2021/12/15 (水) 12:00 9
伊東競輪場で12月16〜19日、「開設71周年記念椿賞争奪戦(GIII)」が開催される。12月の風物詩で、寒く、静かなバンクで激しく熱いレースが繰り広げられる。KEIRINグランプリが近いため、出場予定選手の参加はほぼないが、地元戦に燃える選手、期末で勝負駆けの選手といつも話題は多い。
今回、地元静岡の選手として深谷知広(31歳・静岡=96期)が出場する。結果が求められるシリーズで、注目度も高い。深谷は9月に静岡FIのあっせんも入っていた。しかし直前の小田原記念(北条早雲杯争奪戦)で落車し、ケガをしたために無念の欠場となってしまった。その後は11月の当地、伊東FI(ジャパンカップ×HPCJC)で久しぶりの優勝を手にした。
深谷は今年静岡に移籍。静岡での新たな歴史を作っていく一年目が終わる。かける思いは格別だ。また新田祐大(35歳・福島=90期)も特別な思いで走るだろう。ナショナルチームに所属して、伊豆を拠点にしてきたので、伊東は当然近所。静岡の、近所の人たちのためにも盛り上げたいと思っている。何より、伊東は自転車競技を支える全国随一の場だ。
深谷が優勝したFI開催は「ジャパンカップ×HPCJC」と銘打たれ、収益の一部が自転車競技の支援に充てられた。トラック支援や協賛競輪は選手賞金もカットされるが、この開催はただ売り上げから資金充当。“自転車の聖地・伊豆”の心意気があふれるものだった。
その意味でも深谷と新田が伊東競輪場で…と思うと熱くならざるを得ない。競輪も自転車競技もまだまだこれからの盛り上がりが待たれるもの。東京五輪が終わったからといって立ち止まることはない。2人の、また選手たちの走る意味を感じながら、シリーズを楽しんでほしい。
最終日の12月19日にはレインボーカップA級ファイナルも行われる。3着までに入ればS級に特進できる。今回来期S級の権利を持たないのは、太田将成(25歳・宮城=113期)、金ケ江勇気(25歳・佐賀=111期)、道場晃規(23歳・静岡=117期)の3人。北の力、九州の力、がどんな形で発揮されるか、気になるところだ。
道場は伊藤慶太郎(28歳・埼玉=107期)が先月9連勝で特進したので繰り上がった。地元で訪れた最後のチャンス。南関からは一人だけの出場になるが、乾坤一擲(けんこんいってき)の仕掛けを打つ。金ケ江は写真(カネガエックスのポーズ)の通り、華やかさが売り。S級で暴れてこその逸材だけに執念を見せてほしい。
自転車競技のつながりも書いているので、どうしても当コラムに付け加えたいのは鈴木奈央(24歳・静岡=110期)のことだ。ガールズケイリンの選手として、また長く自転車競技女子の中距離の日本代表選手として頑張ってきた。12月13日、全日本トラックの最終日に「いったんナショナルチームから離れます」と話した。
デビュー前からその存在は知られていて、短距離とガールズではなく、中距離とガールズを結ぶ重要な立ち位置にいた。極端にダッシュが求められるケイリンと中距離の両立はよほど難しい…。しかし、そこに立ち向かい、支え続けてきた。ただずっと気にしていたのが「自分たちの世代より下の世代の選手がいなくて」ということだった。
そんな時に、核である鈴木奈央がいなくなって大丈夫か…とも思った。この話を聞いて、何を書けばいいか、マイナスなことも考えてしまった。
が、落ち着いてみると鈴木の歩く道はまだ途切れていない。
自転車競技にはかかわり続けるそう。もしかしたら競技大会にも出るかもしれない。ナショナルチームからは離れても、大きな意味でガールズケイリンと自転車競技を頑張ることは変わらない。いろんな形で、これからの道がある。鈴木は中距離ガールズの第一人者。彼女の模索は必ず後の世代の糧になる。
誰も通っていない道をいくわけだ。明るい“ナオちゃん”が、大得意のSNSなどを通じて、また新しい世界を切り開くに違いない。
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前田睦生
Maeda Mutuo
鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。
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