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佐藤慎太郎“101%のチカラ”

【佐藤慎太郎の好転】“イメージ通り”は“手応え”という名の特効薬になる

2025/07/30 (水) 18:00 20

 全国300万人の慎太郎ファン、netkeirin読者のみなさん、夏バテに負けずに過ごしていますか? 佐藤慎太郎です。いよいよ8月8日に佐藤慎太郎公式ファンブック『全力でやるよ!ガハハ!』が発売される。一足先に内容を見たが、今回は写真集のような感じになっていて少々気恥ずかしい。

 ただ、全日本選抜を優勝した時の写真をはじめ、レアな写真が多く、個人的には懐かしい気持ちになるデキだったな。みなさんにも、ぜひ手に取って欲しい。さて、冒頭から宣伝をしたが、今月のコラムも全力で書き殴って行くとしようか。

2節8走で3連対率87.5%!怒涛の巻き返しを見せる佐藤慎太郎(撮影:北山宏一)

“兆し”とか“気配”ではない

 今年5月、「無理矢理にでもトレーニング強度を戻す」と決意した。ああだこうだ考えていても、負ければ7、8時間くらいしか眠れなくなるほど悔しいわけでさ。それから約2ヶ月、ケガをした部分も含めて、身体はトレーニングに耐えている。成果というのはすぐには現れない。筋肉や神経に成果が反映するまでには、タイムラグが生じるもの。6月はまだまだ復調気配を感じる程度だった。

 だが、ここにきて最近、ようやく通常のトレーニングメニューに戻した成果が随所に見られるようになってきた。1着も獲れるようになったし、確定板を逃さない走りもできるようになってきた(※編集部注…直近2節は8本中7本で確定板、1着も3本)。

 低迷中、不甲斐ない走りをしても、負けたレースの後でも声を張り上げて応援してくれた人達がいた。ケガ人を卒業してもすぐには結果が出ない。そんな歯がゆさの中で、大いに励ましていただいた。おかげで日々のキツい練習にも耐えられる。もう今は復調の兆しとか気配とかの段階ではない。順調に状態を上げているよ。

“手応え”こそ最高の特効薬

1走1走に思いを込めて(撮影:北山宏一)

 競輪はメンタルスポーツなんて表現されることがある。下降線を辿るとき、それが年齢による衰えなのか、ケガの影響なのかと原因を探る。今年なんてダブルで食らってるわけだから、判断に迷うこともあった。しかもレースのスピード域も高くなっているし、周囲のレベルも上がっている。下降線を辿る原因を探るのも一苦労だよね。

 だが、何が原因だろうが、それに抗っていくメンタルがなくては始まらない。大ケガをした後は嫌でも不安材料に目を向けるから、どうしても整ったメンタルが必要になる。オレの場合、「手応えのある走り」が一番の特効薬になる。

 競輪界では「不調なときは1着こそ良薬になる」とよく言われている。単純に1着という結果に対して気分が乗るってのもあるけど、1着というのは内容が伴っている証でもあるんだよね。

 身体の反応速度、踏み込むタイミング、コースの取り方など、自分がイメージした動きと実際の動きにギャップがなく、心と体が完全にマッチした時に“手応え”が発生する。小松島記念では、それがあった。

2着でも良薬に、ライバルの存在も良薬に

 小松島は連勝で勝ち上がり、迎えた準決勝の最終直線。このポイントが特に印象に残っている。自分の走りに納得感があった。内に古性優作、外に小倉竜二という位置関係で、「中を割るか」という判断ができた走り。中割を試みる時は、前を走る選手と自分に「スピード差を生み出せる自信」がある時だ。ためらわずに割って入って行けた感覚は久々で、「もしかしたら戻ってきたかもしれないな」と思った。結果は2着だったが、手応えを感じるに十分、良い薬になった。

小倉竜二(黄5番車)と激しくぶつかり合いながらゴール線へ(写真提供:チャリ・ロト)

 また、小松島では小倉竜二と会話する機会があった。小倉も落車に苦労しているが、オレのケガを心配してくれたわけよ。オレと小倉は同い年。ご存知の通り、自力選手全盛の時代でオレと同じく追い込み屋として戦っている。小倉と話していると「もう少し諦めずに頑張るか」みたいなメッセージを受け取ることができる。

 言葉自体はそんなことを発していないのだけど、「お互いもう少し頑張ろうぜ」みたいなエールを交換できるというか。もちろん敵に他ならない存在だし、小倉みたいな追い込み屋が好走しているところを目にすれば、俄然刺激も入るし、負けてられない気持ちも高ぶる。これもまた良薬になるんだよね。

第一線で存在感を示し続ける小倉竜二(写真提供:チャリ・ロト)

良いからといって勝てる保証はない

 小松島が終わり、コンディションが上向きになっていることを確認できたし、サマーナイトには「展開が向けば勝ち切れるぞ」という気持ちでシリーズ入りした。初日から小松島で確定板を共にした好調・壱道との番組。これには気合が入ったよ。「壱道をつけてくれるとは番組編成の方も佐藤慎太郎に価値付けしてくれている」と嬉しくなった。

