2023/12/13 (水) 12:00 27
佐世保競輪場で12月14〜17日の日程で「開設73周年記念 九十九島賞争奪戦(GIII)」が開催される。吉田拓矢(28歳・茨城=107期)は8月西武園競輪「オールスター競輪(GI)」の決勝で暴走失格となり、あっせん停止の処置を受け、実質的に約4ヶ月ぶりの実戦となる。
暴走による失格は現行ルールで厳しい処分を受けることになっている。だが、多くの人たちは彼の走りに何かを感じた。その“何か”がこれから吉田のもとに帰っていく。苦しい時間だったかもしれないが、マイナスに作用するものではないはずだ。
12月13日に初日を行う川崎競輪に参加する河野通孝は(40歳・茨城=88期)は12月12日の前検日に「タクヤは真面目だから、ずっと練習してましたよ」と証言する。無論、「メチャクチャ強いです」。2020年12月に記念初優勝を飾った佐世保で、またノビノビと、躍動感あふれる走りを見せてくれるだろう。
盟友・坂井洋(29歳・栃木=115期)と平原康多(41歳・埼玉=87期)もいる。どんな連係を見せてくれるのか。
平原はケガに苦しんだ一年…の終わりにまた、落車。「競輪祭(GI)」の最終日に不運に見舞われた。前日には酒井との好連係で1着を取っていたこともあり、S班からの陥落は決まってしまったものの、ヨシこれから、というところだった。
伊東記念にはさすがに間に合わず。もう、年内はゆっくりするのかな…と思いきや、佐世保に向かった。『走って戻す』スタイルは変わらない。緩めることでガタっとくる危険性を誰よりも知っている。
この心の強さが、平原の武器だ。また、出場メンバーは平原が決めるものではないが、吉田がいることは大きな意味があるだろう。ちょうどこの吉田の復帰戦に平原がいることには特別なものを感じる。このコラムが公開の12月13日12時には、佐世保の取材ゾーンで群がる報道陣に「いやいや、今回は俺じゃないでしょ。タクヤでしょ」と話しているだろうか。
新田祐大(37歳・福島=90期)は別府記念(オランダ王国友好杯)からの転戦。北井佑季(33歳・神奈川=119期)に嘉永泰斗(25歳・熊本=113期)と今年を沸かせた男達が参戦する。嘉永も競輪祭での落車後になるわけだが、“イケメン”といわれるさわやかな風貌と生き様は正反対だ。
同期たちの活躍を後ろで見ながら、悔しさだけを感じてはい上がってきた。最近はタテ脚の進化に注目が集まるが、何でもやる、できることをやる、という意地の戦いが真骨頂。
移籍後、地元戦になる荒井崇博(45歳・長崎=82期)と嘉永の関係も深く、井上昌己(44歳・長崎=86期)、中川誠一郎(44歳・熊本=85期)との共闘は全身がうずく。2014年の大会では、中川ー井上ー菅原晃(44歳・大分=85期)ー荒井で並び、荒井のイン切りから井上の優勝があった。
九州出身の私は、この4人が並ぶ、となった時点で体が震えたことを昨日のことのように思い出す。戦い抜く男たちの姿が、また佐世保の地で噴出する。
最終日の9Rで行われるレインボーカップチャレンジファイナルは、地元から2人出場する。小柳智徳(25歳・長崎=123期)と峯口司(21歳・長崎=123期)だ。出場する9人全員が7月本デビューの123期なので、来期のA級1・2班戦の権利を持たない。
3着まで、を意識はするだろうが、このメンバーでどう走れるかは、より先を伝えるものになる。
個人的に注目したいのは石田典大(26歳・東京=123期)だ。7月、石田が立川競輪の中継に出演していて、取材に行っていた私は喫煙コーナーでぼんやりとしていた。6月福井で取材していたこともあり、面識があった。通りがかった石田から「牧田、やりましたね!」と声をかけられた。牧田悠生(24歳・新潟=123期)が本デビュー場所で完全Vを決めた後だった。
牧田は養成所順位が40位で、石田は55位。在所中は結果を残せなくとも、実戦の場に立って活躍している仲間の姿を見えて燃えていた。まだ本デビュー前だった石田は勇気をもらっていた。そして、泥臭いくらい先行で頑張っている。
9人の並びはまだ分かっていないが、石田が全力を出し尽くす姿を、見てほしい。
※嘉永泰斗選手は欠場となりました(12/13 14:55追記)
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前田睦生
Maeda Mutuo
鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。