207

恋して競輪ハンター

2021/10/22 (金) 10:09

恋して競輪ハンター

恋して競輪ハンター 95 Hunting

最近「番手捲り」「二段駆け」と呼ばれる走りをよく見かけます。
前回のコラムでも書いた9月の松戸F1ナイターS級決勝。そして、そのあとの10月の松戸F1ナイターでもS級決勝は関東の2段駆け。長野の菊池岳仁選手が駆けて、番手から茨城の吉田拓矢選手が出ての優勝でした。また、先日久留米競輪場で行われた「火の国杯争奪戦in久留米G3」の決勝も記憶に新しいところ。地元・熊本勢を連れた福岡の北津留翼選手のつっぱり先行から、最終バック過ぎに、熊本の嘉永泰斗選手が番手から捲りを打って、別線の追い込みを振り切って優勝しました。


火の国杯争奪戦in久留米の決勝。九州ラインがレースの主導権を握る

「番手捲り」「2段駆け」が想像できるレースは、私にとって買いやすいレースです。当たるかどうかはまた別ですが、展開が想像しやすく、その番手捲りが成功するか否かで狙いを定めることができますよね。逆に番手捲りのレースにはならなそうなライン構成だった平塚記念の決勝は、誰からも狙えて、買い目が絞れず苦戦しました。
限られた投票資金の中で的中を目指し、かつ儲けようと思うと、2段駆けのレースは勝負しやすいので、私は好きです。しかし、この番手捲り、賛否があるのはご存じの通り。駆けた選手はだいたい末着になることが多いので、みんなが1着目指してるという勝負の大前提においては、確かに駆けた選手の競走には疑問符が浮かびます。
私自身もかつては納得いかない気持ちになったこともありました。競輪を始めて、好きな選手ができてきた頃のこと。応援車券を買っていたら、その選手が駆けたものの、番手から迷いなく出られた結果、好きな選手は末着。何で捨てるの! 番手ってヨコの仕事したりするんでしょう、何で守ってくれないのよー!と、泣きたい気持ちになりました。悔しくて車券で抵抗し、番手捲りに抗おうとしても、同じレースを走る選手が抵抗してくれない限り、賭けたお金はチリと消えるだけ。負けた痛みと共に、そういうレースもあるんだなと受け入れ、今では納得して買っています。
競輪の魅力を伝える立場になって、これを初心者の人にどう伝えたらいいのかは、いつまで経っても難しいものです。いまだにベストな伝え方は見つけられていません。選手心理や、競輪の持つ地域性や先輩後輩の関係値、それぞれの脚力差、それらを踏まえた展開予想など、色んな競輪の魅力がギュギュッと詰まっているから伝えたいことはたくさんあります。しかし、それを聞いて理解してくれるのか、また楽しんでくれるのかは人によって変わるものです。そして何より怖いことが、番手捲りも絶対ではないこと。失敗することはもちろん、駆けて末着になる可能性の高かった選手が展開によっては着に絡んだり、なんなら勝つことだってあります。勝負の世界はゴールするまで何が起こるか分かりません。過度にレースを決めつけて伝えることは、勝負事の大前提を無視していますよね。

火の国杯争奪戦in久留米のレース後のレポートを見ていた時、九州3人の写真を見ました。優勝した嘉永選手はもちろん、3番手を固めた瓜生選手、そして駆けて9着だった北津留選手も笑顔でした。そんな選手たちの表情を見ると、やっぱりこれも競輪の魅力として伝えたいと思います。また、「これからは九州の先輩に恩返しができるように、引っ張っていきたいです!」と嘉永選手がコメントしたように、このレースから始まる新たなドラマを多くの人に楽しんでもらいたい。そのためにはどう伝えたらいいのか。これからも愛をもって競輪の魅力を伝えられるよう、私も努力を続けたいと思いました。


「これからは九州の先輩達を引っ張っていきたい」とコメントした嘉永泰斗選手

***************
【最近のコラムはこちら】
恋して競輪ハンター=94Hunting
恋して競輪ハンター=93Hunting
恋して競輪ハンター=92Hunting
恋して競輪ハンター=91Hunting
恋して競輪ハンター=90Hunting
恋して競輪ハンター=89Hunting

【略歴】

木三原さくら(きみはら・さくら)

1989年3月28日生 岐阜県出身

2013年夏に松戸競輪場で
ニコニコ生放送チャリチャンのアシスタントとして競輪デビュー
以降、松戸競輪や平塚競輪のF1、F2を中心に
競輪を自腹購入しながら学んでいく
番組内では「競輪狂」と、呼ばれることもあるほど競輪にドはまり
好きな選手のタイプは徹底先行
好きな買い方は初手から展開を考えて、1着固定のフォーメーション
“おいしいワイド”を探すことも楽しみにしている

恋して競輪ハンター

木三原さくら

2013年夏に松戸競輪場で ニコニコ生放送チャリチャンのアシスタントとして競輪デビュー。 以降、松戸競輪や平塚競輪のF1、F2を中心に競輪を自腹購入しながら学んでいく。 番組内では「競輪狂」と、呼ばれることもあるほど競輪にドはまり。 好きな選手のタイプは徹底先行! 好きな買い方は初手から展開を考えて、1着固定のフォーメーション。 “おいしいワイド”を探すことも楽しみにしている。

閉じる

木三原さくらコラム一覧

新着コラム一覧