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佐藤慎太郎“101%のチカラ”

【佐藤慎太郎の高松宮記念杯】北日本の“秘めた闘志”が最高に好きでたまらない

2023/06/23 (金) 18:00 62

岸和田・高松宮記念杯準優勝の佐藤慎太郎が胸中を語る(撮影:北山宏一)

 全国300万人の慎太郎ファン、そしてnetkeirin読者のみなさん、高松宮記念杯での応援アザした! それとオールスターのファン投票についても感謝を述べたい。今年もみなさんのおかげでドリームを走ることができる。このメンバーに選んでもらえたこと、本当に光栄だよ。今から気合をたぎらせて万全に仕上げていこうと思う。

“一歩だけ”でも近づけた感覚

 さて、宮記念杯を振り返ろう。オレは決勝2着でシリーズの幕を閉じた。岸和田のお客さんの熱量を感じながら走るレースは気持ち良く、発走前に聞こえる声援は大きく、中にはオモシロ系も入り乱れて飛んでくる。最高だったよ。最終的に栄冠を手にしたのは地元の古性優作。オレの優勝は叶わなかった。でも、今回の2着にはオレなりに価値を感じている。

 決勝レースは勝負所で7番手。物理的に優勝が遠い位置だった。それでも自分のコースを好タイムで突っ込んでいけたし、日々の練習やレースで培ってきた経験が発揮できたように思う。「オレはまだ強くなれているんだ」と実感できたことに大きな意味があった。オレみたいなオヤジ選手は言うまでもなく、アップデートの幅は小さい。でも少しずつの“一歩だけ”なら、ちゃんと進化を遂げられる。

最終バック過ぎ3コーナー付近まで7番手の苦しい展開となった(撮影:北山宏一)

 いつだって「GIを獲りたい」と思っているが、振り返れば2003年の全日本選抜優勝が最後になる。その事実からすれば、優勝までの距離は「遠い」と認めざるを得ない。でも今回の決勝で得た「GI優勝に一歩だけ近づけた感覚」は大切にしていきたい。「遠くなかった。手の届くところにあったよな、優勝」とハッキリと思うことができたよ。

優勝ならずとも価値を感じながらゴール線を切った(撮影:北山宏一)

北日本の“秘めた闘志”が気迫となっていた

 今回はもうひとつ「北日本地区」について書いておきたい。

 今節の北日本メンバーは「みんなで戦おう、北日本から優勝出そうぜ」みたいな意思疎通ができていて、高揚感があった。前検日に小原佑太や中野慎詞のナショナル組の話題になったんだけど、「層を厚く、GI戦線に強力な若手が欲しいですね。響平が一番若手の現状」とムードメーカーの小松崎大地が若手をキーワードに年齢自虐ネタを披露し周囲を笑わせていた。

 そんな自虐ネタで盛り上げていた大地だけど、『若手に負けない走り』をやる選手だし、その意識を伝えてくれる選手。シリーズ初日から思いが走りに出ていた。準決勝も素晴らしかった。レース後にお互いの走りを振り返り、意見交換をして、さらに信頼関係を深められた気がする。絶対に次の連係はもっと良くなる。

伝説の男であり北日本のムードメーカー小松崎大地(撮影:北山宏一)

 それに大地だけじゃない。北日本の“秘めた闘志”はいつにも増してギンギンだったね。青龍賞の最終直線、成田の走りなどとてつもない。「慎太郎さん負けねえからな」と言わんばかりの気迫。『準決勝が約束されたレース』だなんて微塵もねえ全身全霊の詰め方。「今オレ気持ちで負けてなかったか?」と考えさせられるほどで、この成田の気迫には喝を食らわされた感じがある。

 シリーズで連係した選手の走りから「コイツら本当に一瞬一瞬の競輪にすべてを注いでいるんだな」ってことを伝えられ、感動した。そんな素晴らしい地区で高め合い、レースで真剣勝負できる喜びは極上だった。自分が勝つために、仲間と上位を独占するために、命懸けで脚力を磨いていきたい。前の選手にも後ろの選手にも最高評価をもらえるようにやっていく。それがすべてだ。

北日本の仲間と切磋琢磨できる喜びを勝負の中で味わった(撮影:北山宏一)

心残りは次回“一緒に”取り返す

 充実したシリーズになったが、青龍賞だけが心残りだ。新田の走りは完全に進化していて、オレは追走しながらイチ競輪ファンの気持ちになっていた。「嘘だろ? 外並走から捲るつもりなのか? これ行っちゃう雰囲気だな! マジかよ!」と心の声はこんな感じ。新田の“強い”走りに終始ワクワクしっぱなしだった。「嘘だろ!?(笑)」って思わされるような規格外の走りに毎回笑っちまうくらいに興奮しているってわけ。

青龍賞は新田祐大-佐藤慎太郎-成田和也の布陣で臨んだ(撮影:北山宏一)

 ただ、このとんでもない好レースは、結果として事故レースとなり、新田は失格。復帰戦として走っていた平原、追走していた杉森の関東両選手が落車棄権で欠場に。昨年落車続きだったオレからすればどれほど残念な気持ちかわかる。レース後に新田と話をして「次頑張ろう」と言い合った。去り際に「絶対に慎太郎さんが優勝してください」と言葉をもらった。

 平原と杉森への申し訳なさを含めて複雑な心境ではあるのは当然のこと、悔しさも当然のこと。そんな中で絞り出してくれた言葉だと思う。新田と勝ち上がれなかった心残りは次回連係するときに一緒に取り返す。

新田祐大の言葉を受けて準決勝では気持ちに整理をつけていた(撮影:北山宏一)

命懸けで走るバディなわけで

 それでは今月のコラムはこのあたりで筆を置く。優勝に一歩近づけた実感と北日本に対する思いを再確認できたこと。高松宮記念杯は大きな収穫があった。競輪ファンのみなさんや評論家の方の中にはオレを評価したくない人がいるのかもしれない。無論ごくごく少数だけどね。走り云々ではなく、そもそも好き嫌いの話だろうな、と思うことがある。

 たまに大人げなく反応しちまうオレだけど(笑)、どんな人であれ、自由に競輪を楽しんで観て欲しいのが本心だ。色々な意見がある。ただ連係する選手は命懸けで走るバディなわけで。バディからの評価はストイックに求めなくてはいけない。それは忘れてはいけない。

 しっかりと自分のスタンスを仲間には見せていきたいし、否とされず評価してもらえるように頑張りたいね。全部含めてオレ自身が納得する道を爆走していくだけ! 前橋も函館も全開で行くぜ! ぜひ夏の競輪も楽しんでくれよ!ガハハ!

今夏も各地のスタンドを沸かせに行く(撮影:北山宏一)

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佐藤慎太郎

Shintaro Sato

福島県東白川郡塙町出身。日本競輪学校第78期卒。1996年8月いわき平競輪場でレースデビュー、初勝利を飾る。2003年の全日本選抜競輪で優勝し、2004年開催のすべてのGIレースで決勝に進出している。選手生命に関わる怪我を経験するも、克服し、現在に至るまで長期に渡り、競輪界最高峰の場で活躍し続けている。2019年には立川競輪場で開催されたKEIRINグランプリ2019で優勝。新田祐大の番手から直線強襲し、右手を空に掲げた。2020年7月には弥彦競輪場で400勝を達成。絶対強者でありながら、親しみやすいコメントが多く、ユーモラスな表現でファンを楽しませている。SNSでの発信では語尾に「ガハハ!」の決まり文句を使用することが多く、ファンの間で愛されている。

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