閉じる
バラエティ

【オールスター競輪予想】古性優作はオールS! SS選手上半期通信簿とKEIRINグランプリへ向けた戦い方 〜競輪記者座談会(前編)

アプリ限定 2022/07/20 (水) 18:00 18

「オールスター競輪(GI)」が8月9日から西武園競輪場で開催される。そこで、激闘の歴史を近くで見守ってきた競輪記者の皆様に集まってもらい、「オールスター競輪2022」を徹底討論してもらいました。前編は「SS選手上半期の通信簿」、後編は「オールスター競輪大展望」です。どうぞご覧ください。(取材日:6月29日)

古性優作高松宮記念杯競輪G前
充実一途! 本格化した古性優作(撮影:島尻譲)

次なるステージへ進む古性優作 進化する45歳・佐藤慎太郎

東京スポーツ 前田睦生記者(以下前田) 今回もよろしくお願いします。2022年の上半期といえば、松井さんが車券を当たり倒しているイメージしかなくて。好調だったんじゃないですか?

日刊スポーツ 松井律記者(以下松井) 前半楽しかったですね(笑)

前田 松本さんも車券当たってるんじゃないですか?

デイリースポーツ 松本直記者(以下松本) 車券は当たっています(笑)

前田 ということで、私だけ当たっていません(笑)

松本 前田さんは予想がひん曲がっているから(笑)。前田さんの下半期のテーマは車券の買い方を変える、でいいじゃないですか。

前田 でも宮杯(高松宮記念杯競輪)の決勝の時に奇跡が起きて。もともと荒井(崇博)から買っていたんですが、現地で女性とすれ違って。“どうも古性の妻です”って挨拶されたもんだから、景気よく“今日は古性やってくれるでしょう〜!”って返した後あわてて古性を買いに行ったら当たったんです(笑)。というわけで、そんなS級S班選手の前半戦を振り返って行こうと思いますが、古性と慎太郎さんはS班らしい戦いをしてきたんじゃないでしょうか。

松井 古性は去年のオールスターで本格化して、グランプリを自力で獲って、年が明けて今年はタイトル2つですか。何よりすごいのは、グランプリ以降、脇本抜きでGIを獲っているところ。そこに古性のひと皮もふた皮もむけた姿があったよね。

松本 そうですね。やっぱり(去年グランプリを獲って)輪界を代表する選手になったので(レースでの)立ち振る舞いっていうのも、意識している部分はあるんじゃないですかね。ひけないところは粘ったり、捌いたり、みんなの見本になろうと、タテの脚も強化している部分があるんじゃないでしょうか。

松井 もちろん、まわりが古性との併走を避けるっていうのもあるし、だけど、荒っぽいレースをするぐらいだったら早めに動いちゃおう、みたいなスタイルになってきたよね。(古性の進化レベルが)第2段階に入ったかなっていう感じだよね。

佐藤慎太郎平塚記念ファンサービス
ファンの声を力に変え 日本全国を走り続ける佐藤慎太郎(撮影:島尻譲)

前田 松本さんは(デイリーだから)慎太郎さんと付き合いが長いですけど、慎太郎さんの変わったところはないですか?

松本 前半戦は来た追加を全部走って、1〜3月は記念ラッシュでほとんど決勝進出。同地区の北日本のSS守澤が負傷で走れなかった時に“声がかかった以上は自分が行く”と。慎太郎さんは福島が拠点だけど、今はベースを沖縄に置いているので、移動が大変なはずなのに、ですよ。あとどの競輪場にも慎太郎さんのファンが多い。応援してくれるファンがいるからそこに行き、それで結果を出す。それが慎太郎さんの原動力になっているんだと思います。ファンの声を力に変えて、45歳になった佐藤慎太郎はさらに進化してきたな、と感じています。

松井 今年の上半期ベストレースは平塚記念(湘南ダービー)二次予選の慎太郎かな。あれ見た時にすごいぞ、これはってなった(笑)。

前田 追い込み選手が目立たない今の時代にあって、これだけのことするのは衝撃が走りましたね。今取材現場でいろんな選手に話を聞いていても、慎太郎さんに憧れていると語る追い込み選手は相当います。

