2025/02/25 (火) 12:00 7
全国300万人の慎太郎ファン、netkeirin読者のみなさん、約3週間の入院生活を経てやっと娑婆に戻りました佐藤慎太郎です。ホント娑婆の空気はうめえ! 今は左骨盤骨折の身だから、体を骨盤で支えるのはNGって生活をしている。これまで食らってきた数々の怪我の中でも比較的大きい部類の怪我だ。
検査や経過観察をしてから歩行のリハビリに入るので、現段階では自転車に乗ることもできない。でも焦っても仕方がない。復帰はしっかりと状態を戻してから。はやる気持ちをおさえて自分をいたわり、丁寧に課題をクリアしていこうと思う。まだ少しかかりそうだから、いつも温かい応援を届けてくれるみなさん、ぜひゆっくりお待ちいただきたく思う。
今回は歩くこともできないので仕方がなかったが、GIを欠場したことは本当に悔しい。目の前の一戦一戦に全力で取り組み、その積み上げの過程にGIという大舞台がある。そこで優勝するために毎日ツラい練習をやり、コンディションを保ち、試行錯誤を続けているわけだ。その素晴らしい大舞台を負傷欠場したので当然悔しい。特にここ数年はS班としてGI戦線を走ってきたから、どこか出場そのものが当たり前だった感覚もある。でも、改めて人生に当たり前など存在しないことを学んでいる。『GI欠場』、さすがにイメージできなかったな。
そうそう、今回の入院生活は個室に空きがなく大部屋だった。これがまた勉強になり面白くて、個室に空きが出ても大部屋を希望して居座っていた。身寄りのない孤独な人もいたし、大きな手術に挑む人もいた。「この人なんで入院してるの?」ってくらい元気な人もいた(笑)。
さまざまな理由があって同部屋に集まっているわけだけど、それぞれの怪我や病気のこと、置かれている境遇などを語らい、みなさんの人生を垣間見ることになった。ほんの少しだけど。
「色々な人がいるんだなぁ」と考える日々はどこか刺激的で、興味深いことばかりだった。落ち込んだり退屈でヒマしたりするくらいなら何かを得たかったので、自分に他人の境遇を当てはめたりしながら良い社会勉強ができたわ!
ひとつ、面白かったのが「カーテンの開け閉め」について。オレたち競輪選手は宿舎の寝床を「巣箱」と呼んでいる。巣箱にはカーテンが備え付けられていて、開け締めする際に音を立てないのが暗黙のマナーだ。寝ている人、くつろいでいる人、いろいろな選手がいるから、周囲の迷惑にならないように配慮する必要があるてわけ。
だが今回の入院生活では「シャー!」ってやたらデカい音を立ててカーテンを開けるオヤジさんがいたのよ。そのオヤジさんが「シャー」ってデカい音を鳴らすたびに、思いやりを忘れずにカーテンを開け閉めできる競輪選手たちを誇りに感じながら、イライラしたよ。オレたち競輪選手ってのが、いかに思いやりを込めてカーテンを開け閉めできる人種なのかを知り、謎の自信もついちまった次第。
オヤジさんの向かいのベッドには若い兄ちゃんがいたが、兄ちゃんは競輪選手ではないが静かに開け閉めができていた(笑)。ちなみに一回オレも思い切りカーテンを「シャー」って開けてみたりして、けん制は入れさせてもらった。
大怪我をしても、何か楽しいことはないか、何か学ぶことはないかとアンテナを折らないこと。どんなにうまくいかないことがあっても、意識はポジティブに保つこと。それだけは忘れずにやって行こうと思う。今回の入院も得るものがあったし、気持ちはポジティブのままだ。
さて、自分が走れていないこの時期に本が発売されるわけだけど、今は『骨盤に体重を乗せてはダメ』というドクターからの制限もあるから練習はできん。ということでじっくり刊行に際して思うことを書き連ねてみようと思う。
昨年、出版社から「本を出さないか?」と声をかけてもらった。最初に話をもらったときは「オレなんかが本とか出していいのか?」みたいに半信半疑だった。だが、このコラムも自分の考えや生活について伝えていきたいという気持ちからやっているものなので、そういう意味ではコラムも本も同じ事かな? とチャンスのようにも感じた。
練習時間の確保やレーススケジュールなどもあるから熟考はしたが、こんな機会もないだろうということで出版に初挑戦することを決めた。制作期間としてはなんやかんや1年近くかかったね。
完成した今、自分で言うのも厚かましいが、「決定版」のような出来映えになっているように思う。これを読めば競輪のことを広く深く知ることができる内容になっているんじゃないかな。競輪のシステムだったり仕組みだったりを細かく書き、「これから競輪を始めてみたい人」や「競輪を始めたばかりの人」にも楽しんでもらうことを心がけた。
