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【平塚競輪・ガールズ】ガールズケイリン語り継ぎたいここだけ話

アプリ限定 2022/06/24 (金) 12:00 28

今年10周年を迎えたガールズケイリン。平塚競輪場では29日から「ALL GIRL'S 10th Anniversary」が開催。ガールズ創設前から選手たちを見つめてきた東京スポーツ・前田睦生記者が取材ノートから語り継ぎたい10のエピソードを紹介します!
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Episode 1「教官ガチ怒り」

〜その1〜

 1期生がデビューする前。平塚競輪場で本番を想定した模擬レース実習が行われた。すべては本番同様、を見据えていた。管理で受付を済ませ、レースの準備、レース…と。2012年3月に卒業後、しばらく時を置いての5月のことだった。その時、競輪学校(現・日本競輪選手養成所)を出てしばらく経っていた1期生たちの敢闘門を出る時のあいさつの声が、小さかった。集合がかかった。

「それでいいの!?」
「今まで何をやってきたの!?」

 言葉遣いは優しかったが、ともすれば競輪学校時代の緊張感を忘れかけていた1期生たちを叱咤し、大切なものは何か、を伝える人がいた。当時、まだ何も作り出していないガールズケイリン。緊張感を取り戻した1期生たちは、一気に集中力をみなぎらせ、模擬レースや実戦の流れを知ることに夢中になっていた。デビューする喜びが、責任に変わった瞬間だった。

平塚競輪場で行われた模擬レース実習

〜その2〜

 とある期の卒業記念レースの時に、内を突いたり、接触しそうになったり、と危ないレースが続いた。私も「この期は大丈夫かいな」と見ていたら、教官から集合がかかった。

「学校でそんなこと教えたか!?」
「落車があったら、どうするんだ!?」

 卒業記念レースにかける思いからの、ともすると危ない走りだったが、教官の指導を改めて受けた後、みなガールズケイリンの原点に立ち返り、国際ルールに準拠する走りを思い起こして、その中で必死に熱いレースを繰り広げていた。デビュー後の実戦で落車が起きた時に、何があるのか。選手たちのケガはもちろん、ファンや関係者がどんな思いをするか、を伝えようとする大切な教官の言葉があった。

〜番外編〜

 新人選手のデビュー場所に、教官が視察に訪れることがある。ある選手が顔見せから戻ると、教官のところへ「ヤジで、デブ、って言われたんです」と泣きついた。しかし、その教官の返しがすさまじかった。

「痩せろよ!」

 プロとしての厳しさを、ひと言で叩き込んだ瞬間だった。

Episode 2 「まじめな話」

 コロナ対策の支援で、ガールズケイリンの選手たちが力を合わせたことがある。2020年初夏の話だ。最初、関係各所に相談したが、そういうシステムがない…とのことで、一度はつぶれかかった。だが、年長者ということもあり高橋梨香を中央に据え、話し合い、手段を探し、自分たちだけで企画を立てた。

 ガールズ選手たちの持っているものをオークションに出し、それで集まったお金を支援に回す活動につなげた。誰もが何かできないか、と模索して、ガールズケイリンの存在意義を見つめていた。中でも、奥井迪、青木美優、飯田よしの(引退)は、多数集まった物品、それを発送する仕事も手ずから行った。相当な数でもあり、聞くとかなり大変そうだったが、まさに身を粉にして、この活動を支えた。

 プロスポーツ選手としての自覚と責任を、ガールズの選手全員で共有する時間だった。

コロナ対策支援のためガールズ選手の有志が集まりオークションを行った

Episode 3「スリッパを自慢する女王」

 静岡競輪場の選手宿舎は「葵会館」という名前で、「見て、あおい、って私の名前書いてるんです」と何の変哲もないスリッパを、グランプリ出走当日に自慢する女王がいた。児玉碧衣。日常ではあどけない女の子が、バンクでは豹変する。

スリッパには女王の名が!?