松井 どの競輪場も慎太郎を呼ぶことが興行的な成功の近道だと思っているだろうね。全体の番組も良くなるし、いい循環になっているよね。

前田 昔の井上茂(井上茂徳)さんとか。

松井 そうそう、吉岡時代の佐々木昭彦さんとか。良い先行選手がいて、良い追い込み選手がいると開催全体が盛り上がるよね。

松本 宮杯決勝で慎太郎さんが勝っていれば松本整さんのGI最高齢優勝記録(45歳)を抜いていたんですよね。慎太郎さんはGIを優勝すれば記録更新になりますから。2003年高知の全日本選抜以来だから約20年ですか。最初のタイトルから20年の時を超えてGIを獲るっていうのは見てみたい瞬間ですね。

獲るべきところをきっちり獲る守澤太志はすごい

前田 一方で、上半期苦しんできた宿口と守澤。宿口はどう映りましたか?

松井 一時期の闇は脱したかな。宿口ももうSSになった以上は超一流の選手なわけだから、SSの宿口としてどういうレースをするのか、というのが僕は見たくて。去年のグランプリでああいう並びになって、平原が獲れなくて。っていうところから、どうしても平原の前で“アニキ(平原康多)を男にしたい”って思いがものすごく強かったんだけどなかなかそれが叶わなくて。そしてその後もうまくいかない。でも、この間の岸和田初日で(関東の)3番手を走ったじゃん? あれがいいターニングポイントになったと思うんだよね。あれで肩の力が抜けた。平原が宿口に“こうやって走るんだよ”っていう手本のような走りを背中で見せてあげてたよね。

松本 岸和田前検日のときにびっくりしましたね。関東は2-2で分かれて、吉田-諸橋は並ぶでしょう、で、埼玉二人で前後どうする? っていう並びになると思っていたら、諸橋さんが4番手って。4車で結束。吉田拓矢も平原も諸橋さんも、みんな宿口に頑張ってほしいっていうような一体感が感じられました。

松井 確定板っていうのは3人までしか入れない。そこに4人で組むってことは1人は勝負圏外になるわけじゃない? だから前を走る選手なのか後ろを固める選手なのかなんだけど、でも、あのレースからはみんなで決めようという意思が感じられたよね。

前田 守澤はどうですか?

守澤太志ラーメン大将ポーズ
“大将ポーズ”をしても痛む!? 仕事人・守澤太志は獲るべきところできっちり獲る(撮影:島尻譲)

松本 自転車に乗ってる時は影響ないですが、日常生活のふとした瞬間に鎖骨骨折の影響があるみたいで、フォトセッションの時って、選手はみな腕を組んでラーメン屋の大将のようなポーズをするじゃないですか。そのポーズが痛むとのことでした。

前田 重傷中の重傷、複雑骨折でしたからね。

松井 こちら側の理解を超えたところで、彼ら(競輪選手)は走っているしね。で、取手(全日本選抜競輪)で失格があったじゃん。あれもコンディションと自分の意識とが空回りしたときに起きがちな失格じゃない? そういう部分も見せるんだけど、でもダービーでは決勝乗るし、佐世保の全プロを優勝するし。獲るべきところをきっちり獲っているのがすごいよね。

前田 このあと下半期に大きく取り返すぐらいの状態に来るんでしょうしね。

松井 賞金ランキングでも圏内にいるんでしょ?

松本 2ヶ月負傷欠場で、6月にあっせんをしない措置があったわけですからすごいですよね。6月は結果的にリフレッシュ期間になったわけで、身体のメンテナンスができていれば下半期の守澤の逆襲はあると思うんですよ。

松井 守澤が元気で、成田和也が復活していて、佐藤慎太郎が若返っている。東北の追い込み選手たちがお互い相乗効果で活性化しているよね。

まるでビリヤード!? 緻密な戦略を立てる松浦悠士

前田 さて“清水・松浦といえば松井律”ですけれども松井さんいかがですか? 

