2021/05/10 (月) 12:00 15
京王閣競輪場で5月4日〜9日までの6日間で「第75回日本選手権競輪(GI)」が開催された。9日の最終日、11レース決勝。清水裕友(26歳・山口=105期)の先行に乗って、松浦悠士(30歳・広島=98期)が抜け出し“ダービー王”となった。GIは3回目の優勝だ。目指すところはグランドスラム。あと3つとグランプリ。
2着には郡司浩平(30歳・神奈川=99期)が入った。松浦との着差は微差。そして郡司と微差で3着だったのが佐藤慎太郎(44歳・福島=78期)だ。
GI 3大会連続優勝へ“あと微差”に泣いた郡司だが、悔しさの矛先は自分の心に向かっていた。
「2人の圧に負けました。最終バックからまくりにいけなかった。あそこが一番、悔しいです。清水と松浦の…2人の」。
後ろ攻めからの組み立て、対応、強さはすべてにおいて非の打ちどころのないもの。
だが、そのもう一つ上しか見えていなかった。ぞっとするくらいの雰囲気だった。笑顔も見せながらだったが、目指している地点、見えている世界があるからこその言葉だった。
佐藤慎太郎(44歳・福島=78期)は3着。
いつもの“あるパターン”なら「今年も賞金でグランプリだね! 」と話すところ。しかし、違う。怖い。「悔しいね。松浦がひじをかけてきた場所、余裕があれば、内によけながらいけば…」。突っ込んだ時には優勝が…と問われると「あった」。目の前に開けた、一瞬の優勝への道…逃した。
「でも、今の競輪界を引っ張っている松浦、郡司と横並びの勝負ができたというのはよかったね。それに、悔しいと思えていることが今の自分には…ね」。
平原康多(38歳・埼玉=87期)は6着。関東連係をうまく引き出せなかった。決勝前に、“初日落車からの物語をファンに”と訴えていた。
「人生、甘くないですね。悔しいのと、やっと終わったというのと半々。ホントに体調は良くないんで。でも、ダービーの決勝にまた乗れるかは分からない…。家に帰ったら、悔しさがこみあげるんだろうな」。
ギリギリだった。落車のダメージは見た目には少なくとも、体の中にきた。固形物を食べても、もどしてしまう。睡眠もままならない。しかし、可能性がある限り戦う。ファンが…無観客開催だからこそ、この姿を見ていると思って、言葉にしてくれていた。
松浦も、最後は疲れ果てていた。優勝のうれしさを胸に、節間は出さなかった笑い声をあげてインタビューに応じた。「案外、仕上がってなくて。ハハハ」。聞いていた清水「獲ったのに仕上がってない。言ってみたいっすね(笑)」。仕上がってなくても、優勝…。笑い話に転じるようで、それで勝てたことの意味がある。
「あれだけ、行ってくれたんで」。
清水の走りがすべて。それに応えるかどうかは、調子、状態は関係ない。歯を食いしばって、とにかく結果を出すしかない、その思いが大事だった。
選手たちの言葉。競輪を彩る、ファンとつながる言葉という糸。京王閣ダービーで、その糸はもう一度、競輪を教えてくれた。
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前田睦生
Maeda Mutuo
鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。