なので番手から出る選択も推理できた。だが、この時の選択はブロック。新山はもう、“行くだけ”の選手ではなくライン全員で決めるためにと新田の頭の中にあった。
選手には“格”(やってきたことが積み重なってできる目に見えないもの)が、やはりある。新山は番手まくりされる選手ではなく、ゴール勝負にラインで持ち込むことを新田は考えていた。
ただこのレースでは脇本は8番手からではなく6番手からまくってきた。この2車分の猶予がなかったため、新田は脇本のスピードに対応できなかった。つまりは北日本4車に対する脇本の勝利。このレースだけ考えれば、脇本が単純に上だった。しかし、競輪は連なっている。
競輪は場面で選手の判断が変わる。決勝で同じような構成になったとしたら、初日に失敗(負けている)しているため、同じ失敗はできないとタテに踏む判断の可能性が強まる。また、この大会の走りをもって、今年のこれからの戦いにも影響する。
北日本対ワッキー、関東対ワッキー、中四国対ワッキーは変わらない構図だ。その意味で、初日は打開を図ろうとしたワッキーの好プレーともいえる。流動的なものが多い競輪なので、ファンの推理もより複雑になる。
初日のレース後に新田のコメントから、その思いや考え、狙いをとらえ、またワッキーの思惑を知ることは重要だ。選手はコメントすることにより、ファンとの距離感を埋め、一緒に競輪を作り上げることを意識している。
1月25日は新田の誕生日だった。メモリアルデーなので勝利にこだわっても…と思ってしまうが、18年ほど取材していると「選手は誕生日はあまり意識しない」が現実だと思う。結果的に「誕生日で勝てたのでうれしい」はあっても、「誕生日だからどうしても勝ちたい」はあまり聞かない。
結婚記念日でした、娘の誕生日でした、最近でいえば山賀雅仁(41歳・千葉=87期)が「母の命日に優勝できた」という感動的なシーンはあったものの、だからといってレースに影響するものでもない。他の選手が意識することもほぼない。
珍しいケースでは「子供の運動会があったんですが、追加の連絡で走りに来たので結果を出さないといけなかった」という話も聞いたことがある。事後的にこうしたところでいい成績を残せて喜ぶことはあっても、事前にこうした話があったからといって結果がいいわけではない。
どちらかというと切羽詰まっている方が結果にはつながりやすい。如実に代謝の点数やGI出場権などがかかっている場合、普段は突っ込まないコースを必死になって踏むことがある。成功すれば、取れる…。すべてがうまくいくわけではないが“勝負駆け”はあって、この時は、選手は踏む。
脇本雄太選手は3日目以降欠場となりました。
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前田睦生
Maeda Mutuo
鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。