松井 松浦の凄さは皆勤賞。走って走って54走でしょ(6/29時点)。佐藤慎太郎と松浦悠士がずば抜けて走ってるよね。優勝2回っていうのは“松浦にしたら”物足りないのかもしれないんだけど、準優勝5回。こんだけ走って、それだけ決勝に乗ってくるわけだから、コンディションを維持できるスタミナ、身体作りっていうのかな。ちょっと抜けてるよね。競輪界の功労者だと思う。

松本 静岡だったかな、イベントにも来てましたからね(2/5 たちあおい賞争奪戦でトークショー)。『netkeirin』のコラムもそうですけど、SNSをうまく使ったり、自分の思ってることを発信するじゃないですか。

前田 あの松浦悠士のコラムの読みやすさなんかは、とにかく伝えたいものをそのままの言葉で書く、みたいな文章の良さがあって。松本さんは勉強した方がいいですよ(笑)。

松本 はい(笑)。

松井 繰り出す言葉が上手なんだよね。受手が鈍感じゃなかったら“この一言で拡げられるでしょ?”っていうキラーワードをくれるんだよね、松浦って。賢い。セルフプロデュースもうまいし。

松本 共同インタビューゾーンに(レースを振り返る事ができる)ビデオが置いてあって、そのビデオを使ってレースを一緒に見たことがあったんですけど、松浦ってレース分析がすごく上手いんですよね。後輩に対するアドバイスも的確。石原颯と一緒にやってきて、“あのレース見せてくれます?” って。で、レースを見ながら石原に“ここはこうした方がいいよ”みたいなアドバイスをしていて。松浦を中心に中四国が結束しているんだなって思いました。

松井 松浦の頭ん中がすごいなと思ったのが、取手初日の全日本選抜競輪。ここで北津留を弾いたら、それがトリガーになって後ろが仕掛けられないっていう、まるでビリヤードみたいな。新田と郡司を封じるために北津留をブロックする、そういった二手、三手先を読んだ仕事をするんだよね、松浦って。競輪って9人、それぞれの動きがあるなかでそれができちゃうのがすごい。

松浦悠士取手全日本選抜10R
松浦悠士の頭脳プレーが冴え渡った全日本選抜競輪(撮影:島尻譲)

前田 鉄砲玉扱いされた翼が可哀そうでしたけど(笑)。(清水)ヒロトはどうですか?

松本 清水裕友は(松浦の)対極だよね。

松井 そうだね、でもそれが清水の“味”っていうのかな。松浦みたいに完璧に思いを伝える事ができないからね、この人は。負ければ悔しがる、落ち込む、ぼやく。感情むき出しのレーサーでしょう。嬉しい時は隠しちゃうのに、悔しい時はさらけだしちゃう。でも、ワンチャンスでウィナーズカップ勝っちゃうように勝負運は持っている。なんといっても、松浦、郡司、古性より先にグランプリに乗っているっていうのがすごい。それによって松浦とのゴールデンコンビは対等な関係が築けている。“今回は自分後ろ回らせてください”ってグランプリで松浦に言えるぐらいだし。松浦は絶句していたみたいだけど(笑)。

松本 素敵な関係ですね。忖度無しで言い合える関係なんでしょうね、中国ゴールデンコンビは。で、上半期の清水の大きな動きといえば、いわき平ダービーでの慎太郎さんとの連係でしょうね。あのシチュエーションしかないじゃないですか。

松井 奇跡の組み合わせだよね。それでまた、慎太郎の地元で連係できたっていうのがいいよね。

松本 ゴールデンレーサー賞だったとはいえ、“憧れの人をつけたらこういうレースをするんだ”っていうのを体現するというか、見てる人に伝わるレースでしたね。

松井 あのときのいわき平は盛り上がっていたもんね。ファンが絶対に印象に残るシーンって、レースのなかにドラマが見えたとき。そこで“競輪の楽しさ・面白さ”を知るんだよね。

清水裕友-佐藤慎太郎
清水裕友(左)と佐藤慎太郎の連係 レースのなかにドラマが見えたときに“競輪の楽しさ・面白さ”を知る(撮影:島尻譲)

初オールスター制覇を狙う平原康多 地元開催でも貫く“我が道を行く”スタイル

前田 吉田拓矢は記念こそ勝ちましたけど、若干目立っているような、いないような、どうなんでしょう?