ほかにも「競輪選手はレースでなぜこんな動きをするんだろう?」とか、みなさんが不思議に思うようなことも解説になればと思い、きちんと盛り込んでいる。佐藤慎太郎の生い立ちから、どんなルートを辿って選手になっていったのか、並びの決まり方、競輪道って何なのよってやつとか。手広く網羅したくて、『これ1冊読めば競輪のすべてがわかる!』みたいな“競輪の教科書”的なところを目指したつもり。
本の読み方なんてそれぞれみなさんが自由に読んで構わないものだと思っている。でも、全力で書いたので、どのチャプターがおすすめとかはなく、全体を読んでもらえたら嬉しいね。今回、「競輪の教科書を目指す」ということとは別に「競輪に興味がない人が読んでも自分と重ね合わせてもらえること」という方針を大事にした。
ただひたすらオレのことを書いている部分も多いけど、色々な場面で応用できる心構えみたいなものもそれなりに書いたつもりだ。読んでくれる方がうまく自分ごとにして取り入れてくれたとして、その人のことを奮い立たせることを目標にした。誰かの何かの励みになればってのがモチベーションだった。
競輪に詳しくなくてもいい、佐藤慎太郎を応援したことがなくてもいい。どんな人にとっても限界を打破していくために“有効活用”できる言葉を紡いだ。変な話、「仕事で使える本」にもしたかったんだよね。だから、今自分に限界を感じている人やもっと明日を頑張ろうと思っている人、トライしていたことを諦めてしまった人がいれば、その人にはぜひ手に取って欲しい。
それにしても、このコラムもそうなんだが、文字に整理して書くと「自分を客観視すること」ができるんだよな。今回も完成に向けて進行していくたびに「佐藤慎太郎って欲深いなあ」と思った。勝ちにこだわるという意味で、非常に欲深い。若い時からの話も全部遡って書いているんだけど、ずっと常に勝ちたがっているんだよな、若いときから今までずっと。
自分が勝ちたい中でも、レースではしっかり仕事もしなくちゃいけないし、競輪は深くて簡単ではないんだけど。それでも自分の根底には「勝ちたい」って気持ちがかなりベースに張り付いているんだなと再確認した。
競輪選手の中にはオレの考えと逆の選手だっている。自分が勝ちたいとかは二の次で、本当に自己犠牲の精神が強い選手はいる。「自分の勝利はどうあれチームのために仕事を」という競輪を貫いている人だね。自分はそういう思考ではなく、己の勝利欲を優先するタイプの選手ってことが自認できたわ。
中途半端な練習はしてきていない。「あんだけ練習してきたのに、俺が勝たなくてどうするんだよ」って気持ちになっている部分もある。自分と向き合ってきた自負がある。「誰かの役に立つ心構え」を綴りたいっていうのは、やっぱり真剣にずっと競輪に本気で取り組んだ証のような気もしていて、この気持ちを大切に精進しようと思ったよ。これからもずっと。
今月は入院ネタしかなく、レース回顧もない。だから思い切り宣伝のつもりで「発売に際して思うこと」を綴らせてもらった。
深谷がさ、感想を届けてくれたんだよね。静岡記念の開催中に読んでくれたらしくて。「すべての若手が読んだ方がいい」とか「競輪養成所の教本にした方がいいです」なんて言ってくれて。だいぶ褒めてくれました(笑)。深谷は静岡も優勝したし、オレの本を読めば、モチベーションが上がって優勝できるっていうジンクスが完成したと思っている。
オレの本を読めば競輪選手はモチベーションが上がって勝てるし、営業マンの方なら営業成績が爆上がりする!オレがずっと心がけてきた慎太郎哲学をぶち込んだわけだから、そんな役立ち方をしたいな! さあ、2月27日にいよいよ発売だよ! 気が向いたらぜひ読んでみてください。
限界?気のせいだよ!
予約購入? 以下のリンクからヨロシクだよ! ガハハ!
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佐藤慎太郎
Shintaro Sato
福島県東白川郡塙町出身。日本競輪学校第78期卒。1996年8月いわき平競輪場でレースデビュー、初勝利を飾る。2003年の全日本選抜競輪で優勝し、2004年開催のすべてのGIレースで決勝に進出している。選手生命に関わる怪我を経験するも、克服し、現在に至るまで長期に渡り、競輪界の第一線で活躍し続けている。2019年、立川競輪場で開催されたKEIRINグランプリ2019で優勝。新田祐大の番手から直線強襲し、右手を空に掲げた。絶対強者でありながら、親しみやすいコメントが多く、ユーモラスな表現で常にファンを楽しませている。SNSでの発信では語尾に「ガハハ!」の決まり文句を使用することが多く、ファンの間で愛されている。麻雀とラーメンをこよなく愛する筋肉界隈のナイスミドルであり、本人の決め台詞「限界?気のせいだよ!」の言葉の意味そのままに自身の志した競輪道を突き進む。