2021/01/23 (土) 12:00 5
最初に、実は上記の写真はあまり見られない光景だ。
レース直後の選手が、検車場まで自転車を手に、ヘルメット、ユニフォーム姿のまま帰ってくることはない。ただ、現在は、これが現実…。
1月17〜19日の高知競輪は開催中止。また伊東、岐阜はレース数を減らすなどして開催が執り行なわれた。新型コロナウイルスの感染者、そして濃厚接触者、疑いの広がりという点で選手や関係者の安全確保が見通せない事態に陥ってしまっていた。
1月9〜12日の和歌山競輪場で行われた「岸和田キング争覇戦in和歌山」では、参加していた多くの選手たちに陽性と診断が出た。この和歌山参加選手の中で、次の開催に参加するには前検日の前日の指定時間までにPCR検査を受け、陰性を報告しなければならない。20日前検日の取手競輪もそうした措置の上、現場ではより一層感染予防に踏み込んで開催を行った。
競輪では、レースを終えた選手は疲れ切っているため、同県や同地区の選手などが自転車の受け取りに行く。ヘルメットをもらい、ユニフォームは所定の場所に返す。そして、その自転車をクールダウンのためのローラーの場所に置いてくる。走り終えた選手は、息を整え、身支度をしてダウンを始める。
だが、取手ではその受け取りを禁止。息が上がり、マスクをしていない状態での接触を避けている。走ったばかりの選手には過酷だが、やむを得ない。バンクの中から、地下道を抜け、検車場までふらふらのまま引き揚げてこないといけない。しかし、選手はみな「こういう時期なんで。死にそうですけど。(検車場へ戻ってくることが)レースよりきついっす(笑)。」と笑いながらも、当然、協力している。選手たちは何が大事なのかは、よくわかっている。
概定番組と呼ばれる、勝ち上がりのシステムがある。レースによって1〜3着までが準決へ、4〜6着は選抜へ、など細かい規定がある。競輪の基本として3着までが上位競走へ上げるというのがある。9車立て、3人ラインを組むケースが多いと「自力ー番手ー3番手」の3人でそれぞれの役割を果たし、上位独占しみなで勝ち上がることが理想だった。
現在、7車立てのレースが増え、3着は7レース中2人(競走得点上位など)が勝ち上がれるといった規定のレースがある。ライン3人で頑張り、1・2・3着を占めても3着の選手は漏れる可能性がある。
取手初日S級予選8Rの望月一成(24歳・静岡=111期)がまさにそれで、2周先行で頑張り、南関ライン上位独占に導きながら、3着で競走得点が低いため、準決に勝ち上がれなかった。だがそんな望月が口にしたのは「残れる力をつければいいだけ、っていうか、今は開催してくれて、走らせてもらえるだけでありがたいです。頑張るだけ」というセリフだった。
1月22日前検日の開催場から、前検日に抗原検査を受けることで、状況を把握することも行われ始めた。選手たちは日々の練習でも、細かく距離を取るなど気を使っているという。開催が続けられるために、やれることはすべてやる。
医務室への入室や、宅配便の注文など、並ぶときは適切な距離を取り、大声での会話も控える。もちろんマスクは常時着用。非常に細かい事でも、開催を無事に行うため、また次の開催につなげるために各自やるべきことを徹底している。
究極は一定期間の開催中止かもしれないが、そうではなく、感染拡大を阻止し、開催を続けることが競輪界の社会への責務。さまざまな対策が打たれ、開催を行うために動いている。昨年のような開催ごとのレースプログラムの変更も、必要に応じて決めればいい。迅速に、今できることをやっていくのみだ。
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前田睦生
Maeda Mutuo
鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。