アプリ限定 2023/12/16 (土) 12:00 33
2019年5月31日を初日とするレースから、先頭誘導員の早期追い抜きが失格となるルールになり、誘導のペースも速くなった。このルールの是非、罰則の重さ、についてはここではおいておく。とにかく選手たちは「ルールに対応するしかない」で対策を練るほかない。
“前受けが基本的に有利”が定着し、それを生かす戦い方が主流になってきた。誘導のペースが上がる中、後ろからの戦いは不利な面が出てきた。その上で…。
新山響平(30歳・青森=107期)が前受けから突っ張って400バンクなら2周をそのまま先行してしまう戦法を確立した。しかも、タイムもいい。ラインで決まる可能性も高くなる。前傾フォームで風を切るスタイルが現在のトレンドになっている。
気になるのは今後、こうしたトレンドに逆らうものが生まれるかどうか。トップ写真の坂本健太郎(43歳・福岡=86期)が、かつてハンドルを逆さまにするフォームを研究したように、とんでもない発想で2024年を切り開く猛者がいるかもしれない。
新山のスタイルの強みは、そのレースにとどまらないところにある。番組が出た時点から「新山が前受けから突っ張るでしょう」で始まる。すでに新山の術中。レースを積み上げていくことで、始まる前から対戦相手の脅威となり、籠絡(ろうらく)している。
競輪に大事なこと、だ。番手勝負にも、「次」への意味がある。これは対戦相手にというよりも、並びを決める時に意味を持ってくる。自力選手の後ろである“番手”には価値がある。そこを回ることは当たり前ではない。今年、ゴリゴリのマーク屋である芦澤大輔(41歳・茨城=90期)と、芦澤の背中を追う佐藤礼文(32歳・茨城=115期)の2人の関係性が面白かった。
日々の戦いをおろそかにしていると「認められない」が発生する。競走得点だけですべては判断されない。佐藤慎太郎(46歳・福島=78期)も強調することで「一つひとつのレースが大事」で、みんなが見ている。これは競輪のトレンドではなく“底流”として昔からも、これからも変わらない。
ガールズケイリンはGIが創設されたことにより、1年間の戦い方、というトレンドが生まれた。優勝すればガールズグランプリの権利を得られるということで、児玉碧衣(28歳・福岡=108期)は大ケガから6月のパールカップに照準を絞り、それを成し遂げた。
国内の出場機会が少ないナショナルチームからは佐藤水菜(25歳・神奈川=114期)と梅川風子(32歳・東京=112期)が少ないチャンスをモノにした。来年、また再来年と枠組みは進展していくので、ガールズケイリンの1年間の楽しみ方は濃度を増していく。
今年はその争いに参加できなかった鈴木美教(29歳・静岡=112期)なども、2024年以降は対応してくるだろう。ガールズGIの際のレースレベルが上がり、選手全体のレベルもさらに上がってくる。
そして、賞金も上がれば…。
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前田睦生
Maeda Mutuo
鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。