2025/08/08 (金) 08:00 3
さて、今シリーズの看板である“吉岡カップ”。その名を冠するからには、やはりあの人の名前を出さざるを得ない。吉岡稔真。今や解説者としてもお馴染みだが、あの全盛期のスピードは、当時の競輪界のスピードスターだった。
その名を継ぐ大会において牙城を守るべきは、当然、吉岡の“弟子たち”ということになる。その筆頭格は岩谷拓磨。地元を盛り立てる林大悟、林慶次郎、そして大坪功一。顔ぶれだけ見れば、師の看板を預かるには申し分ないはずだが、現実はそう甘くない。
援護射撃の名のもとに動くはずの弟子・阿部英斗、そこに地元の柳詰正宏、松尾透、梶原海斗らも、どこか自分の勝ち星に重きを置いているフシがある。つまり、内実は個人戦なのでは?「S班がいない今こそ!」と、誰もが虎視眈々。言い換えれば、下克上のチャンスだ。こういう混沌としたところが、競輪の面白いところでもある。
そして他地区も静かに燃えている。北日本勢では木村弘が軸、須永優太が絡んでくる展開が濃厚。とはいえ、S級2班であっても侮れないのが佐藤一伸。最近になって上昇気配の嵯峨昇喜郎も、そろそろ「何かやらかす」匂いがしている。関東では橋本瑠偉、芦澤辰弘あたりが軸になり、展開一つで突き抜け強襲ってことも十分。
また、どのレースにも一定数いる“妄想枠”だが、今回はなかなか魅力的だ。121期の治田知也、坂田康季、五十嵐綾、それに117期の中村隆生。どの選手もまだ“未知数”といった感じでリスクはある。だが、逃げればしぶとい。しかも、逃げたあとに粘る根性がある。これは馬鹿にできない。
そして最後に触れておきたいのが、ベテラン・瀬戸晋作。縦脚は強烈なモノがあり、流れ次第でドカンと来る。展開がハマれば、大波乱を演出する“隠し玉”としての価値は高い。つまり今回は「本命ガチガチ」ではないということ。穴党が一番ワクワクできるパターンのシリーズになりそうだ。“吉岡の名”に敬意を払いつつ、誰が空位の王座を奪うのか。
迷ったが6Rで妄想タイムといってみるか。まず例によって並びの整理から。⑤立部楓真-⑨岩谷拓磨-①松尾透で九州ライン、④新村穣-②桐山敬太郎の神奈川コンビ、③五十嵐綾-⑦中田雄喜の福島コンビ、⑥小川丈太-⑧池田憲昭で四国コンビの細切れ戦。
スタートは五十嵐が早く前受けに! 枠なりで立部が追い新村、小川ってことになるか(⇐③⑦・⑤⑨①・④②・⑥⑧)。小川が押さえ、新村が叩きと目まぐるしい展開になる。そこを素早く立部が仕掛け、岩谷が抜け出し、立部の残りに松尾の流れ込みと五十嵐の強襲⑨-⑤①③が本線になる。
ここから妄想に入る……! 五十嵐が飛びつき含め自力自在に立ち回ると?
スタートを九州ラインが取るとここに新村、五十嵐、小川の順になる(⇐⑤⑨①・④②・③⑦・⑥⑧)。ここでも小川が押さえるしかない。五十嵐が切り替え叩き、新村を呼び込み、新村の主導権ってことになる(⇐④②・③⑦・⑧⑥・⑤⑨①)。
立部の仕掛けに合わせ、五十嵐がまくり中田とのゴール勝負③=⑦、桐山が切り替えて③-②。ちょっとひねれば、新村の気配が良くなりつつあり、脚を使わず逃げると桐山が差すだけの②-④。これで妄想〆にしとくかね。
吉井秀仁
Yoshii Hidehito
千葉県茂原市出身。日本競輪学校第38期卒。選手時代はその逃げるスピードの速さから「2週半逃げ切る男」と称され人気を集める。1978年競輪祭新人王戦を制し、翌年も小倉競輪祭の頂点に立つ。1980年の日本選手権は完全優勝、1984年オールスター競輪でも覇者となり、選手としての一時代を築き上げた。現役引退後はTV解説者やレポーターとして活躍、競輪場での予想会イベントやYoutubeのライブ配信なども精力的におこなっている。ファンからは「競輪客のような解説者」と親しまれており、独特のひらめきによる車券戦術を数多く披露している。