2022/04/26 (火) 12:00 3
現役時代はトップ選手として長く活躍し、現在は評論家として活動する鈴木誠氏の競輪予想コラム。今回は武雄競輪場で開催されている大楠賞争奪戦の決勝レース展望です。
【大楠賞争奪戦】が行われている武雄競輪場は、周りを山に囲まれており、自然も豊かな競輪場です。
そういえば現役だった頃に、敷地内で後輩の選手が自然薯らしきものを見つけました。数日をかけて慎重に掘り起こしてみると、やはり自然薯で、その日の夜にみんなで食べたことを思い出します。
のどかな環境もあってかウォーミングアップも心地よく、落ち着いた気持ちでレースに臨むこともできました。ただ、国内の400バンクでは最も長い見なし直線(64.4М)もあってか、先行タイプが苦戦を強いられるのは、今も昔も変わりありません。
決勝メンバーを見ても、先行タイプは関東ラインの吉田選手1人だけ。その関東ラインですが、吉田選手の後ろが平原選手。以下、諸橋選手-木暮選手と4車での並びとなりました。
他のラインは稲川選手-村上選手で並んだ近畿ライン、櫻井選手-佐藤選手で並んだ北日本ラインといずれも2車で、決勝メンバーでは唯一の九州地区の大坪選手は単騎となります。
北日本ラインの先頭を任された櫻井選手は、最近では追込、もしくは捲りのレースも多くなっていますが、過去には先行も見せていました。
今回は佐藤選手に任されただけでなく、4車の先頭を走る吉田選手を捲るのは難しいのではないかとも思うので、この決勝ではかまし先行ぐらいはあるのではないかとも見ています。
それは村上選手に任された稲川選手も一緒です。準決勝では捲り追込で届いたように、今大会は調子の良さこそ目立ちますが、それでも吉田選手を捲りきるのは至難の業です。ひょっとしたら、平原選手の位置を競りに行くこともあるかもしれません。
となると吉田選手としては、自分のレースがしやすいメンバー構成になったのではと思います。先行体制を取った時に他のラインが仕掛けていったとしても、後ろの関東ラインの選手たちが、切り替える可能性はほぼ無いからです。
櫻井選手が先行した場合だと3番手か、単騎の大坪選手を挟んでの4番手。この位置で今の吉田選手の出来ならば、一気に捲りきってしまえると思います。
吉田選手がすんなりレースが運べるようだと、後ろの平原選手でさえ交わし切るのは大変かもしれません。本命は吉田に付けたいと思いますし、対抗は平原で考えています。
平原選手は脚力もありますし、競られても負けることはないかと思いますが、もし稲川選手が番手を取り切れるようだと、ゴール前で吉田選手と一騎打ちとなる展開も見えてきます。また、櫻井選手のかまし先行がはまった時には、佐藤選手の一発も考えられます。
準決勝では見事なコース取りで優勝。3連単で97万8330円という、高配当の立役者となったのが村上選手です。ファンからの声援も大きい選手でもあり、この決勝でも稲川選手の力を借りて、車券に絡むような走りを見せてくれたらと期待をしています。
鈴木誠
千葉県市原市出身。日本競輪学校第55期卒。千葉経大付属高校の頃から競輪に没頭し、吉井秀仁氏に師事。現役時代はすべての戦法を完璧にこなし、「本物の自在型選手」と評されるほど多彩なストロングポイントを武器に、引退するまで長きにわたってトップ選手として君臨した。現役時代は通算3058戦665勝、優勝109回(うちGIは競輪祭新人王を含め4回、GP1回)、年間賞金王1回、通算獲得賞金は17億を超える。18年7月に、ケガのため惜しまれつつ引退。引退後は選手経験を生かし、解説者として活躍。スピードチャンネルなどの番組にも出演している。