■ポイントはGIクラスでもレースを支配する力があるのかどうか

ーーまもなくパールカップが開催されます。勝ち上がりが東西に分かれて行われるのがこの大会の特徴ですね。

　大きいレースで東西に分かれて、というのは私が現役の頃はなかったんですけど、コロナ禍の時に地区別あっせんみたいなのはありました。その時に“東と西では雰囲気が全然違う”という選手の声は結構耳に入っていました。ただ今回はGIですし、東も西も強い選手ばかりなので、東西に分かれるから、という差はあまりないのかなと感じます。

ーーやはり中心は4月のオールガールズクラシックを制した佐藤水菜選手でしょうか。

　そうですね。今年はGIを全部獲るという目標を掲げているようですし、本番に向けてしっかり仕上げて“獲りに来る”のかなって思います。

ーー真備さんが他に注目している選手はいますか。

ナショナルチームに所属する仲澤春香選手がGI初出場なんですよね。本人もワクワクしているだろうし、周りの選手にとっても気になる存在になるのかなって思います。

ーー初のGIでどんな走りを見せてくれるのか、確かに注目を集めそうです。

　今までの普通開催では常に人気を集めていたでしょうし“本命選手”としてみんなから警戒される中でレースに臨んでいたと思います。ただGIになると相手も全員脚のある選手になるので、戦い方も変わってくるのかなって。そこでどんなレースをしてくれるのか楽しみにしています。

ーー仲澤選手は“佐藤水菜選手に匹敵する強さ”と評判です。佐藤選手としてもナショナルチームの練習仲間でもある仲澤選手の力を認めている印象があります。

　サトミナの強さは、パワーはもちろんですけど、他にも周りを翻弄するような走り方をする、できるっていうところもあると思うんです。本人は無意識なのかもしれませんが。これはナショナルチームに入る前から感じていました。例えばビックリするくらい流して“えっ、こんなに流すの？ 行けそうだけど…”と相手を惑わせて、気づいたらサトミナのペースになっていた、なんてことがあったんです。当時はまだ華奢な体でしたが、それでもたくさん勝っていたのは、脚力があるのはもちろんですけど、そういった自分のペースに入れる才能のようなものがあったからなのかなって思うんです。そういったスキルに加えて、ナショナルチームに加入してさらにパワーが備わってきたことで、今のような“圧倒的な強さ”を手に入れたのではないでしょうか。

ーー佐藤選手の強さの秘密は脚力だけではないということですか。仲澤選手にもそういったプラスアルファの部分があるのかどうか、気になるところですね。

　デビューして間もない頃のサトミナと今の仲澤選手では、パワーという点では仲澤選手の方が上かもしれません。あとは仲澤選手にGIクラスでもレースを支配する力があるのかどうか。それとも逆に先輩たちに翻弄されてしまうのか。こればかりは本人も含めて走ってみないとわからないと思います。もしそういった脚力以外の強さも仲澤選手が備えているようだったら、本当にすごい選手になるんじゃないかなと思います。そういった意味でも、仲澤選手がGIでどんな走りを見せてくれるのか楽しみにしています。

ーーなるほど…。あと、太田りゆ選手について少しお聞きしたいと思います。今年は初タイトル獲得の期待もかかる選手ですが、オールガールズクラシックでは準決勝敗退となってしまいました。

　太田選手といえば、なんといっても「まくりがすごい」選手です。本人も自信を持っているようですし、ヨーイドン！でまくったら、たぶん日本で一番強いんじゃないでしょうか。でも、それでもGIの決勝に乗れないのが競輪の難しさでもあり、おもしろいところなのかなって思うんです。太田選手は滅多に先行することがなく、まくり一本なのも影響している気がします。普通開催では力でねじ伏せることができても、GIで先行したり自力を出したりしている選手からすると、まだ対応が利くのかもしれません。対応してくる先行選手の上を乗り越えることを目指してまくりを究めるのか、先行をまじえながら戦法に幅を持たせるのか。どちらの選択をしても素敵なことだと思いますし、今後の太田選手の走り方にも注目しています。

■わんにゃんフェスティバルを通して広がる競輪界への恩返し

ーーありがとうございます。では最後に、真備さんからお知らせなどはありますか。

　そういえば、わんにゃんフェスティバルに競輪中継でおなじみのSPEEDチャンネルさんが協賛して下さったんです。初めて協賛という形で応援してもらえることになって、現役時代から見ていてお世話にもなった大企業さんから応援してもらえたというのはすごく嬉しかったです。そしてチラシもつくって配ることになりました。上の部分には私が思っていることなどを書かせてもらい、下には広告が載るんですが、たくさんの方の協力があってつくることができました。イベントには競輪を知らない方や、私が競輪選手だったということをチラシを見て知ったという方も結構いらっしゃいます。そういう方からは「あら、競輪選手だったのね」って言われたりして、印象に残ったり、そこから会話が弾んだりして競輪に興味をもってもらえるということも増えてきました。私がお世話になった競輪界に、こういった形で少しでも役に立てているのであれば、これほどうれしいことはありません。