2025/02/02 (日) 12:00 5
現役時代はトップ選手として長く活躍し、現在は評論家として活動する鈴木誠氏の競輪予想コラム。今回は高松競輪場で開催されている「玉藻杯争覇戦」の決勝レース展望です。
この時期に高松競輪場で行われる記念競輪として定着した感もある「玉藻杯争覇戦」ですが、以前は同じ時期に「全日本選抜競輪」が開催されていた時期もあります。
高松は厳冬期でも滅多に雪が降りません。ただ、今から11年前の「全日本選抜競輪」の開催初日には、バンク一面が雪で覆われてしまいました。
この時、自分は前検日から補欠選手として、高松のホテルで待機をしていました。その日の朝に真っ白になった、高松市内の光景もさることながら、開催が次の日に順延になったと聞いた時には、信じられない思いがしていました。
補欠選手はいつ呼び出されるかが分からない立場ながらも、基本的にはホテルからの外出が可能となっています。順延日も含めての5日間は、同じ補欠選手と高松市内を観光したり、うどんを食べに行ったりもしていました。
この時に行動を共にしていたのが、「玉藻杯争覇戦」の決勝に名を連ねた福田選手です。自分としてはいい思い出になっていますが、福田選手にとってもこの時期に高松競輪場に来るたびに、雪の高松市内を思い出しているに違いありません。
決勝にはその福田選手を含めて、神奈川の選手が3名に加えて、高松バンクは準地元とも言える四国の選手も、3名が勝ち上がってきました。
単騎戦も考えられた他地区の3名ですが、④坂本選手は九州=四国での連係実績も考慮する形で、①犬伏選手-⑧島川選手-⑦香川選手の後ろを選択しました。
3日間共に若々しいレースを見せている⑥田中選手の後ろは、ベテランの③成田選手。混成ラインながらも楽しみな並びです。そして、神奈川ラインの並びは②郡司選手-⑨松谷選手-⑤福田選手となっています。
バック本数にも証明されているように、先行意欲が強いのは犬伏選手と田中選手となります。この2人は準決勝の10レースでも対戦していますが、その時は田中選手が抑えに行ったところを犬伏選手が先行しています。
犬伏選手は一本棒の形に持ち込むと、番手の香川選手も引きつれての勝利。一方、田中選手は流れ込んでの3着がやっとでした。
それだけに、田中選手は脚力の差を埋めるためにも、ここでは先行したいところでしょうが、さすがに2車では分が悪く、ダッシュもいい犬伏選手が交わしていくと思います。
この展開となれば、今大会好調の島川選手が番手から差し切る展開が濃厚となります。準決勝の11レースでは、先行ラインの4番手から脚を使うことなく追走すると、直線では捲り追い込みを決めています。
犬伏選手が準決勝と同じように一本棒の展開に持ち込んだとしても、島川選手の決め手ならば直線で交わし切れるはずです。ただ、この展開を良しとしないのが、年明けからの好調を持続している郡司選手でしょう。
郡司選手は年明けの「鳳凰賞典レース」から準決勝まで11戦9勝と圧倒的な勝率を誇っています。それは展開に左右されない自在性のある走りだけでなく、戦術の上手さもあるからです。
ここでもスタートを取りに行けたのならば、犬伏選手を4番手に下げられるだけでなく、後ろから抑えに来た田中選手と、先行争いをさせる展開に持ち込めたのならば、捲りにはうってつけの展開となります。
また、犬伏選手が突っ張り先行に入ったとしても、郡司選手は5番手から捲っていける脚もあるだけに、島川選手は早めの番手捲りを選択するかもしれません。
印としては◎⑧島川選手、○①犬伏選手、△②郡司選手、×⑨松谷選手としますが、3連単の買い目としては、先行した犬伏選手が、すんなりと押し切ってしまう展開も加えておきました。
福田選手は展開的に勝ちきるまでは難しそうですが、11年前に高松で同じ時間を過ごした者として(笑)、予想は抜きにして応援したいと思っています。
鈴木誠
千葉県市原市出身。日本競輪学校第55期卒。千葉経大付属高校の頃から競輪に没頭し、吉井秀仁氏に師事。現役時代はすべての戦法を完璧にこなし、「本物の自在型選手」と評されるほど多彩なストロングポイントを武器に、引退するまで長きにわたってトップ選手として君臨した。現役時代は通算3058戦665勝、優勝109回(うちGIは競輪祭新人王を含め4回、GP1回)、年間賞金王1回、通算獲得賞金は17億を超える。18年7月に、ケガのため惜しまれつつ引退。引退後は選手経験を生かし、解説者として活躍。スピードチャンネルなどの番組にも出演している。