アプリ限定 2021/12/26 (日) 21:00 7
日々熱い戦いを繰り広げているガールズケイリンの選手たち。競輪記者歴12年の松本直(まつもとすぐる)記者がガールズ選手の魅力をたっぷりお届けします。
お待たせしました! 本年度もガールズグランプリ2021出場選手を全2回に渡ってご紹介します。今回は「西日本編」福岡支部の児玉碧衣選手、小林優香選手、尾方真生選手、京都支部の坂口楓華選手を紹介していきます。
女王・児玉碧衣、4連覇へ視界は良好だ。今年は波瀾(はらん)万丈の1年だった。昨年平塚でガールズグランプリ3連覇を達成。年明けから1着を量産。3月にはコレクション(松阪)優勝と通常モードだったが、5月のコレクション(京王閣)で4着に敗れると、リズムが急変。腰痛も重なり6月前半はあっせんを2場所欠場。
モヤモヤした状態で臨んだ夏のビッグレースガールズケイリンフェスティバルでは嫌な予感が的中。初日の予選1から妹弟子の尾方真生との対戦。最終ホームからカマシ先行で仕掛けて出たが、番手に入った尾方に番手まくりを打たれて7着敗退。予選2は最終バック4車並走の一番外を踏み上げるも、いつもの力強さがなく4着。デビュー以来、初めて決勝進出を逃してしまった。最終日の選抜戦も普段なら行かない内に進路をとって2着。ちぐはぐなまま3日間を終えてしまった。
しかしこのまま終わらないのが女王・児玉。函館直後に静岡の追加を受けるときっちり完全優勝。自信を取り戻すと、一気に全開モードへ突入。ファン投票1位で選ばれた8月のコレクション(いわき平)は自慢のダッシュ力を遺憾なく発揮。久しぶりの対戦となった姉弟子小林優香に影も踏まさぬまくりで快勝。以降はノンストップ。積み重ねた1着は34。ガールズケイリン連勝記録も一気に塗り替えた。グランプリ4連覇は前人未踏の大記録。たとえ児玉包囲網を引かれても、豪快な仕掛けを決めて大記録を達成するつもりだ。
ガールズケイリンの看板レーサーがグランプリに戻ってきた。小林優香はここ数年、東京五輪へ心血を全て注いできた。職業であるガールズケイリンを走りたい気持ちを内に秘め、一生に一度の母国での五輪開催に全神経を集中させてきた。新型コロナウイルスの影響で大会が1年延期。メンタルを保つに相当苦労したはずだ。1年遅れで開催された東京オリンピックで結果を残すことはできなかったが、そこまでに積み重ねた努力は決して無駄にはならない。競輪ファンは小林の挑戦を後押しした。
五輪直後で参加できるか不確定な中で行われたガールズケイリン総選挙でも小林に5187票が入った。ファン投票4位の位置はファンがガールズケイリンに小林優香が必要だと思っている証だ。小林もその期待に応えるように、8月の復帰後は1着を量産した。
優勝するしかグランプリに出場できない追い込まれた状況で開催されたグランプリトライアルでもきっちり力を出し切って優勝。この強さをファンは見たかったのだ。ガールズグランプリは2年ぶり3回目の挑戦。初登場だった14年岸和田は3着。人目もはばからず悔し涙を流した。翌15年京王閣は圧倒的なパフォーマンスを披露して優勝。2年前の19年立川は同門の後輩・児玉碧衣に敗れて2着。このままでは終われないはずだ。注目された自転車競技の進退についても、パリ五輪挑戦を表明した。児玉碧衣の4連覇を止めるのは小林優香しかいない。
ガールズケイリン2年目の尾方真生はガールズグランプリ初登場。学生時代は陸上短距離競技で活躍。自転車競技歴が短い中でも、日本競輪選手養成所118期の卒業記念レースを優勝。藤田剣次一門の秘密兵器として2020年5月に小倉でデビュー。非凡な才能を発揮し、デビュー当時から1着は多かったが、同門の先輩・児玉碧衣の助言で先行を増やすと、一気に素質が開花。出し惜しみすることなくしっかり仕掛けるレースが増えると成績は安定。今年は88走して1着66回。優勝は14回。賞金ランキング6位で初めてのグランプリ出場権を手にした。レースを読む力はまだまだ勉強中だが、先行力なら7人中1番。グランプリ初参戦で失うものは何もない。尾方らしい積極的なレース運びで、風を切っていくつもりだろう。
努力は必ず報われる。坂口楓華はコツコツ地道に積み上げてグランプリ出場権をつかみ取った。学生時代は姉・坂口聖香(116期・引退)とともにロードレースで活躍。高校卒業後は112期として日本競輪学校(現・日本競輪選手養成所)に入学。在校成績8位と目立つ存在ではなかったが、デビューの17年が9勝、18年が11勝(優勝1回)、19年が15勝(優勝2回)、20年が43勝(優勝10回)、21年が55勝(優勝12回)と一歩一歩前進。今年はついに賞金ランキング7位でグランプリの出場権を手にした。10月大宮、11月小倉と落車が続いたが、12月の地元向日町を走って完全優勝。悪い流れは自分の力で断ち切った。負けず嫌いの気持ちを前面に押し出して、初登場にグランプリでも存在感を見せてくれるはずだ。
松本直
千葉県出身。2008年日刊プロスポーツ新聞社に入社。競輪専門紙「赤競」の記者となり、主に京王閣開催を担当。2014年からデイリースポーツへ。現在は関東、南関東を主戦場に現場を徹底取材し、選手の魅力とともに競輪の面白さを発信し続けている。