 だが、状態が良くても勝ち上がりの保証などないのが競輪。逆に、状態が悪くても勝ち切れることもある。初日のレースはまさにそんな感じで、結果をつかみ取るまでに至らなかった。気合とは裏腹にあえなく負け戦まわりにはなってしまったが、気持ちを切り替えて2日目に臨んだ。

良い時も悪い時も気持ちを切らすことはできない(撮影:北山宏一)

 悔しさはあるものの、サマーナイトはシリーズ中すべてに手応えを感じる場面がたくさんあった。最終日は最終バック8番手から2着まで行けたが、結果よりも自分のスタイルを貫けた点に手応えを感じた。

 最後まで1着を諦めずにゴールへ向かっていくレースができたし、こういう走りが次に繋がると信じている。「最後まで諦めない」、これがオレの持ち味のひとつだからな。どの位置からでも勝利から目を離さずに突っ込んでいきたい。

最終バック8番手、4角で5番手からの直線強襲で2着奪取!会場がどよめいた(撮影:北山宏一)

 また、シリーズを北日本の連係で戦えたことも収穫になったな。壱道、櫻井祐太郎、小原佑太、飯野祐太と連係し、それぞれの選手たちと経験を積めたわけだ。前の選手はもっとこうしたらいいんじゃないか? 後ろの選手はもっとこうするべきだよな? という問いが見つかるし、グレードでの連係実績は大きな糧になる。

一戦一戦がラインの力を最大化するための糧になる(撮影:北山宏一)

 オレの課題は「もっと脚力をつける」だな。前の選手が自分のタイミングで気兼ねなく走るためには、後ろの脚力向上は必須条件になる。自分の状態も大切だし、ライン力も大切。今の競輪は脚力がないと仕事もさせてもらえないからね。ここは痛感しているので、トレーニングへの熱に変換している。

北日本地区で開催するオールスター競輪

 そんな感じでサマーナイトを終えたわけだが、玉野では北日本の打ち上げがあった。北日本には飯野祐太と新田祐大という酒豪のバケモノがいるんだが、「店の酒がなくなるんじゃないか?」というペースで飲み干していく。ハイペースかつロングランってわけよ。

 彼らと目を合わせたらいけないんだが、目が合っちまって(笑)。「慎太郎さん、いつものやってくださいよ!」なんて振られる始末で、オレはマッコリをがぶ飲みする羽目になっちまった。同地区の選手たちとの息抜きの時間は面白いもので、良い時間になった。

 だが、競輪選手もみなさんと一緒だ(笑)。一次会でリラックスムードだったが、二次会では仕事の話にもなるし、真剣モードの温度感が漂う。打ち上げの締めはピリッとしたぜ。北日本も黙ってられねえぞ、って感じでね。「北日本からGI優勝者を!」という強い意思疎通と共に終了した。

 オレたちにとって次のオールスターは地元地区。オレを含め、北日本の選手たち活躍して、このシリーズを盛り上げたい。簡単なことではないが、決勝を目指して、ぶち上げていこうと思う。投票してくれた人達、足を運んでくれる人達に恥じぬ走りを披露したい。

函館オールスターはオリオン賞レースからぶち上げていく(写真提供:チャリ・ロト)

さいごに

 それでは今月はここまでにしよう。最後になるが、玉野競輪に足を運んでくれたお客さんたちは最高だった。玉野って風呂からスタンドが見えるんだよ。風呂から見ても大熱狂で盛り上がっているのがわかったよ(笑)。ものすごく競輪が盛り上がっているからさ、嬉しくなったね。

 レースではオレにも多くの声援が届いた。毎レース背中を押されたよ。最近に始まったことじゃないが、最近は特にレースが終わった時にまじまじとスタンドを見たい衝動に駆られている。どんな人たちが声を張り上げてオレの背中を押してくれているのかを見たくなるんだよな。

連日の声援に奮い立つ気持ちが湧く(撮影:北山宏一)

 負けてしまえば落胆してバンクを出ていくから、その衝動も忘れちまうし、まじまじとお客さんの顔を見ることも叶わない。だから納得のいく走りで勝利して、全国300万人の慎太郎ファンの顔を見られるようにしよう。夏の函館で会おうぜ! ガハハ!

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佐藤慎太郎

Shintaro Sato

福島県東白川郡塙町出身。日本競輪学校第78期卒。1996年8月いわき平競輪場でレースデビュー、初勝利を飾る。2003年の全日本選抜競輪で優勝し、2004年開催のすべてのGIレースで決勝に進出している。選手生命に関わる怪我を経験するも、克服し、現在に至るまで長期に渡り、競輪界の第一線で活躍し続けている。2019年、立川競輪場で開催されたKEIRINグランプリ2019で優勝。新田祐大の番手から直線強襲し、右手を空に掲げた。絶対強者でありながら、親しみやすいコメントが多く、ユーモラスな表現で常にファンを楽しませている。SNSでの発信では語尾に「ガハハ!」の決まり文句を使用することが多く、ファンの間で愛されている。麻雀とラーメンをこよなく愛する筋肉界隈のナイスミドルであり、本人の決め台詞「限界?気のせいだよ!」の言葉の意味そのままに自身の志した競輪道を突き進む。

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