松井 成績はちょっと物足りないかもしれないけど、レース内容は格段に良くなってるよね。

松本 2月の全日本選抜はひとりで背負っていたんでしょうね。地元GIでS級S班としての自分の見せ方とか。

松井 次のウィナーズCも宇都宮で、“栃・茨”でビッグレースが続いたっていうのもあって、自分がエースでやらなきゃ、やらなきゃっていう気持ちが空回りしちゃったかもしれないね。

松本 スタートダッシュは良かったんですけどね、立川で優勝して。でも大宮で落車があってリズムが狂ってしまったのかもしれないですね。

松井 “栃・茨”でビッグが終わった後、吉田拓矢は“関東の仲間に支えられた”って。それが吉澤純平だったり、芦澤大輔だったり、それこそ平原康多だったり、みんなから“自分一人で背負うな”って言われて楽になって走れるようになったと。そこからの吉田拓矢は行くべきところで行くし、位置取ったらしっかりモノにするし、自分が勝てなかったとしてもラインで勝利できるようなレースを続けてるじゃん。

松本 宇都宮記念では地元の二人を立てて。あれで眞杉もスイッチが入ったし、金子もタテじゃなくてヨコに仕事をしてから1着を目指したっていう、ライン全員が機能していましたもんね。

松井 そうだね。だから眞杉の存在もそうだし、ヨシタクが強くなったのもそうだし、関東全体がすごくレベルアップしている。今年は関東の年になると思うよ。西武園でオールスターがあるし、前橋で寛仁親王牌あるし。あと2つ関東でGIがあるわけだから。あと話がそこまで膨らんでないけど平原はどう?

平原康多写真
終始貫く“我が道を行く”スタイルの平原康多 地元西武園でのオールスター制覇をファンは待ち望んでいる(撮影:島尻譲)

松本 このクラスの選手となると評価は難しいですよね。完璧を求められているので平原は常に“平原康多”っていうか。

松井 実績、数字ともに申し分ないんだけど、打率っていうのかな、50回以上GIの決勝乗っているんだから、もっとタイトルがあってもいいんじゃない? って思う。たとえばこないだの平ダービーも獲れてたじゃん。やりようによっては。

松本 眞杉をそこまでかばわずに2コーナーで発進して、慎太郎さんがワッキーを止めてたら、って。

松井 ワッキーをどう封じるかっていう期待もあったけど、GIの決勝でワッキーに普段の走りをさせて勝たれちゃったっていうのが、ちょっと残念だったね。そういうレースって結構あるじゃん、平原って。ワッキーについた時のグランプリとか。

松本 “タテ踏めば獲れたじゃん”って(笑)。

松井 それが彼の人の良さだし、人望にもつながっているんだけど、非の打ち所がないんだけど、こっちはずっと11年グランプリ平原から買ってるんで、頼むからそろそろ返してくれよって(笑)。

松本 来た時に配当は高くないかも知れないけど(笑)。

松井 利息分だけでもいいから返してくれって(笑)。平原がグランプリ獲れたら自分も成就できるんで(笑)。

前田 本人の思惑がうまく行かないのが平原康多。脇役になりたいとか言ってるけど、そんなわけにはいかないですよ。平原に声をかけられたっていうだけで、火が付く選手がたくさんいますし。

松井 そう、影響力があるから、平原が使った道具が流行るっていうのもあるよね。そういうものをキャッチするアンテナの高さとか、すべてにおいてこの人はチョウイチ(超一流)なんだよね。

松本 ファン投票2年連続1位に選ばれたってことがすごいですよね。地元西武園でのオールスター開催が決まって、絶対獲りたいだろうなと思って平原に取材したんですけど、“別に(地元だからって)気にしてないですよ” って肩すかしくらっちゃって(笑)。

前田 宿口が宮杯の初日特選を勝ったときに平原に取材していて、“(平原なら)宿口の心理状況とかわかるんでしょうね”ってぶつけたら、“いやただの先輩後輩ですから”って。そういう一言でいなされちゃう(笑)。

松井 平原は(競輪記者の)思い通りにはならないよ(笑)。平原のポリシーは“自分は我が道を行く”だから。“誰のために”とか、“ついてこい”とかじゃなくて、自分は自分の道を行く人なんだから。返ってくる答えがすべて“我が道を行く”なんだよね、平原って。

一枚岩になりきれない南関 孤軍奮闘が続く郡司浩平

悩める郡司浩平
厳しい戦いが続く郡司浩平 南関はひとつになれるのか(撮影:島尻譲)

前田 そして郡ちゃん(郡司浩平)。(優勝した)川崎全日本のあと。どん詰まりになっている状態がね(笑)。南関はどうなっちゃったのって。どうしても郡ちゃんには厳しくなっちゃうんだけど、郡ちゃんに責任があるんじゃないの? って。後は松井さんに託します(笑)。