Episode 4 「涙を流す時」

 ガールズ選手が涙を流すシーンも時折、見る。ある時、奥井迪が涙を流した。直前の函館GIIIナイターで優勝できなかったから、ではなかった。お気に入りの青いパーカーにコーヒーをこぼしたからでもなかった。落ち込んではいたが、パーカーを指差し「この辺にこぼしたんですけど、洗濯したら大丈夫でした」と指を差して笑っていた。自分のことではなく、平塚ダービーを見ていて、だった。

 2018年の話。「脇本(雄太)さんに勝たせてあげたかったですね…。それに児玉も…。児玉のレースは携帯電話で見ていて、ゴールする前に動画が止まっちゃったんです。平塚だし、これは逃げ切ったんだろうな、と思っていたら動画が止まっちゃって…。復旧して見てみると差されていて…」。瞳には涙がにじみ、あふれ出してきていた。先行で苦しい道に挑んでいたこの2人の思いが分かるのは、当時、奥井をおいてほかになかった。

 自分のことで泣く姿より、他の選手のことで涙を流す選手をよく見かける。

お気に入りの青いパーカーを着る奥井迪

Episode 5「プロの教え」

 ある時、小林莉子が、落車を誘発したとして失格してしまった。転んだ選手に申し訳なく感じ、動揺して泣いてしまっていた。それを見た東京の先輩の長正路樹が「プロなら泣くな」と教えたそうだ。レースである限り、事故は起こり得る。泣くことは違う。そうした教えを、一つ一つガールズ選手たちは胸に叩き込み、プロとしての自覚を増していった。

Episode 6 「小林莉子、いじめ疑惑」

 高木真備(引退=106期)さんが弱かったころ。逃げてはつぶれ、敢闘門に引き上げてきては倒れ、時に泣いていた。同じ東京の後輩なので小林莉子はシューズを脱がせたり、レース後の作業を手伝ったりしていたそうだが、可憐な高木がボロボロになっているのを、小林がいじめているんじゃないか! それで泣いているんじゃないかと、男子選手に見えてしまうという珍事が続いた時期がある。「私、何も悪くないのに!マキビが全部悪いんですよ!」(莉子)

Episode 7「大久保花梨、横着を働き天罰が下る」

 いわき平競輪場の検車場には、ハードケースなどを置いておく棚が整然と備え付けられている。2段になっていて、下段はかがめば入れる高さがある。大久保花梨は下段にある自分のハードケースから何かを取り出そうとしていた。いったん外にケースを出してから作業をすればいいのに…。

 横着しとるなと見ていたら、案の定、出る時に頭を棚に強打した。結構、強く打った。最悪だったのは、大久保は誰も見ていないと思い、平然を何事もなかったかのようにふるまったところだ。指摘すると、「えっ、マジ!? 見てたんすか! 最悪!!」。ホント、ええ加減にせえよ…。

大久保花梨の身にこの後…

Episode 8「すべてが分かる“先生”」

 中村由香里は小学校の先生から、ガールズケイリンの選手に転向した。黒板を向いていても「40人、何をやっているか、全部わかってました」と背中で見ていたという。その経験から、誰が何をしているか、それがどうなるか、がよくわかったそうだ。「誰も見ていないところでゴミを拾っていたとか、トイレのスリッパを揃えていたとか、それを見ていると、そういう選手の方をレースでは気を付けてました」。単純に誰が強い、調子がいい、ではなく、人間そのものを対する相手としてみていた。

 その話を耳にした関根健太郎が「よし、今度、由香里先生がいるところでゴミを拾おう…」と企んでいたのは、ここだけの話。

Episode 9「寂しい姿」

 鈴木美教が2018年3月のガールズケイリンコレクションに初出場して、ちょうどその帰り道。松山競輪場からの帰路のことだ。私は翌日に伊東競輪の取材があったので、コレクションの取材後、そのまま伊東に向かった。鈴木は地元への帰り道となる。飛行機や電車で、ずっとやや距離を置いて、鈴木の帰る姿を見ていた。さすがにこちらも道中で飲みはしていなかったが、今思うと、チューハイの1本でも差し入れてあげれば…と思う。心細く、ビッグレースで何もできなかった後の長い帰り道。「また、頑張ってね」。家族が迎えに来ていた深夜の伊東駅の静かな光景が、忘れられない。

Episode 10「声をかける人」

 ガールズケイリンも10年の歴史を刻む。デビュー期の新人選手が、居場所なく小さくなっている姿をよく見かける。不安げな顔の新人選手に「(石井)寛子さんは気を使って声をかけてくれるんです…」という。外からは見えづらいが、先輩選手に「簡単に声をかけるなんてできないんですよ」というのが新人選手の本音。偉大な先輩選手の存在に威圧されてしまっている子の気持ちがわかるのだろう、石井寛子は柔らかく手を差し伸べている。

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