2021/05/14 (金) 12:00 10
函館競輪場で5月15〜18日に開催される「五稜郭杯争奪戦(GⅢ)」に、誰よりも熱い思いを持って走るのは地元の菊地圭尚(41歳・北海道=89期)だ。“ケイショウ”と呼ばれ、誰からも愛されている。89期の在校1位で2007年のヤンググランプリ覇者。GI優勝が当然の目標とされた男だ。
GI決勝には7度も進出している。
2015年2月静岡の全日本選抜は準優勝(優勝=山崎芳仁)。“頂点まであと少し”のところまでいった。それだけの実績がある。だが「圭尚は記念の優勝がない」と輪界七不思議のひとつと言われている。
実力、実績、北日本での存在感からすれば、不思議でしかない。なぜか、取れない…。しかも函館記念ではチャンスもあった。2014年と2016年などは、絶好の展開でともに決勝2着。
2014年は決勝に勝ち上がると、竹内雄作(33歳・岐阜=99期)がいた。当時、菊地は岐阜県に冬季移動に行っており、大垣競輪場で竹内と一緒になることもあり、練習仲間だった。竹内も菊地の状況はよく分かっており、前で頑張る気マンマン。
早くから北日本をけん引し、支えてきた。前の選手が北の選手じゃない…というのはぜいたくなファンサイドの要望で、竹内の頑張りで優勝をつかむストーリーはよくできていた。3角、番手から出る。直線、そしてゴール前、同期同郷、高校時代からのつながりのある明田春喜(40歳・北海道=89期)が差す。明田優勝、菊地2着。あれっ!?!?
明田も地元記念Vで喜ばしい結果なのだが、明田は2011年11月に静岡記念を勝っていた(菊地の後ろで)ので、菊地優勝をイメージしていた方が多かったのは事実。検車場で大の字に倒れ、「表を歩けない」とつぶやく菊地の姿があった。勝手知ったる函館の夜の街を闊歩するはずが、崩れ落ちた。ちなみに明田は89期のルーキーチャンピオンレースでも菊地を差して優勝している。
2016年大会も、あれっ!? だった。
決勝、やっと現れた北の彗星・新山響平(27歳・青森・107期)が前にいた。新山は残り2周の赤板前から突っ張って風を切り続ける。別線をくぎ付けにして。菊地は番手で、チャンスでしかない。
しかし、4角、直線、ゴール前…。車の進まない菊地を背に、新山が逃げ切って優勝。あれっ!? 。この日も「表を歩けない」という言葉を聞いた。優勝した新山は当時のデビュー最速GIII優勝で華やかなVだったはずだが、菊地のことをおもんぱかってか、優勝後は無表情だった。
今節はS班は北の佐藤慎太郎(44歳・福島=78期)と守澤太志(35歳・秋田=96期)、に“ダービー王”松浦悠士(30歳・広島=98期)がいる。佐藤と守澤は北の大地で、他地区に優勝を譲るわけにはいかない。
そしてまだ2021年は半年も終わってないのだが、ダービー3着という結果がシンタロウを駆り立てる。ダービー終了後の賞金ランキングは5位。KEIRINグランプリに向けて、早くも賞金が少しでもほしいという現実が襲ってきているのだ。
近畿勢も村上義弘(46歳・京都=73期)に稲川翔(36歳・大阪=90期)に古性優作(30歳・大阪=100期)と揃う。北海道生まれの野口裕史(38歳・千葉=111期)もいる。
誰が優勝しても重みのある大会になりそう。その価値を、事前のそれぞれのストーリーから見出してほしい。
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前田睦生
Maeda Mutuo
鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。