松井 (笑)。去年の1月に深谷が移籍してきて、真っ先にその恩恵を受けたのが郡司浩平だったわけだけど、渡邉雄太に前を任すのはわかるんだけど、和田真久留が前を回るとか、車券的にも買いづらかったことがあったじゃん? もちろん今後のことも考えてのことだと思うんだけど、そういうレースもしきれなかったし、南関が一枚岩になりきれてない感じがするね。深谷のコンディション頼りみたいなところがあるし、ただ、郡司って単体だと強いじゃない? ずっと(ひとりで)頑張ってるじゃない? 松浦同様に結果を出すし。

松本 もちろん、川崎記念の優勝もあって、単騎の函館記念もそうだし、久留米記念もそうだったけど、“この展開から突っ込んでくる?” っていうレースをしてるんですけど、お客さんが郡司に求めるものはもっと大きいから、このくらいじゃ本人としても物足りないんでしょうね。

前田 静岡や千葉と一緒に、もっと南関全体を巻き込むようなものを作って欲しいというかね。郡司を中心にして。

松井 南関からグランプリに鈴木誠さんと滝澤(正光)さんが出て、高木(隆弘)さんが出てきて、エビちゃん(海老根恵太)が出てきて、(渡邉)晴智とか、だけど、郡司はこれまでの選手たちと色が違うというか。昔の人はやっぱりいい意味でワガママだったから。“俺が黒と言ったら黒なんだ”と言って、周りもそれに従うような感じだったけど、郡司は強烈に我を出すタイプじゃないからね。和田真久留に前を走ってみたらっていうのも、郡司の優しさでもあるんだけど。

前田 そうですね。昔の選手が言って譲らなかった、“このレースこうしないと決まらないよ”、“勝ち上がりの椅子ここが大事だからこう獲らないと”っていうものを郡司は言わないんでしょうね。

松井 そう。だから郡司の脚で内藤秀久のハートが欲しい(笑)。脚力に対してタイトルが少ないというのが平原同様で、郡司の優しさが要因なのかもしれないけど、南関の大エースなんだから、もっと勝手を言っていいんじゃないかな。

松本 現状、深谷次第になっているのと、あとは千葉勢が元気ないのも郡ちゃんにとってはね。根田が(全日本選抜競輪で)骨折してしまったり、岩本俊介もGIになるとパンチ力が欠けたり。あと神奈川勢もか。自前の後輩が欲しいですよね。勝ち上がっていくなかで、後輩とセットで勝ち上がっていくというかね。

松井 “自分がGIで郡司さんを引っ張るのが夢です”みたいなことを言う若手が出てきてほしいよね。青野(将大)とか北井(佑季)とか新村(穣)とか。GIの準決で先行できる選手が出て来て欲しいね。

松本 関東には眞杉がいて、九州には嘉永がいて。北日本には中野慎詞が、中・四国には太田海也が出てきて。南関の若い子たちにも頑張ってほしいっていうのはありますよね。

前田 静岡の深谷道場の若者に頑張ってもらうしかないですね(笑)

通信簿
上半期の戦いぶりを記者たちに評価してもらった 後半はどんな戦いを繰り広げてくれるだろうか

毎年ブレイクするベテラン 今年は成田和也と荒井崇博

松井 (深谷道場の中では)渡邉雄太はちょっと元気が出てきたかな。その深谷を僕は前回の座談会で2022年の注目選手と挙げたんですけど、もちろん今も注目しているんですけど、南関が“駒不足”という状況の中で、GIの準決勝の各レースに2,3人ずつ、6〜9人いるのが理想なのに、今の南関は4人ぐらいしか勝ち上がれなくて。深谷と郡司が組んではじめて上位と渡り合えるという状況ではなかなか厳しくて。

前田 準決に8人乗れたら理想なんですけどね。

松井 で、注目しているのがベテラン。2年前の和田健太郎じゃないですけど、競輪って毎年ベテランがブレイクするじゃない? で、今年来てるのが成田和也と荒井崇博。

松本 荒井さんは賞金ランキング10位ですからね。

松井 この二人は面白いよ。グランプリの争いに最後の最後まで食い込んでくるんじゃないかな。

前田 荒井さんは44歳。

松本 GI初優勝が40代っていうのは内林(久徳)さん(2004年の全日本選抜競輪を40歳で優勝)、あとは三宅伸さんが39歳。だから荒井崇博と諸橋愛の二人は最高齢GI初優勝記録の可能性があるんですよね。荒井さんはこの間の宮杯でチャンスがありました。

