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平原康多の勝ちペダル

【#5】「どこに行けば勝機があるか」その一瞬を逃さずに / 水都大垣杯

2021/03/17 (水) 18:00 16

繰り上がり優勝となった大垣記念(提供:チャリロト)

全日本選抜競輪(GI)決勝のゴール後に落車があり、万全ではないなか迎えた大垣・水都大垣杯(GIII)。結果、2位入線→繰り上がりで優勝。

アクシデントがあったうえでの繰り上がり優勝に、複雑な思いもありますが…。勝ちにいって掴み取った、今年3回目のGIII優勝の瞬間を振り返ります。


落車後も休まず練習を重ねる日々

 netkeirinをご覧の皆さん、お久しぶりです、平原康多です。

 2月の全日本選抜(川崎)決勝では、ゴール後に落車をしてしまい、ファンの皆さんにご心配をかけました。でも翌日から練習もできましたし、大垣記念では優勝という結果を残すことができました。

 その大垣記念ですが、実は前検日の前日に右の腰が痛くなりました。川崎の落車は左半身を打ったものですが、今回の痛みは右。休まず練習していた結果、無意識に落車した左半身をかばっていたのかもしれません。それで右側に負担がかかったのだと思います。以前は競輪場でスポーツマッサージとかが受けられたのですが、コロナ禍で今は受けることができません。ですから電気治療器を持っていきました。

 そして川崎の落車後、修理に出していた自転車もギリギリ間に合いました。前検日の昼頃、届いたんです。予備の自転車は持って行きましたが、やはり違います。

修理に出していた自転車が前検日に届く!(提供:チャリロト)

体中からアドレナリンが出まくった瞬間

 初日特選は吉田拓矢君(茨城)と連係。彼は本当に強いので頼りになります。腰の痛みを抱えながらの戦いでしたが2着とまずまずだったと思います。2次予選は自力勝負でした。雨でバンクコンディションは重かったですね。ラインは4つに分かれていて、売り出し中の島川将貴君(徳島)がいました。南関勢が先行態勢に入り、4、5番手に東北勢。自分は6番手。そして島川君は8番手。ポイントは島川君を前に出させないこと。先に自分が仕掛けないと勝機はないと考えていました。残り400m前で、島川君が動いてきたので自分も踏み出し、押し切れました。腰の状態は、やはり良くなかったですね。

 ところが準決勝になると、腰の痛みが和らいたんです。日に日に体の状態も良くなってきたんですね。このレースは逃げる皿屋豊君(三重)を北津留翼君(福岡)が強引に抑えに行きました。北津留君の後ろにスイッチしたのですが、北津留君が出切れないと判断し4番手。残り200mでまくって行きましたが、2番手の柴崎淳君(三重)が皿屋君の後ろから出たので、冷静に柴崎君の後ろに。ゴール前で交わすことができました。

 そして決勝です。吉田君がまだゴールまで600mの時点で先行してくれました。すると上田尭弥君(熊本)が物凄いスピードで来て、後ろには浅井康太君(三重)が続く展開になっていました。吉田君は本当に頑張ってくれていたのですが、彼の気持ちに応えるためにも勝たなくてはならない。そう思い浅井君に続きました。

「上田君(8番車)が物凄いスピードで来て…」(提供:チャリロト)

 最終4コーナーを回って、上田君と浅井君の間が一瞬、空きました。狭いところを突っ込むリスクはあるのですが、体が勝手に反応。この時、体中からアドレナリンが出まくってました。どこに行けば勝機があるか、体が覚えているんだと思います。浅井君が自分の方に寄って来て接触。一番内にいた上田君が落車するアクシデントも、自分は何とか耐えて2着でゴール線を通過しました。浅井君が失格になってしまい、自分が優勝するという形になりました。あまり気持ちの良いスカッとした優勝ではなかったです。

あまり気持ちの良いスカッとした優勝ではなかった(提供:チャリロト)

 次は25日から三重県の松阪競輪場で始まるGIIウィナーズカップです。昨年の大会(福井)は初日特選で落車し、2日目以降欠場でした。その悔しさが本当にあるんです。だからこそ、今年こそはの気持ちが強いです。中1週間ですが、しっかり練習をして、ファンの皆さんの期待に応えたいと思います。

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平原康多の勝ちペダル

平原康多

Hirahara Kota

埼玉県狭山市出身。日本競輪学校87期卒。競輪選手・平原康広(28期)を父に持ち、その影響も受けて高校時代から自転車競技をスタート。ジュニア世界自転車競技大会などで活躍し、頭角を現していった。レースデビューは2002年8月5日の西武園。同レースで初勝利を記録。2009年には高松宮記念杯と競輪祭を制し、2010年も高松宮記念杯で勝利。その後もGⅠ決勝進出常連の存在感を示し、2013年は全日本選抜、2014年と2016年には競輪祭、2017年も全日本選抜などで頂点に輝く。最高峰のS級S班に君臨し続け、全国の強者と凌ぎを削っている。

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