2022/01/04 (火) 12:00 14
静岡競輪場で開催された「KEIRINグランプリ2021(GP)」は2021年を著しい興奮で締めた。こういうストーリーだったか…と誰しもの心が震えていた。優勝した古性優作(30歳・大阪=100期)の背中をいの一番にとらえていたのは平原康多(39歳・埼玉=87期)だった。その平原は、2着。
1月3日は立川競輪の「開設70周年記念鳳凰賞典レース(GIII)」の前検日だ。もう何年となく、平原の一年はここから始まる。「いや〜きつい日程なんすけどね〜」と嘆きつつも、今年もここにいることをかみしめているようだった。
しかし、嘆いていた。「オレの性格は脇役に向いているんですよ〜」。
グランプリの最終BSからしばらく…。平原の動きは、やはり平原だった。
「自分もあの上を一緒に行くわけにはいかないし…」。古性がまくっていった後、懸命に追いかける宿口陽一(37歳・埼玉=91期)の姿があった。「陽一、頑張れ! 」。平原の心にはこの言葉があったはず。宿口がグランプリで戦っている時間を尊重した。
だから…ライン。
「3人が3人、力を出し切っての負け。清々しい負け、です」。
平原のこの言葉に嘘はない。グランプリを戦い抜いた後の表情には微塵の曇りもない。今平原は“脇役”を目指す道を歩いているが、鍵を握っているのは平原ではない。関東の後輩たち、だ。
平原は昨年のグランプリを前に「3月の大垣記念だったかな…。吉田が関東を引っ張っていってほしい、ということをインタビューで話していたんですけど、本当にそうなってきてくれたのがうれしい」とつぶやいた。手塩にかけて育ててきた、いや、結構厳しく指導してきたともいっていい。
レースの前後、いろんなことを身振り手振りをまじえて平原が吉田拓矢(26歳・茨城=107期)と話しているシーンはよく見た。「まだ理解できない部分もあった」と吉田は振り返るが、その経験は血となり肉となり、関東の大地となっていった。吉田は2月に地元の全日本選抜競輪(GI)を控える身。この大きな立川記念の舞台で、“吉田こそ優勝にふさわしい”と思わせることができるか。
また坂井洋(26歳・栃木=115期)も3月に地元宇都宮で「ウィナーズカップ(GII)」がある。「オレは全然、まだまだです」と謙遜するが、その位置に上がることが求められている。決勝で平原、吉田と3人乗って、平原を脇役にしてあげられるのか。ハードルは高いが、もう大事な一年は始まっている。
守澤太志(36歳・秋田=96期)はさすがに一旦、小休止。平原、吉田と清水裕友(27歳・山口=105期)のS班3人だが、新田祐大(35歳・福島=90期)と浅井康太(37歳・三重=90期)がいて、立川記念(鳳凰賞典レース)らしい豪華な顔ぶれだ。
新田は昨年12月に伊東記念(椿賞争奪戦)を勝った後、「来年は番組に鍛えられると思います」と話した。S班中心のメンバー構成がやはり番組の肝。そこに1班の身としては当てられる、というわけだ。浅井も一昨年S班から陥落した時に「S班に挑戦すること」を強調していた。
S班の重みを知るからこそ、この2人は怖い。浅井は昨年いろんなことを考えていたようだが「新年、またいつものように」と笑顔で前を向いていた。競輪選手ならずとも、誰しも苦しみを抱えるもの。再進撃に期待しよう。
今シリーズは「立川プロスポーツデー」と銘打たれ、立川市にあるバスケットボールやサッカー、ボクシングといったスポーツクラブと一体となり、4〜7日の4日間、さまざまなイベントが催される。
オミクロン株はまったくもって脅威だが、感染対策を行い、今できること、力を合わせることが立川で表現される。ぜひ、立川の力を、競輪選手の力を感じに、本場へご来場ください! もちろん、本場に来られないという方はネット、電話投票でバンバン車券を買ってください!
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前田睦生
Maeda Mutuo
鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。