松井 成田和也、荒井崇博の二人はその地区のカンフル剤になっているよね。若手もベテランも刺激になるし。

松本 荒井さんを慕う後輩も出てきてますよね。嘉永とか松岡(辰泰)とか、熊本競輪場が使えない熊本勢が出稽古に行ってますし。

松井 (中川)誠ちゃんにも頑張ってほしいよね。今荒井と中川とで通算勝利数の争いやってるけど、あれは見てて面白いし(笑)。

前田 今年の上半期のハイライトで一個思い出したのは、誠一郎さんが出てるレースを、ファンのコメントが出てくるYouTubeの中継で見ていたんだけど、4番車でフラフラっとして、ダメな時の誠ちゃんの走りをしてたんですね。で、バーンって浮いて、どっかに消えてったんですよ。そしたらコメント欄に“さまよえる蒼い弾丸” って書かれてて(笑)。上半期のコメント賞を私はあげたい(笑)。

松井 B'zじゃねえか(笑)。誠ちゃん、平のダービーでありえないコース取りをして勝ったことあったよね。ドン、ドンって内入ってきたやつ。誠ちゃんが戻ってきて取材ですぐ突っ込んだよ。“誠ちゃん、佐藤慎太郎みたいだったよ”って(笑)。

吉田有希
兄や先輩たちから競輪の“イズム”を注入され後半戦に大きく羽ばたきたい吉田有希(左、撮影:島尻譲)

競輪IQを高める諸橋愛 兄や先輩たちと成長の軌跡を描く吉田有希

松本 前田くんも変わらず、吉田有希に期待でいいですか?

前田 ここまで順調そのもの。グランプリに乗る可能性は依然として9%ですね。

松本 吉田兄弟のツーショットって、ぼくたち(記者)は全員欲しかったんですけど、ヨシタクが“決勝乗ってからで”って。

松井 有希に無駄にプレッシャーを与えたくないっていう兄心であるのかもしれないね。

前田 宮杯の前検でJKAの人が気を利かせてくれて、“吉田兄弟の写真要りますか?”って提案してくれてたんだけど、有希が“そのときはまだです”って(笑)。

松井 有希はFI戦で上がっていく過程がセンセーショナルだったけど、GIになるとまだちょっと壁にぶち当たっている感じになっているしね。そこを乗り越えて、兄弟連係したときにはみんなでワッショイしてあげたらいいんじゃないのかな(笑)。

松本 吉田有希はこのあとオールスター、親王牌、競輪祭。3つGIに出られる権利を持ってるんで、下半期、その時が来るのが楽しみですね。

松井 いやー連係できるところ(決勝)まで行く(笑)?

前田 楽勝でしょう! なんなら有希が拓矢の後ろを回って、競輪祭を獲っちゃいます。GI兄弟連覇です。今年の競輪祭はそうなります。でも、有希はいい壁のぶち当たり方をしていますよね。いきなり深谷みたいにGI獲ってくださいっていう選手じゃないから。(有希は)可愛いから、先輩からいろんなことを教わっています。GIの負け戦で先行して頑張ってとか、歩んできている一歩一歩は確かだから。後半戦のGIでは先行して勝ち上がります。後ろで諸橋が仕事して二次予選でワン・ツーを決めるのが、このあと向こう3年で10回ぐらい起こります。諸橋が競輪を教えるなら、有希はホンモノになります。

松本 強くなっていく過程の中で、先輩からの助言っていうのは絶対必要だし、吉田有希は特にチャレンジで18連勝で上がってるから、先輩に厳しく言われることってあんまりなかったと思うんですよね。モノ言える関東の先輩たちと一緒にレースを作り上げていけるっていうのは大きいと思います。諸橋だったりカミタク(神山拓弥)だったり。眞杉も結構言われてましたけど。

松井 そうね。エッセンスというか、神山にもらった訓示“なるほどこうしないといけないんだな”っていうのはひとつひとつ栄養にはなってると思うけど、あのときすでに眞杉は強かったからな〜(笑)。その数ヶ月後にはダービー決勝乗ってたし(笑)。

前田 GIの二次予選で吉田拓矢と諸橋愛が並ぶとだいたい決まってきたわけですよ。これは拓矢に“このレースはこういう競輪だ”っていうものを諸橋が注入して、それがバッチリとかみ合ってきたんですよ。競輪界には諸橋みたいな選手が必要。とにかく必要。追い込みの競輪を知り尽くしていて、競輪IQを高めてくれる人。

兄・英明の分も背負って走り続ける山田庸平

松本 あと、前半戦終えたところで、賞金ランキング7位に山田庸平がいるんですよ。どうですか?

