2025/08/12 (火) 08:00 6
グーレドレースの落車が多い。特に先月のサマーナイトでは不用意な落車を目の当たりにし、やりきれないもどかしさを感じた。レースである以上はアクシデントはつきもの。だが「仕方ない」で片づけていいのか? 私はそうは思わない。本来、落車は防げるもの。選手一人ひとりが正しい技術を身につけていれば、リスクは大きく減らせる。そう信じているからこそ、現状に残念さが募るばかりだ。
近年はウエイトトレーニングや、室内練習が主流になりつつある。パワーを追い求める風潮が強まる中、確かに脚力は“競輪の核”だ。だが、それだけでは勝てない。競輪とは、自転車を自在に操る“技”と、ギリギリの間合いを見極める“感”があってこその勝負だろう。乗り込んで自転車を我が手足のようにこなす技術こそが不可欠。どれだけパワーマックスやワットバイクで鍛えても、「バンク感覚」は身につかない。
真剣勝負の中でこそ、鍛えた技術が生きる。そうしてこそ、選手同士が信頼し合いながらも、火花を散らすような迫力あるレースが展開されるはず。
「自分は、仲間を、そして自分自身を落車から守れているか?」
今一度、原点に立ち返ってほしい。技術と感性、そして心構え。これらが揃ってこそ、真のプロレーサーではないか! 小言? 苦言?はここらで終わりにしよう。安全なレースを切に願うばかりだ。
本州のアスファルトが溶けそうな猛暑を抜け出して、函館でオールスターだ。こりゃあ、ありがたいったらないよ。涼しいし、景色はいいし、飯も酒もうまい。「函館だもの」って、昔のポエムみたいなノリで満喫させてもおうかね。ということで、久々に同期と一杯やる約束を入れといたんだ。最後に飲んだのはいつだったか···? もう思い出せないくらい前。すでにソワソワしちまって、その夜が楽しみでならねぇ。
酒といえば、もうひとつの密かな楽しみが「ひとり酒蔵ツアー」。日中からブラブラと地酒の匂いに誘われて、函館の空気に酔う。って、観光気分丸出しじゃねーか! ま、いいか。競輪も旅の一部ってことで!
さてさて、そろそろ競輪の話に入ろう。オールスターってのは、やっぱり“華”がある。ファン投票で選ばれたトップ選手が集うわけだから、そりゃ自然とS班に注目が集まるのも無理はない。あの顔ぶれを見りゃ、誰だって期待しちまうわな。気合いの入り方も普段とは段違いだろう。
でもね、ベテラン目線で言わせてもらえば、こういう舞台こそ“若手”が面白い。そう、言うならば「フレッシュ旋風」ってヤツよ。たとえば123期の西田優大。あの小松島記念で、超強豪相手に単騎まくりの初優勝。あれを見た時は「あ、こりゃホンモノだ」って思ったね。自信つけた若武者は、怖いよ。函館でもう一発、あるんじゃねぇか?
125期の中石湊も忘れちゃいけねぇ。ナショナルチームで鍛えた脚力に、競輪脳が追いついてきた。非凡なセンスに加えて、勝負勘もついてきたとなれば……。いやぁ、こっちも“来てる”。そして話題性でいえば山崎歩夢。そう、あの山崎芳仁のジュニア。背中を見て育った男が、いよいよ表舞台で旋風を起こすか。それに栗山和樹も絡んできたら、オールスターとは思えないくらい“新鮮”な風が吹く。どうなる、函館? いや〜、飲んでる場合じゃねぇかもしれねーよな!
さて、お待ちかねの“妄想タイム”といこうか。どうせなら、ファン投票で選ばれたベストナインによる「ドリームレース」をピックアップといこうじゃないの。まずはいつもの儀式、並び整理から。
⑨脇本雄太-①古性優作の近畿ゴールデンコンビ、⑥深谷知広-②郡司浩平の南関ペア、⑧太田海也-⑦清水裕友の中国セット、そして⑤眞杉匠、③新山響平、④犬伏湧也は“あえての単騎”を選択(⇐⑨①・⑥②・⑧⑦・⑤③④)。
普通に考えりゃ、脇本・古性が人気の中心になるんだろう。だが、両者ともにコンディション面に一抹の不安アリ。…となれば、俺は遠慮なくバッサリ切る。
で、ここからが本番だ。妄想エンジン全開バリバリ。単騎の新山は、さすがに“単騎逃げ”はしないはず。となれば、主導権は深谷か太田。荒削りだけど勢いある太田がブン回して、清水が差し切りゴール--。これがまずは本線。
相手は、位置取り上手い眞杉が直線一気に差し脚を伸ばしズバッと逆転してくる⑦-⑤の目。あとは、太田の逃げ残りで⑦-⑧、深谷マークの郡司がスピードをもらい強襲してくる⑦=②も面白い。近畿ゴールデンコンビがコンディションの不安を一掃していることも考えながらご一考を…!
吉井秀仁
Yoshii Hidehito
千葉県茂原市出身。日本競輪学校第38期卒。選手時代はその逃げるスピードの速さから「2週半逃げ切る男」と称され人気を集める。1978年競輪祭新人王戦を制し、翌年も小倉競輪祭の頂点に立つ。1980年の日本選手権は完全優勝、1984年オールスター競輪でも覇者となり、選手としての一時代を築き上げた。現役引退後はTV解説者やレポーターとして活躍、競輪場での予想会イベントやYoutubeのライブ配信なども精力的におこなっている。ファンからは「競輪客のような解説者」と親しまれており、独特のひらめきによる車券戦術を数多く披露している。