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前田睦生の感情移入

【競輪戦略の基礎講座】KEIRINグランプリの松浦悠士の走りが教えるもの

アプリ限定 2023/01/05 (木) 18:00 56

松浦悠士の考えは何だったか

KEIRINグランプリの松浦悠士の走りが教えるもの

 2022年12月30日に平塚競輪場で争われた「KEIRINグランプリ2022」の松浦悠士(32歳・広島=98期)の戦いぶりにシビれた。“競輪”を見せてくれたな…と強く感じた。長い周回のグランプリで、早い段階から、前受けした北日本の分断に動いた。

 ゾワ〜〜っ。

 ライン構成、車番的にも初手から不利になりそうな状況だった。
 では、立ち返って根本的な競輪の戦略とは何か。「勝てる可能性を高める」が1番に上がる。勝つために、どうするか。松浦としては、北日本を分断することで勝機を見出す。それが近畿コンビや郡司浩平(32歳・神奈川=98期)、平原康多(40歳・埼玉=87期)のチャンスを生むとしても、まず自分のチャンスをつくらないといけない。

 他の構想としては、「何もせずに待つ」ある。が、これを選ばなかった、またこれまでの松浦の戦いぶりがそうだが、こうしたスタイルを取らない松浦の意欲がある。優勝だけを考えた時に、こちらの方が良かった可能性はある。

 でも、ユウジはなぜ、そのスタイルを選ばないのか…。

悔いを残さないために

『全力』の松浦悠士

 郡司か平原、もしくは脇本雄太(33歳・福井=94期)が強引に北日本に抵抗するのを待つ。確かにその時はチャンスかもしれない。ただし、そうでない時に北日本の番手まくりが決まり、何もできない可能性が残る。

 ユウジにとってそれはありえない。ありえてはいけないもの、ともいえる。なぜかーー。ここにユウジが取った戦略の最大理由がある。競輪戦略(車券ではなく)にとって、最も大事といっていいものがある。

「ファンは、楽しんでくれるのか」

 人任せにして、自分自身が後悔するような走りになってしまった時に、ファンは何を思うだろう。そのレースを、どう思うだろう。

「そがあなもんは、見せられんけえ」

将棋のパーセンテージシステムが競輪で表示されたら…

ファンは見ている

 将棋界では1手、また1手につき“勝利の可能性”がAI評価によるパーセンテージで表示されるシステムが生まれている。手の内容により大きく変動することもある。ユウジが北日本分断に動いた時、どうだったろうか…。

 結果としてはワッキーがえげつなく強かったのでユウジは勝てなかったわけだが、あの混戦のあおりを受けて、ワッキーが苦しくなるパターンも想定できた。ワッキーのパーセンテージの上下も気になるくらいだが、上向いたことは間違いないだろう。

 ただ、ユウジや他の選手の動きでワッキーが不利を被る可能性はあった。レースが動いた後、新田祐大(36歳・福島=90期)が番手から出たタイミングで、ガクっと下がった可能性もある。だが、ねじ伏せた。2022年のグランプリ覇者は、強過ぎた。

実は、すべての競輪がそう

この人は最強過ぎる

 グランプリという舞台で、しかも、構成、進行が極端だったこともあり、ユウジの走りは大いに目立った。だが、実際には全国のどこの競輪のレースも基準はここにある。“勝利に近づくとは”と、“ファンが何を感じるか”、がせめぎ合っている。

 現実には着順による勝ち上がりの権利が発生するレースもあるので、3着は確保したい…という思惑が仕掛けを遅らせることもある。AIがそこを学び始めたら、記者はいらなくなるんだろうな…。

“季節外れのギャンブラー”と呼ばれている町田さんが当サイトのコラムで、「並びだけわかればいい状況」や「コメントの出し方」について書かれていたが、この状況についてはおいおい私も書いていきたい。町田さんが感じている危機感は、競輪そのものに直結する。

 今回はただ“競輪”を描いてくれた松浦悠士の走りに感銘を受けた者として、少し、書かせてもらった。北日本勢を応援していた方や、北日本車券を勝負していた方にとっては「何だよ〜」と思われる走りだったかもしれないが、その不満に耐えうる、毅然とした、格調の高い走りだったと強調させてほしい。

ワッキー、GP優勝おめでとう!「チュっ!」


Twitterでも競輪のこぼれ話をツイート中
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前田睦生

Maeda Mutuo

鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。

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