2022/07/07 (木) 12:00 7
加藤慎平の「筋肉診断」。今回は福井競輪「不死鳥杯(GIII)」に出場する稲垣裕之選手を解説する。
⚫︎稲垣裕之
公式プロフィール上では身長178cm、体重は83kg。プロフィールでは誤差も多い競輪界だが、稲垣選手の場合はイメージ通り。こういうちょっとした所にも稲垣選手の誠実さが見て取れる。
これを聞くと競輪選手は嘘付きばかりと言われそうだが、公式プロフィールに関しては『YES』だ。そもそもプロフィールは自己申告制で、自分の体重など測らない選手も多いと聞く。「う〜んこれくらいかな? まぁめんどくさいから前回と同じ体重で良いや」と言った具合だ。
これだけは声を大にして言いたいが、競輪界では身長体重を予想の重要なファクターにしてはならない!
例えば「今日は強風だ!この選手の体重は65kgとあるから切ってしまえ」と判断したとする。しかしその65kgというプロフィールはデビュー時のもの。デビューから時間が経ち、現在80kgになっているパターンも考えられる。
体重制限の無い競輪界ではプラスマイナス3kgなどは当たり前で、公式プロフィールではなく、見た目のみを判断するべき。筋密度などでも体重の増減はあるが、あまり気にしない方が良いだろう。
話が逸れまくった。稲垣選手に話を戻そう。
年齢は筆者の1つ歳上の44歳。2016年に寛仁親王牌を制覇したタイトルホルダーだ。スラリと伸びた四肢(腕、脚)は自転車にもマッチングし、先行捲りは長い年月にわたりGI戦線でも通用して来た。
横の仕事もこなすことが出来るので、近畿自力選手の番手回りも増えてきて、現在の立ち位置的には動けるマーク選手と言った状態か。しかし自力があるがゆえに、GIになると他地区の強力若手選手の相手として番組を組まれてしまうこともある。
ただし勝ち上がりさえすれば、脇本雄太選手をはじめ、古性優作選手などの番手も回れる格は充分にある。デビュー早くから毎回GIにも出場し、自力もマークもしてきた選手は村上義弘選手、稲垣選手と貴重な存在だ。この経験値を見れば、これから近畿のキーパーソンになっていくのは言うまでもない。
今回は福井記念となり、稲垣選手にとっては地元近畿地区でのレースだ。
シリーズリーダーには脇本選手、そして野原雅也選手や小森貴大選手など自力選手も豊富。稲垣選手の立ち位置的にはまずその番手をガードして行く形だろう。4日間の自在戦に注目せざる得ない。
⚫︎本レースで注目すべき選手は…?
SS級の斡旋は、宿口陽一選手、古性優作選手、松浦悠士選手だが、このシリーズには絶対的存在である脇本雄太選手がいる。
さらには彼の地元である福井記念であり、古性選手という最強の露払いが居る。逆らうことは出来ないだろう。松浦悠士選手は頭脳的で必ず何か仕掛けてくるはずだが、今回は厳しい戦いが強いられる。何も起きない可能性が高い4日間だ。
加藤慎平
Kato Shimpei
岐阜県出身。競輪学校81期生。1998年8月に名古屋競輪場でデビュー。2000年競輪祭新人王(現ヤンググランプリ)を獲得した後、2005年に全日本選抜競輪(GI)を優勝。そして同年のKEIRINグランプリ05を制覇し競輪界の頂点に立つ。そしてその年の最高殊勲選手賞(MVP)、年間賞金王、さらには月間獲得賞金最高記録(1億3000万円)を樹立。この記録は未だ抜かれておらず塗り替える事が困難な記録として燦々と輝いている。2018年、現役20年の節目で競輪選手を引退し、現在は様々な媒体で解説者・コメンテーター・コラムニストとして活躍中。自他ともに認める筋トレマニアであり、所有するトレーニング施設では競輪選手をはじめとするアスリートのパーソナルトレーニングを務める。