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前田睦生の感情移入

【九十九島賞争奪戦】新山響平と吉田拓矢、切磋琢磨したライバルに今エールを送る

2021/12/22 (水) 12:00 10

終生のライバル新山響平(右)と吉田拓矢

新山響平と吉田拓矢の道のり

 佐世保競輪場で12月23〜26日、「開設71周年記念 九十九島賞争奪戦(GIII)」が開催される。昨年大会決勝、新山響平(28歳・青森=107期)が逃げ、吉田拓矢(26歳・茨城=107期)がまくり追い込んで記念初優勝を飾った。

 吉田は「勝てたけど、新山さんがレースを作っていた」と振り返った。

 11月小倉の競輪祭決勝も同じ状況で、さらに吉田のコメントも同じ。だが新山は「もう、タクヤに追い付けないような…」と口にした。

 “試合に勝って勝負に負けた”。
 どちらが真の勝者か、走った選手にしか分からない感情があるだろう。

 因縁の始まりは2015年3月に行われた107期の卒業記念レース決勝。在校時から注目を集めた2人。吉田はゴールデンキャップを獲得し、新山は腰痛に苦しんだ時期もあったが、圧倒的なエースだった。そして卒業記念レースを制したのは新山。

 …しかし、共同インタビューを待つ廊下で頭を抱えていたシーンが印象的だった。

「いつも殴り合っています(笑)」

卒記優勝直後の新山響平は頭を抱えていた

 卒業記念レースを勝ったが笑顔はなかった新山に対し、逃げた吉田は清々しい表情だった。「力を出し切れたので納得。ライバルの新山さんが勝ったことは、自分のことのようにうれしい」というコメントを残している。2016年4月に高知競輪場で行われたルーキーチャンピオンレースは、番手まくりの吉田を新山がまくり追い込んで優勝。とにかく、2人はひたすらに競い合ってきた。

 競輪祭の準決後、2人でいる時に「本当の仲は? 」と聞くと、「いつも殴り合っています」と笑っていた。

 新山は日大に入学後、中退して選手になったので、高卒ですぐに入校した吉田より2つ年上。バチバチのライバルだが、デビュー後の切磋琢磨はお互いを慕っているからこそ。

 吉田はGIを制し、KEIRINグランプリへ。新山はパリ五輪も目指しながらの戦い。自身が結果を出すことも大事だし、吉田がグランプリで躍動することも励みになるだろう。2人の時間はまだまだ続く…。

伊東記念決勝も“2人”の時間があった

深谷知広は今年最終戦

 もう一つの“2人”の話しも紹介する。

 12月19日に最終日を行った伊東競輪「開設71周年記念 椿賞争奪戦(GIII)」の決勝は新田祐大(35歳・福島=90期)と深谷知広(31歳・静岡=96期)の時間があった。深谷の猛追をこらえて優勝をつかんだ新田。ゴール後、軽く手を合わせる瞬間は感動的だった。

 競輪はほとんどの人に見られていない…。過酷だが、プロ野球やサッカー、プロレス、芸能に比べると悪夢のような現実がある。新田と深谷はその現実を直視し、東京五輪で結果を残すことが、競輪界のラストチャンスと思って戦ってきた。

 多くの国際大会で結果を出したが、東京五輪では新田は勝てず、深谷は出場もかなわなかった。深谷は東スポで書いてきた自身のコラムで、その挑戦は「失敗に終わった」とすら書いた。喪失感にさいなまれる中、今、新たな挑戦へと道を探っている。2021年の最終戦になる今回、深谷の思いが爆発する走りも見つめてほしい。

レインボーカップチャレンジファイナル

窪木一茂にも注目だ

 今回の最終日(26日)にはレインボーカップチャレンジファイナルが争われる。オール119期のバトル。9連勝する力を持ち合わせながら、どうにもたどり着けなかった9人でもある。

 今ここでどんな走りを見せるのか。注目はリオ五輪に出場した窪木一茂(32歳・福島=119期)だ。東京五輪には出場できずも、また前を向いてパリ五輪を目指している。そのためにも、S級にいることがプラスになると考えている。熱く冷静な窪木の攻めが、佐世保の走路ではじける。


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前田睦生

Maeda Mutuo

鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。

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