2022/05/16 (月) 12:00 9
5月14〜17日に函館競輪場で「開設72周年記念五稜郭杯争奪戦(GIII)」が開催されている。このシリーズはナイター開催。函館は1998年7月に「スターライトレース」として競輪のナイターを初めて行った競輪場だ。“ナイター競輪発祥の地”である。
もちろん、競輪発祥の地は小倉。 5月9〜15日の開催で毎日10億円付近の売り上げを叩き出していたボートレースのミッドナイトを行っていた大村はボートレース発祥の地。
イン粘り発祥の地や、アウト競り発祥の地、最近でいえばブーメラン発祥の地なども、歴史の中に埋もれてしまったが、どこかにあるはずだ。
個人的には「全-全」発祥の地が、私の中にある。私個人でのものなので、これは全体の歴史とは関係がない。函館と大村の開催を見ていて…に加え、坂本亮馬(37歳・福岡=90期)が松阪で久しぶりに優勝したので、なんだか思い浮かんだ次第だ。
亮馬と木暮安由(37歳・群馬=92期)は私の競輪界の恩人である。私には恩人がたくさんいるのだが、その中の2人。
2010年8月に東スポで競輪の動画企画が始まった。富山記念の時だった。東スポの動画企画発祥の地が富山であり、私の「全-全」発祥の地も富山になる。「全ー全」車券はその前も買ってはいたが、一段上のものに昇華した。
今はないが記念の2日目の優秀戦で「木暮-全-全」という予想を動画で出した。
Youtubeでの企画だが、「こんなもん予想じゃない」「ふざけるな」「ハゲてる」といった声を多数いただいた。しかし、そこから「全-全」予想を出すことは、私のライフワークとなっていった。こだわりのある、ひとつのスタイルになった。
12年前の競輪界にはYoutubeはほとんど関与していなかった。そこで東スポの競輪の動画を上げても…というところだったので、派手にやるしかない。基本姿勢は「怒られるまでやる。怒られたら、謝る」だった。幸い木暮の頑張りで大きな配当が的中したことで、「もっと何かやろう」で今につながっている。
あの時、木暮が優秀「峻峰剱賞」(しゅんぽうつるぎしょう)で1着じゃなかったら、前検日に亮馬が動画の撮影に飛び入り参加してくれなかったら…。東スポの競輪動画は早くになくなっていたとおもう。亮馬が飛び入り参加してくれた動画(Youtubeのどこかにあります)から、いろんな可能性を感じて、選手にメチャクチャな協力をお願いし続けてきた次第だ。
確かに「全-全」は“予想”ではないと思う。詳細はまたの機会にしようと思うが、「全-全」はすべてをその選手に投じて、一緒に戦う意志を示すもの。ちょっと誰かを削る、となると、そこに揺らぎと不信が生じる。それは戦う選手に失礼。何もかもを戦う選手に届けるために「全-全」が必要なのだ。3連単なので5600円。その勝負に没入するために、1週間は軽く生きていける金額を投じる。外れたらキツい、くらいでないといけない。
競輪は当たれば最高、当たってナンボの側面を持ちつつ、外れてもの一面がある。それをファンと共有していくことが、私のライフワークになっていった。
ちょっとした展開推理なら、2、3ヶ月競輪を見ていれば出せる。でも競輪の楽しみ方、特に東スポが提出するべき楽しみ方は…を追求してきた。木暮はまだ低迷の途上だが、また大きなレースで「木暮-全-全」を買いたい。暗中模索の動画企画に光を差し込んでくれた「亮馬-全-全」もまた、大きなところで買いたい。
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前田睦生
Maeda Mutuo
鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。