2021/12/13 (月) 12:00 21
広島競輪場で開催された「開設69周年記念ひろしまピースカップ(GIII)」の初日特選12Rで守澤太志(36歳・秋田=96期)と芦澤大輔(39歳・茨城=90期)が最終1角で落車。守澤は「KEIRINグランプリ2021」の出場を控えており、ケガの状況が心配された。
右鎖骨骨折で加療に必要な日数はなんと90日と診断された…。
数字だけ見ればKEIRINグランプリ出場はアウト。残り20日しかない。だが…。もちろん予断は許されないが、出場…それもきっちり準備して、を期待してもよいと思う。
一般の人ならこのケガは重傷。しかし、競輪選手にとっては、信じられないが“軽傷”とすら言いたくなる歴史がある。2019年8月15日に名古屋のアルテミス賞レースで落車(落担入7着)した小林莉子(28歳・東京=102期)は右鎖骨粉砕骨折。が、手術すると1週間後の松阪に出場して、驚くことに優勝した…。
伝説のレースといえば、村上義弘(47歳・京都=73期)の京王閣のKEIRINグランプリ優勝だ。
2012年のことだ。村上は12月16日の練習中に落車してろっ骨を骨折した。痛みは相当な様子で、周囲の心配も大きかった。
その村上はKEIRINグランプリで最終2角、豪雨の中を単騎でまくった。信じられない光景だった。村上の強さが原点にあるわけだが、“競輪選手の強さ”を証明するものと思う。守澤もその系譜に名を連ねていると思う。今は、ただ信じるのみ。1年をかけてつかみ取った出場権。その舞台への思いは、守澤の胸で回復力となってうごめいているだろう。
何より1985年の第1回KEIRINグランプリを制した中野浩一氏も直前にケガをしていて、本番ではどうか…という状況だったという。
11月の小倉競輪祭でも驚く話があった。「右手の小指が折れているんですよ」。左手のそれに比べるとよく分かる。ぷっくらと腫れ、明らかに骨折している自分の指を見せ北津留翼(36歳・福岡=90期)は笑っていた。準決を突破した後だ。それで、GI決勝進出を決めた…。
「兵庫のマウンテンバイクの大会で転んじゃって。優勝はしたんですよ。まあでも草レースみたいなものだから」
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前田睦生
Maeda Mutuo
鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。