2021/05/03 (月) 12:00 10
京王閣競輪場で「第75回日本選手権競輪(GI)」が5月4〜9日の日程で開催される。
ダービー(日本選手権競輪)になると例年、グランドスラム達成の話題になる。佐藤慎太郎(44歳・福島=78期)のコラムでも書かれていたように、山崎芳仁(41歳・福島=88期)のことだ。王手をかけたのが2012年9月の前橋オールスターVでのこと。井上茂徳氏(引退=41期)、滝沢正光(引退=43期)、神山雄一郎(53歳・栃木=61期)に次ぐ、4人目の期待がかかってきた。
王手となった翌年(2013)のダービーは立川で開催された。北日本5人が並んだ伝説のレースだ。佐藤友和(38歳・岩手=88期)を先頭に菊地圭尚(41歳・北海道=89期)ー山崎ー成田和也(42歳・福島=88期)ー佐藤慎太郎。
準決勝後、山崎は「自分がグランドスラムを狙う選手になるとは」と話し、緊張感をにじませている。
佐藤(友)は、武田豊樹(46歳・茨城=88期)に任されていた牛山貴広(40歳・茨城=92期)を強引に叩き、懸命に駆け菊地が続く、山崎は連結を外してしまい、武田が菊地後位にスイッチ、その後ろに村上義弘(46歳・京都=73期)という隊列になっていた。菊地の番手まくりをかわす武田の外を村上が伸び切って優勝。2着は村上とともに単騎戦だった深谷知広(31歳・静岡=96期)、山崎は3着に終わった。
佐藤(慎)はシリーズ中、「弟弟子の山崎のグランドスラム達成を真後ろで見られたらいいね」と話していた。それでも決勝は成田に前を回して北結束を選び、思いを示したのだ。その後、山崎にダービー前検日にグランドスラムについて聞くのは当然だったが、近年は「あの話は決勝に乗ってからで」というのがお決まりになっている。
前述の立川ダービーを制した村上は、通算4回のダービー制覇を成し遂げている。その村上だが「ダービー」とは言わない。「日本一の選手を決める大会。日本選手権」と、こだわりがある。口にする時は「選手権」と言う。
最も重きを置いている大会。その大会が、昨年はコロナ禍にあって直前の中止となった。静岡での一戦を待ち望んでいた誰もが、落ち込んだ。村上本人は5月にあっせん停止で走れなかったが、しばらく後に聞くと「そこに向けて準備していた選手たちのことを思うと」と顔をゆがめた。
誰よりも静岡の大会中止を嘆き、「関係者の方々が開催に向けて尽力されていた、とも聞いていたので」と下を向いた。今年はみな、その昨年の静岡の分までの思いを背負って走る。海外遠征に向かうナショナルチームのメンバーがいないのは寂しく、さらに無観客なのもつらいが、バンクでは相当な戦いが繰り広げられるだろう。
昨年11月競輪祭(小倉)、今年2月の全日本選抜(川崎)を制し、GI3大会連続優勝の偉業に挑むのは郡司浩平(30歳・神奈川=99期)だ。深谷と松井宏佑(28歳・神奈川=113期)がいない中で、どう走るのか。基本はシンプルに自力戦だが、武雄記念(大楠賞争奪戦)の初日に一つのポイントがある。
岩本俊介(37歳・千葉=94期)の前で駆けたレースだ。郡司は南関の色んな自力選手と前後をその時々で話し、レースに挑んでいる。立場上、前で頑張ってもらうケースも多くなっている。
「KEIRINグランプリに南関の選手を多く乗せたい」
全日本選抜後に繰り返している言葉は、純粋にそのままの意味だ。
人気になり、勝つことが求められる中、郡司がどんな走りでこの言葉を現実のものにしていくか。勝って“日本一”と呼ばれるのか、勝たずとしても日本一と呼ばれる走りがあるのか…。
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前田睦生
Maeda Mutuo
鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。