松井 この間、宮杯決勝で荒井がついたのに、自分にチャンスある走りができたっていうところを、俺は買っている。あー、山田庸平はグランプリに乗る気があるんだな、っていうのを強く感じた。お兄ちゃんの英明は(グランプリへの出場争いで)ずっと辛酸を嘗めてきて、その敵をとるじゃないけど、もちろんまだお兄ちゃんは終わったわけじゃないんだけど、兄の分も背負って走っているようにも見えるよね。

松本 後半戦カギを握るのがあっせんですよね。S級1班の選手はあっせんに大きく左右されますから。“ここはFI戦じゃなくて記念入れてくれよ〜”っていうね(笑)。

前田 “吉田敏洋地獄”と呼ばれるやつですね(涙)。

松本 そうそう。だから山田庸平はグレードレースにピンポイントで照準をあわせてくる戦いになるでしょうね。なんとか賞金ランキング7位のまま競輪祭を迎えるところまで行きたいですよね。

前田 兄貴・英明がなかなか成し遂げられなかったそれ(グランプリ出場)を弟が叶える。先に乗ったら兄は複雑かもしれないけど、でも弟のこと大好きだし、兄は喜ぶと思います。

松井 生まれ変わったら山田兄弟みたいな顔になりたいよね。どっちでもいいから。マスクが甘くて塩系で。

前田 松本さんはそっち系の顔だから、内藤秀久みたいなガチっとしたマスクがいいんじゃないですか?

松本 何を言い出すんですか(笑)。あとは…新田祐大はどうですか? 日本選手権の前検日落車はちょっとかわいそうでしたね。

松井 あれはかわいそうだったなぁ。新田は、あそこに勝負をかけてきたはずなんだよね。走れずじまいだったっていうのは、悲劇のヒーローとしか言いようがない。こないだ復帰したけど、なんかチグハグだったじゃん。あんなに着叩いてる新田を見たことなかったからね。慎太郎はその辺ずっとね、“新田がエースだ”ってことを言い続けて、新田を鼓舞している感じがあって。

松本 中野慎詞みたいな若手の存在が新田を刺激するでしょうし。

松井 あと、新山響平に頑張ってほしいな。平の準決の番組は寂しかったな。慎太郎と守澤太志が他地区の番手で。どっちかの二人を新山につけてあげる番組にしないと、これまで新山がやってきたこととか立場とかが報われない気がする。

前田 小原佑太と高橋晋也が新山響平の前で駆けたいと宣言してるんだけど、なかなかかみ合ってきてないからね。

松本 そうですね。新山は去年競輪祭2着でしたし。北は追い込みばかり目立ってしまっているので、自力選手の活躍っていうのを下半期は期待したいですね。

松井 GIに出てる北日本の自力選手、すごい層が厚かったのに高齢化してきちゃったんだよね。小松崎大地なんてまだまだ強いから獲ってほしいんだけどね。

前田 和田圭が発進すればいいんですよ。

松井 無茶苦茶言ってる(笑)。

座談会風景
左から松井律記者・前田睦生記者・松本直記者

つづきはnetkeirin公式アプリ(無料)でお読みいただけます。

  • iOS版 Appstore バーコード
  • Android版 googleplay バーコード

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

バックナンバーを見る

質問募集

このコラムでは、ユーザーからの質問を募集しております。
あなたからコラムニストへの「ぜひ聞きたい!」という質問をお待ちしております。

バラエティ

netkeirin取材スタッフ

Interview staff

netkeirin取材スタッフがお届けするエンタメコーナー。競輪の面白さをお伝えするため、既成概念を打ち破るコンテンツをお届けします。

閉じる

netkeirin取材スタッフコラム一覧

新着コラム

ニュース&コラムを探す

検索する
投票