2025/11/16 (日) 18:00 7
今年のガールズGIも残すは「競輪祭女子王座戦」のみ。世界女王・佐藤水菜が断然の存在と目されている中でほかの選手たちはどう打開していくのかーー。元ガールズケイリン選手・高木真備さんが考える秘策とは? 舞台となる小倉バンクの特徴とともに挙げてもらいます。
ーーいよいよ今年最後のガールズGI「女子王座戦」が始まりますね。優勝候補はやはり…。
やっぱり佐藤水菜選手ですよね。なんといっても世界王者ですから。
ーー佐藤選手は世界選手権トラックの女子ケイリンで2年連続の金メダルを獲得しました。
2年連続で世界女王になるんですから、本当にすごいことだと思います。ガールズケイリンで戦う相手には“敵は世界女王かぁ…。やっぱり強いよな”などと、すでに心理的なダメージも与えることに成功しているので、そういった部分でも有利になると思います。
ーー脚力的にも、メンタルの部分でも圧倒的に佐藤選手が抜けているということですね。
そうですね。ただ、これは「ガールズケイリンのおもしろいところは」と聞かれた時にいつも必ず答えていることなんですが「タイムトライアルで敵わない相手でも、展開次第で勝てる可能性があるのがガールズケイリンの魅力」だと思うんです。もしハロンで対決するとなったら、サトミナが優勝する可能性は100%に近いはずです。でもガールズケイリンの場合はヨコができない分、内に包まれたりで力を発揮できなかったりするリスクもあるので。
ーー組み立て次第ではほかの選手にもチャンスがあるということですね。
もちろん、スピードを生かして力勝負をするというのは素晴らしいことです。でも一方で、プロとしてレースで「勝つ」ということにこだわることも大事だと思います。例えばなんですけど、逆転の発想で「超スローペースに落として、サトミナを内側に封じ込めて勝負する」という手もちょっとおもしろいのかな、なんて思ったりもしました。
ーーガールズケイリンの“ヨコができない”ルールをあえて利用するということでしょうか。
サトミナに力を発揮させない、というのもほかの選手が優勝するための作戦ではあるのかなって思います。ペースが上がると外並走の選手はどうしてもコーナーのカントで遅れてしまうけど、めちゃくちゃスローペースに落としてしまえば、外並走でも耐えられて、終始並走する形に持ち込めると思うんです。あくまでもこれはサトミナに嫌がらせをするとかではなく、一番強い人に対抗するためにベストを尽くす、という考え方が基にあるもので、ほかの6人の思惑がうまく一致すればサトミナを苦しめることができるのかなって思います。
ーーそういう展開になれば波乱も十分ありえますね。
ガールズケイリンのルールをうまくつかって、少しでも勝てる確率を上げる戦い方をすれば、おもしろいレースになるのかな、とは思いました。でも実際には、先に仕掛けて力勝負したい選手や、サトミナの番手を狙う選手などが出てくるでしょうし、6人全員が“サトミナを封じる”ことを意識する可能性は高くないのかなと。そうやって考えると、やっぱりサトミナが断然有利な状況であるのは間違いないと思います。
ーー今年も女子王座戦の舞台は小倉競輪場です。
小倉はオーソドックスな室内の400バンクで、基本的には力を発揮しやすいバンクだと思います。
ーー真備さんは小倉バンクにどんなイメージを持っていますか。
これは私自身の感想なんですが、小倉は相性が悪くて、軽いと感じたことが全然ないんですよね(苦笑)。むしろ屋外の佐世保とかの方が軽く感じるくらいで。ですので、あまりいい思い出もなく…。重く感じるのは、一説によると、空調の影響だったり、前のレースの風の回りが残っているから、とか聞きますが。
ーー確かに先月のコラムでも同じドームでも前橋とは全然違う、と言っていましたね。小倉バンク攻略のポイントや特徴はなにかありますか。
小倉の普通開催を走った時に、開催指導員さんにバンクの特性や、仕掛けのポイントを質問したことがあったんです。そうしたら「1角辺りのイエローライン付近がちょっと伸びる」って教えていただきました。普通は鐘4角からのカマシ先行だと、ホーム線過ぎの1角を目安に内側に降りるんですけど、小倉の場合はもうちょっと降りるのを我慢して1センターくらいまでイエロー付近を走り、そこから内に降りて切り込むとよく伸びるみたいで。それを聞いてからはカマシになった時はその辺りを意識して走っていました。
ーー最後に真備さんから報告などはありますか。
実は、実家で飼っていた愛犬の龍が19歳2ヶ月で天国へ旅立ってしまいました。老衰だったので“本当にやり切った”という様子の最期で。私たち家族にもしっかりお別れの時間をつくってくれたのは龍の優しさだったと思うので、一緒にいられて本当に幸せでした。でもいつかはお別れの日が来ることとわかっていても、ふとした時にいないのは寂しいですね。
ーーそうだったのですね。お悔やみ申し上げます。
龍がウチに来たのは私が小学6年生の時でした。現役中は、練習ウェアや横断幕など龍がデザインされたものを多く使っていましたし、タオルなどいろいろなグッズも作ったり…。また私の練習もそばで見守ってくれたりすることもありました。ファンの方からも「龍君におみやげ」と入り待ちや出待ちの時に龍用のプレゼントをくださったり、勝利者インタビューでは「龍君も喜ぶな」とか「おやつ買ってあげられるね」と声をかけてもらったりと、龍のことを気にかけていただきました。この場をお借りしてお礼申し上げます。ありがとうございました。
そしてなにより、龍がいたから犬のことや動物のことを調べるようになりました。龍がいなければ、今こういう活動もしていなかったと思います。龍には感謝の気持ちでいっぱいです。これからは龍が導いてくれたこの活動に日々、全力で取り組んでいきたいと思います。
(※文中敬称略)
高木真備
Takagi Makibi
元ガールズケイリン選手(106期)。2014年に奈良競輪場でデビューし、玉野競輪場で初優勝する。2016年のガールズケイリンコレクションでファン投票1位を獲得して、優勝。同年末にガールズグランプリ初出場を果たす。2020年には、特別競輪ガールズケイリンフェスティバル(いわき平)で完全優勝し、同年のガールズケイリンコレクション(伊東)も優勝した。ガールズケイリングランプリ2021で悲願の優勝を果たし、2022年4月に引退。現在は動物保護活動をしている。
