逃げられない

　玉野競輪の大阪・関西万博協賛「開設74周年記念　瀬戸の王子杯争奪戦(GIII)」が3月6〜9日に開催される。犬伏湧也(29歳・徳島＝119期)は4月1日から北井佑季(35歳・神奈川＝119期)の1班降格に伴いS班に選出されることが決まった。喜べるものではないと思うが、この立場になったことから逃げることはできない。

　この大会を含めて3月いっぱいは1班としての戦いだが、向けられる視線はすでに変わってくる。犬伏は、やれるのか…。応えないといけない。

　清水裕友(30歳・山口＝105期)と松浦悠士(34歳・広島＝98期)、そして取鳥雄吾(30歳・岡山＝107期)の中国勢も真っ盛り。町田太我(25歳・広島＝117期)、河端朋之(40歳・岡山＝95期)もいるので山陽道のスピード違反は取り締まれない。

　ヒロト…。体が戻っていない、さらにはいつもの豪気な心すら傷ついているのは不安もある。だが、応えないといけない立場は変わらない。ヒロトもまた、その立場から逃げられない。そこにいないといけない男。中四国勢の親分として、このシリーズを戦い抜き、復活の舞台とする。

関東SSコンビも燃える

　眞杉匠(26歳・栃木=113期)、平原康多(42歳・埼玉＝87期)も燃える。吉田拓矢(29歳・茨城＝107期)もいる。2月豊橋の全日本選抜(GI)の決勝。眞杉は吉田を連れて、逃げた。2人の胸に、2023年8月の西武園オールスター決勝があった。

　もちろんそれは、平原の胸にも…。

　眞杉のあの先行の意味は重い。結果として吉田が結果につなげられなかったのは、相手もいること。関東は何をやっていくのか、を眞杉は示した。ラインの戦いへの、意志だった。

　ラインがあり、選手たちの心がせめぎ合うからこそ競輪は面白い。それを、関東勢は見せていかないといけない、と眞杉が強調したレースだった。平原は気持ちよく後進に道を譲りたいとばかり言うけど、平原もまだまだそこにいないといけない。

ユウゴは地元記念を勝てるのか

　昨年大会の決勝。取鳥の先行で松浦と岩津裕介(43歳・岡山＝87期)のワンツー決着だった。取鳥の献身的なラインへの走りは、ブレない。取材の際、取鳥に「太田海也とか若手が頑張って、必ず優勝を」をいう話をしたら、「ふふっ、自分の力で勝ちます」と答えた。

　今回、太田はいないものの、取鳥を盛り立てる構成になること可能性はある。その時に勝てるかどうか、その場所にいられるかどうか。ユウゴは試されるシリーズになる。

　菅田壱道(38歳・宮城＝91期)や窓場千加頼(33歳・京都＝100期)に南修二(45歳・大阪＝88期)、また今年はとにかく暴れそうな佐々木眞也(30歳・神奈川＝117期)ら、ゾウゾクするメンバーが揃っている。穏やかな瀬戸内海は、静かに温度を上げている。

衝撃メンバーの125期ルーチャン

　最終日の9Rでは125期のルーキーチャンピオンレースも行われる。私が競輪を見るようになってからの約25年では“華の75期”、また“華の88期”、前評判は北津留翼(40歳・福岡＝90期)だったが“ふたを開ければの90期”。GI覇者は出ていないが“本番に強い92期”など、いろんな特徴的な期があった。

　125期。デビュー前やルーキーシリーズでも取材するシーンがあったので、個人的にも思い入れがある。“競輪は125期”。彼らは新しい時代を作りつつ、競輪が生まれ今に続いてきた意味を示していく期だと感じている。

　競輪、が好き。何人からもこの言葉を聞き、その走りを見て、「いつ死んでもいい」と思えた。私の年齢は40代の中盤で、これまで続いてきた競輪の重み、伝えるべきものを伝える責任を持っていると自覚している。そこから逃げるつもりもない。だが、その役割を担ってくれる若者たちが125期には揃っている。そう、断言する。

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